(以下は『週刊文春2023年12月28日号』から抜粋)
エーザイとアメリカのバイオジェン社が共同開発した、新薬の「レカネマブ」。
2023年12月13日に、国内での保険適用が決まり、販売がスタートした。
この薬は、アルツハイマー病の薬だが、認知症の半数近くをアルツハイマー型が占めている。
この薬を使用できるのは、アルツハイマーでも早期の患者のみだ。
アミロイドβという物質を、この薬は除去するという。
治験によると、病の進行速度が3割ほど落ちるという。
レカネマブを使用する前には、アミロイドβの測定が必要となる。
その測定ができる病院は、全国でも限られている。
薬価は、体重50kgの患者で年間298万円と定められた。
患者の負担は月に数万円に抑えられる見込みだ。
レカネマブは点滴で注射する。
レカネマブは、副作用があると分かっている。
治験結果では、脳浮腫(脳の部分的なむくみ)が、12.6%の人に出た。
微小脳出血は、14%の人に起きた。
治験の延長期間中に、副作用で亡くなった人も2人いた。
(以下は『東京新聞2023年4月2日』から抜粋)
「アビガン」は、未承認の薬だが、研究目的でコロナ患者に投与された。
アビガンは、富士フィルム富山化学が開発した、インフルエンザの治療薬である。
2020年に安倍晋三・首相の政治判断で、コロナウイルスに効く治験結果はなかったのだが、コロナ患者に投与する「観察研究」が始まった。
2021年12月に厚労省は、アビガンの観察研究を突然に中止した。
東京新聞は情報公開を請求したが、2022年8月に公開されたのは、全面黒塗りの文書だった。
情報公開法5条5号にあたる、「不当に国民に混乱を生じさせる恐れがあること」が、黒塗りの理由だった。
ところが2023年2月17日に都道府県に通知された事務連絡に、別添えで、観察研究の結果が載っていた。
A4サイズでわずか1枚のその報告書によると、アビガンは約1160の施設で、5万1008人に投与された。
アビガンは胎児に悪影響の懸念があるが、若い女性にも投与しており、 処方してはいけない自宅療養者に投与した例もあった。
この報告書では、患者の情報は1万7508人しか把握していない。
つまり投与された人のうち、3分の1しか投与後の情報を把握していない。
医師で弁護士の古川俊治・参院議員は言う。
「治験なき投薬なんてあり得ないことだ。
これがまかり通るなら、製薬企業がデータを積み上げて治験のクリアに力を注ぐ意味がない。」
アビガンには、多額の税金が投入された。
日本政府はアビガンを159億円で買い上げており、治験の支援に14億7千万円を交付した。
富士フィルム富山化学にも、設備整備費として40億6千万円を投入した。
アビガンと共に安倍首相が独断で決めたものに、「アベノマスク」があった。