(『東京新聞2023年3月6日』から抜粋)
自衛隊に在職中に、性暴力を受けた五ノ井里奈さん。
彼女の告発をきっかけに、防衛省はハラスメントの調査を進めている。
自衛隊は、これまでもパワハラなどが原因の自殺や訴訟が、何度も起きている。
五ノ井さんは、告発後にネットで自衛隊内のセクハラ被害のアンケートをした。
140件以上の回答の一部を挙げると、次のセクハラがあった。
①女性隊員のX線写真を皆で眺める
②飲み会で体を触ったり、男性隊員の局部に服の上からのキスを強要
③宴会で野球拳に参加させられ、服を脱ぐことを強要される
自衛隊を取材し続けるジャーナリストの三宅勝久さんは言う。
「防衛省は深刻なセクハラの横行を知っている。
それでも公にしてこなかった。
退職した隊員や自殺した遺族が訴訟を起こさなければ、実態は明らかにならなかった。」
自衛隊で働いた男性がうつ病で自殺し、両親が訴えた裁判は、2023年2月21日に地裁は過重労働は認定したが、パワハラは認めなかった。
三宅さんは言う。
「訴える人たちは、自衛隊が情報開示をしたがらないので、苦労している。
五ノ井さんのケースのように、自衛隊が非を認めるのは稀だ。
組織の隠蔽、閉鎖体質が改まらない限り、自浄作用は期待できない。」
自衛隊員の中途退職者は、2020年10月の資料によると、年間に4700人。 新規採用者の3分の1に相当する。
自衛隊は災害の救援活動で良いイメージを持つ人がいる。
しかし実態とのギャップがあり、それが入隊者の失望や絶望につながっていると、三宅さんに強調する。
三宅さん
「命令として、上司の私用や慰みのような労働を課される。
さらにいじめや暴力も受ける。
それで早期退職者や、心身を壊す者が出る。」
(2024年4月19日に作成)