(以下は『東京新聞 2021年8月28日』から抜粋)
厚生労働省は、モデルナ製のコロナワクチンについて、「5都県の8ヵ所の接種会場で、計39本の未使用の瓶から異物が見つかった」と発表した。
そして同時期に同じスペインの工場で作られた3ロット、計163万回分のワクチンを、使用しないよう要請した。
この163万回分は、日本国内の863ヵ所の接種会場に納入され、共同通信の集計では、少なくとも19都府県で18万回が使われた(接種された)。
厚労省は接種済証などで確認できるよう、ロット番号を公表した。
体調が悪くなったら医師などに相談するよう呼びかけている。
ロット番号は、「3004667」、「3004734」、「3004956」である。
異物は、製造ラインで混入したと考えられ、「黒い小さな物質だった」との証言が複数ある。
金属片の可能性もあるという。
海外では、ゴム片が混入した事件も報告されている。
なお、モデルナ製ワクチンの日本国内での販売や流通を担当しているは、武田薬品工業である。
河野太郎・ワチチン担当大臣は、異物混入について、「使用を止めた163万回分のワクチンのうち、50万回強はすでに接種ずみと把握している」と述べた。
つまり、約3分の1は接種された事になる。
厚労省の異物混入の発表は、8月26日の午前3時半頃から、オンラインで行われた。
東京新聞の担当記者には、0時40分ごろに厚労省の広報室から連絡があった。
発表があり、ワクチンの使用中止が伝えられると、大騒ぎになった。
なぜこの事を、わざわざ真夜中に発表したのか。
モデルナワクチンの国内供給を担当する武田薬品が、異物の混入を厚労省に報告したのは、8月25日だった。
厚労省と武田薬品が協議し、田村大臣にも相談して使用中止を決めた。
ところが異物混入の情報は、接種会場から8月20日、23日、24日にすでに上がっていた。
そもそも武田薬品には、6月15日に異物混入の情報が入っていた。
埼玉県の大規模接種会場で見つかり、回収と交換が行われた。
その後、8月13日に4本、8月20日にも15本が、埼玉県で見つかっていた。
武田薬品は、「異物混入のトレンド(傾向)が出てきたから、(8月25日に)厚労省に報告して対応した」と言う。
厚労省は、「ワクチンに限らず、ゴム片などが混じっているのは、あることはある」と言う。
ワクチン問題を取材しているおしどりマコ(※この人は福島原発の問題も取材している)は、8月20日に文化庁の職域接種で問題の使用中になったロットのワクチンを打った。
体調に問題はないが、「厚労省の会見では、何かあればかかりつけの医者に相談してほしいと言うだけだ。機能不全に陥っている」と批判する。
問題のロットのワクチンは、日本で50万回以上も接種されたと見られるが、厚労省は具体的な接種会場を明かしていない。
危機管理広報会社・エレックスの江良俊郎・社長
「ワクチンに異物が混入していたとだけ公表すると、全面的にワクチンを回収しなけれならない。
だから厚労省は、まずロットの特定作業に動いたのだろう。
製造場所がスペインだから、連絡が取りにくいなどもあり、手間取ったのではないか。」
薬害エイズ事件を刑事発した保田行雄・弁護士
「異物混入が分かってからも、なぜ同じ製造ラインのワクチンの使用を認めていたのか、理解できない。
何か症状が出てからでは遅い、というのが薬害事件の教訓だ。
早々に発表し、接種を止めるべきだった。
そうしなかったのは菅政権が接種数を増やすことばかりに腐心しているからだ。
接種を促す上で大切なのは、問題が生じたらきちんと対応する安心感だが、今の政府には欠けている。」
国立感染症研究所の元研究員である原田文植(ふみうえ)
「今回はとにかく疑問が多い。
発表した分だけの問題なのかや、製造時になぜ混入したのか。発表が遅れたのはなぜか。
1つ1つ丁寧に説明しないと、ワクチン接種は広まらない。」
(以下は『東京新聞 2021年8月29日』から抜粋)
モデルナ製ワクチンの一部から異物が見つかった件だが、「使用を止めた問題のワクチンを接種した30代の男性が、2人死亡した」と厚労省は発表した。
異物が見つかった瓶と同じロットではないが、同時期に同じ工場で製造されたロットだった。
死亡との因果関係は調査中である。
亡くなった男性は、38歳と30歳で、基礎疾患やアレルギー歴はない。
それぞれ8月15日と22日に2回目を接種し、翌日に発熱して、翌々日には軽快したが、接種して3日後に亡くなった。
(※ネットで確認したところ、2人の接種したロット番号は、「3004734」である)
このワクチンは、スペインのロビ社が製造したもので、異物は磁石に反応する金属の可能性がある。
体内に入っても健康被害は限定的との見方もある。
使用中止になったロットを接種した都内の女性(47歳)は、「足が震え、血の気がひいた」と言う。
この女性は、8月25日に東京都港区の大規模接種会場で接種を受けた。
異物混入は8月16日以降、断続的に見つかり、武田薬品に報告されていた。
女性は言う。
「報告されたのに、なぜ8月25日まで接種させたのか。
男性2人の死亡が報道され、自分にも起きるんじゃないかと不安でしょうがない。
行政からは何の連絡も確認もなく、放置されている。
体に異物が一生残るかもしれない。情報を出してほしい。」
厚労省によると、ワクチン接種後の死亡報告はファイザー製が991人、モデルナ製は11人あがっている。
ワクチンとの因果関係は、「認められない」か「評価不能」としている。
(2025年2月13~14日に作成)