(『筋肉まるわかり大事典』石井直方著からの抜粋)
筋肉に大切な栄養素を摂るには、筋肉を食べるのが最も理にかなっているが、脂肪を多く摂ることにもなってしまう。
そのため吸収の良いプロテインなどのサプリメントを使う人が多い。
大豆などのプロテインは、BCAAが少ないという欠点がある。
(※BCAAは、分岐鎖アミノ酸のことで、アミノ酸のうち筋肉に深く関わるものをいう)
筋肉の疲労を取るには、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールが良い。
運動の直後だと、糖質が良い。
アミノ酸を摂取する場合、サプリメントでアミノ酸を摂ると、体内での濃度が高くなる。
これは運動の直後に摂ることで、効果が出る。
平常時に摂っても効果はない。
抗酸化物質は、筋肉の疲労回復という点では、アミノ酸よりも強力である。
この物質は活性酵素の働きを抑え、炎症を抑える。
ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールに多く含まれている。
筋肉を育てる(筋肉を強化する)には、空腹の時間帯を作らない方がいい。
常に一定の血糖値を保つのが大事となる。
ボディ・ビルダーは、1日に6食も摂る人が多い。
この場合、牛乳にプロテインを入れたものも1回に数える。
食事量を減らすと、体は筋肉を削って脂肪を増やそうとするため、体の質は悪くなっていく。
また寝る前にあまり食べると、眠っている間に太るホルモンが出る。
寝る前は、良質なタンパク質やビタミン類を補うのが良い。
「1日2回、ドカ食いすると太りやすい」というのは、本当である。
食事は小分けにした方が、食後に代謝が上がるため太りにくい。
脂肪をつけたくない人は、食事回数を増やしたほうがいい。
逆に体を大きくしたい人は、相撲取りのように1日2食でたくさん食べれば、脂肪も筋肉もよくつく。
ベジタリアンは、やはり筋肉はつきにくい。
ただし大豆などを摂れば、タンパク質の必要量は摂れる。
コーラは運動選手に良くないと言われるが、酒のほうがよほどマイナスである。
ジャンクフードは脂肪が多いので、体に良くない。
プロテインやサプリメントは、トレーニング後の30分以内に摂ると効果的である。
特に高齢者ほど、運動中にタンパク質が分解されるため、分解された分を補給することを勧める。
またBCAAを事前に摂っておけば、分解を防いでくれる。
運動の20~30分前にBCAAを摂り、トレーニング後は30分以内にプロテインを飲むのが、筋肉を育てるのに理想的である。
プロテインは、市販品は大元は同じ粉で、そこに色々な成分をブレンドして差別化していることが多い。
だから、自分が飲みやすいものを選べばいい。
健康志向のものだと、ポリフェノールが入っていたりする。
アスリート向けは、味よりもプロテインの含有量を重視している。
大豆よりも乳清から作られたホエイ・プロテインの方が、カロリーは高いが筋肉はつきやすい。
そして牛乳に混ぜて摂ると、栄養価は高くなるが、カロリーも高くなる。
なお最近のプロテインは、水に溶けやすくなり、吸収も良くなった。
サプリメントで寿命が伸びると謳う商品もあるが、私たちの実験ではアミノ酸をマウスに投与したが寿命は伸びなかった。
逆に短くなることもなかった。
アミノ酸を投与したマウスは、筋肉量が維持され、活動レベルは上がった。
加齢によって自然に減る物質を、(サプリメントで)摂取し続けると、(筋肉量は維持できて)活動的になるが、(体に負担がかかり)突然寿命がきてしまう事も考えられる。
動物性タンパク質と植物性タンパク質は、アミノ酸の組成は違うが、筋肉をつける上では大きな違いはない。
一番の違いは、吸収速度で、動物性の乳清のほうが筋肉はつきやすい。
これは、乳清は母乳の成分なので、吸収が良いのだろう。
乳清は、筋肉と組成が近い。
高タンパクな食事をすると筋肉がつきやすいと考える者がいるが、実験では特にメリットはなかった。
トレーニングの直後に10gほどのタンパク質を摂ると、筋肉は太くなりやすい。
日本人の場合、体重1kgあたり、1日に1.5~2gのタンパク質を摂れば、十分にトレーニングの効果は出る。
通常の場合、(体重1kgあたり)1日に0.85~1gの摂取が推奨されている。
筋肉をつけたい人は、その1.5倍くらいが必要ということだ。
タンパク質を摂りすぎると、体の中の窒素量が増えるので、デメリットとなる。
野菜や果物を摂ることは、筋肉に大いに関係する。
筋肉には、ビタミン類が欠かせない。
土に埋まっていた根菜にはミネラルも豊富で、筋力アップに効果的である。
ただし、含まれるミネラルは、育った土壌によって変わる。
例えば朝鮮人参は、値段に天地ほどの差があるが、これは人参の育った土地で含まれるものに差が出るからである。
だからこだわるなら、産地を重視する必要がある。
魚介類を摂取することも、筋肉に大いに関係する。
魚介類にはアルギニンというアミノ酸がたくさん含まれていて、成長ホルモンの分泌を活性化する。
筋肉の肥大に重要な一酸化窒素の元となるアルギニンは、貝類、タコ、イカに多く含まれている。
ただし、タンパク質としては動物の肉のほうが、筋肉の材料にするには効率的である。
酸素を摂ると健康に良いとの説があるが、それは間違っている。
「酸素は摂りすぎると毒になる」のだ。
酸素は肺でヘモグロビンと結合するが、活性の高い酸素を吸ってもあまり血中量は増えない。
高酸素を吸って元気になるのは、理論上はあり得ない。
酸素水、酸素カプセルも、実験の結果ほとんど効果はなかった。
「脂肪」は、エネルギーの備蓄に優れており、1g当たりの備蓄量は筋肉は4キロカロリーだが、脂肪は9キロカロリーである。
つまり脂肪は、エネルギーの備蓄という点では効率が良い。
また脂肪が無くなると、細胞を作れなくなる(体を作れなくなる)。
さらに男性・女性ホルモンや、副腎皮質ホルモンは、脂肪(脂質、コレステロール)からできている。
要するに、脂肪は体に不可欠なもので、あまりに減ると危険である。
男性は体重の4%、女性は体重の12%よりも脂肪が減ると、危険な状態である。
女性は、体重の12%を切ると生理が止まると言われ、それは子供を産めなくなるとの警告と考えられる。
アスリートの場合、女性でも脂肪率が8%くらいの人もいるが、良い状態ではなく、女性ホルモンの分泌が悪くなり、骨粗鬆症になる危険も出てくる。
男性でも5%台が限界点である。
私がボディ・ビルダーの現役の時は、6%を切る位だったが、十分なパワーが出なかった。
ちなみに脳は脂肪の占める割合が多くて、脂肪がなくなったら脳みそがなくなってしまう。
アスリートの場合でも、10%くらいが目安だろう。
ここからは余談だが、脳を活性化させるには、筋トレよりもエアロビックのほうが良い。
一番効果があるのは、腹式呼吸である。
ウォーキングや、ガムを噛むのも効果がある。
哲学者のアリストテレスは、「歩くと全ての問題が解決する」とまで言っている。
スポーツでは、持久力が重要な競技の場合、心臓が送り出す血液量が多いほど力を発揮できる。
しかし心臓が1分間に打てる鼓動の最大数は変えられない(鍛えられない)ので、心臓は(持久力を鍛えると)容量を大きくして血液量を増やす。
このように容量の増えた(大きくなった)心臓を、スポーツ心臓と言う。
実は、筋トレをしている人も、心臓は大きくなる。
こちらは心臓の壁が厚くなるのである。
壁が厚くなると、より大きな圧力で血液を送り出せるようになる。
心臓の容積や壁が変化することの弊害は、よく分かっていない。
背中が曲がってしまう要因の1つに、歯の噛み合わせある。
マススピースをはめただけで、背骨が伸びたという報告がたくさんある。
野球選手として大活躍した王貞治は、ボールを打つ時に歯を食いしばるので、歯がすり減ってしまったという。
(※スポーツ選手は食いしばることで、歯や顎を悪くすることがある。
そのために競技中にマウスピースをする者がいる。)
(2022年12月4~5日に作成)