神
長い間、あなた方の行動のルールは、「感情にひたるな」だった。
悲しみは克服しなさい、怒りは押し殺しなさい、羨望は恥じなさい、愛はコントロールしなさい、と言われてきた。
あなた方は、『聖なる自己』を閉じ込めてきた。
もう、自分を自由にする時だ。
ニール
どこから始めればいいのでしょう?
神
まず、人類の過去を振り返ろう。
人類史の初期は、『母系社会』だった。
それから変化が起こって、『父系社会』になった。
この変化の時に、あなた方は感情を表現しなくなった。
「感情表現は弱々しいことだ」と、レッテルを貼った。
この時に、男性は悪魔を創造し、神は男性だと決めた。
ニール
男性が悪魔を創ったのですか?
神
そうだ。
感情に背を向けたのも、悪魔の発明も、『女性が感情によって全てを支配していた母系社会』への、男性の反乱の一環だ。
かつては、あらゆる地位を女性が握っていた。
ニール
男性にはどんな力があったのですか?
神
何もない。生殖と肉体労働以外に、重要性はなかった。
「男性には知性がない」と、女性に思われていたんだよ。
ニール
おやおや。
性別の違いだけを理由に、差別をする社会があるなんて、想像しにくいですねえ。
神
あなたのユーモアのセンスは大したものだ、まったく。
ニール
しかし、皮肉ですよね。
男性も女性も、「自分が割に合わない仕事をし、相手は面白おかしく暮らしている」と思っているんです。
神
その通りだ。
『大切なのは一体になる事だ』と気づき、お互いの不和を癒しなさい。
創造する力は、『一体化』の中にある内なる強さから生まれるのだから。
内なる強さから、力は生まれる。
力から内なる強さが生まれるのではない。
ほとんどの人は、ここを逆に考えている。
あなた方は、「ばらばらな個から、内なる力が生まれる」と考えているが、それは違う。
ばらばらでいる事こそ、全ての機能不全と苦しみの原因なのだよ。
「ばらばらな個でいる事が強さだ」という偽りが、すべての戦争の起源であり、すべての闘争や憎しみの起源である。
『何者からも離れていない』というつもりで、行動しなさい。
そうすれば、世界を癒せる。
ニール
分かりました。
話は戻りますが、男性は女性から力を奪うために、悪魔を発明したのですか?
神
そうだ。
彼らは、「不安」を利用した。
男性が力を獲得するために必要だったのは、女性を説得する事ではなくて、他の男性たちを説得する事だった。
おだやかな暮らしの日々は、男性にとってもそう悪いものではなかったから、説得するのは容易ではなかった。不安を発見するまでは。
女性たちは、不安を計算に入れてなかった。
一番不満を持っていた男性たち(だいたいは一番モテない男性たちだった)は、不安を蒔き始めた。
彼らは、「女性たちが間違っていたらどうする? 世界を破滅に導こうとしているとしたら?」と主張した。
当時は『女性は女神と同然だ』と考えられていたから、彼らは悪魔を発明して、対抗しなければならなかった。
ニール
しかし、悪魔がいるなんて、どうやって説得したのですか?
神
女性たちでさえ、どうしても「ワル」になる子供がいるのを、経験から知っていた。
男の子に多い事も、周知の事実だった。
そこで彼らは、「ワルは姿かたちを変えて、時には偉大なる母にもなりすます」という神話を創った。
この神話を聞いた男性たちは、「ワルが女性に化けて、私たちをだましているのかも」と不安になり、女性への反乱を起こした。
こうして悪魔は創られた。
悪魔を創った男性達は、狡猾にもこう語った。
「知恵や思いやりなら、もちろん女性が優っている。しかし、悪魔を力で抑えつける事が必要なら、男性の出番ではないか」と。
敵がいるなら、女性を守る保護者も必要になる。
こうして徐々に男性の力が増し、男性の神が神話に出現し始めた。
まもなく、神性についての考え方が一変した。
神は『愛の源である存在』から、『不安と恐れの源である存在』になった。
穏やかで楽しげな「女神」から、劣る者に容赦がなく、どんな反抗も見逃さない「男神」になった。
この男神が、現在あなた方が崇める神である。
ニール
なぜ、こんな事を教えて下さるのですか?
神
『すべてはあなた方が創り出したのだ』という事を、知っておいた方がいいからだ。
「力は正義なり」「力がある者が強者だ」という考え方は、男性が創り出した。
私は、あなた方の神話で語られる男神でも、女神でもない。
私は、『存在するすべて』である。
(『神との対話3』から)