(以下は『東京新聞 2016年5月21日』から抜粋)
三菱自動車の燃費不正事件により、取引先の中小企業が経営悪化している。
東京商工リサーチによると、三菱自動車の一次下請けは1400社に上る。
その内訳は、愛知県が278社で最多、東京都は259社があり、岡山県にも156社ある。
三菱自動車に端を発した燃費データの不正が、スズキにも飛び火した。
スズキの燃費データは、屋外で測定していないのに、屋外で測定したと記載していた。
同社はこの不正を2010年頃から行っていた。
スズキは、走行試験したデータではなく、タイヤやブレーキなどの部品ごとの抵抗値を測って積み上げて算出したデータを、国土交通省に申請(報告)していた。
本来は屋外のテストコースで車種ごとに実車走行し、空気抵抗やタイヤの摩擦のデータを集めなけばならない。
ところがスズキは、自社テストコースでは風が強く安定したデータが取りにくいとして、屋内の風洞装置を使うなどして不足分のデータを算出。国に実走データとして報告していた。
屋外走行してないのに、国の定める条件で屋外走行したと偽っていた。
軽自動車の主力メーカーであるスズキの失態だけに、業界全体の信頼が損なわれた。
燃費不正が起きた背景には、燃費測定が相当程度までメーカー側の自己申告データに基づく実態がある。
国が全データを自力で集めるのが理想だが、行われていない。
これ以上に不正が広がれば、性善説に立った現制度の見直しは避けられない。
消費者は、現行の燃費基準そのものに疑念を抱いている。
実際の走行で、カタログ通りの燃費が出ないことは広く知られている。
各メーカーに屋外での実車走行を求めているにもかかわらず、最終的な国の燃費試験は屋内で行われる。
車体を台に固定し、エアコンもラジオも消して、ローラー上で駆動輪を回す。
こうして測ったカタログ上の燃費が、実燃費と違うのは当然だ。
一般ドライバーの情報を基に実燃費比較をするサイト「e(イー)燃費」では、スズキの軽自動車「アルト」が2015年の最高燃費を記録している。
消費者の目線に立った燃費基準の策定こそ、解決の第一歩となる。