(『なぜアメリカはこんなに戦争をするのか』C・ダグラス・ラミス著から抜粋)
小泉純一郎・内閣は、アメリカが行うアフガニスタンのタリバン政権に対する戦争に、自衛隊の軍艦を派遣しようとしている。
(※これは、2001年11月に書かれた記事からの抜粋です)
その法的根拠は、「1999年に成立した周辺事態法に、アメリカ軍の後方支援をしてもよいと規定されているからだ」と言っている。
「自衛隊は物資を運搬しているだけだから、戦争には関わらない」と、小泉首相は主張している。
しかし、それは成り立たない主張である。
日本国憲法の第9条では、「国の交戦権は、これを認めない」と定めている。
主権者である国民が、日本政府に「交戦権は認めない」と命じているのだ。
政府は、これに従う義務がある。
交戦権というのは、他国を攻撃・侵略する権利ではない。
他国を侵略する行為は、国際法で明確に否定されている。
『侵略された時に、自衛のために戦争する権利』、これが交戦権である。
自民党は、「交戦権はないが、自衛権はある(自衛権は憲法違反ではない)」と言っているが、それは間違っている。
交戦権とは、『人を殺しても罪にならない国家の権利』である。
つまり、「政府の命令の下では、兵士が戦場で人を殺しても、殺人犯にならない」という事である。
交戦権が、いちばん根源的に戦争を可能にする権利である。
「殺人の権利」とは違和感があると思うが、兵士にとっていちばん重要な権利である。
敵兵を殺して、後で殺人犯として処罰されるのだったら、誰も戦争に行かない。
戦争では、人をたくさん殺す者は連続殺人犯ではなく、殊勲者となる。
交戦権とは、そういう魔術なのである。
憲法第9条では、その魔術を認めていない。
それは、法律に反映されてきた。
例えばPKO協力法では、政府はこの法律によって自衛隊をカンボジアに送った。
PKO協力法は、武器使用に関する規定があり、正当防衛と緊急避難のため以外では武器使用を認めていない。
だからカンボジアに行った自衛隊は、後方で道路工事などを担当した。
しかし『周辺事態法』による後方支援は、まったく異なる。
支援するのは国連ではなくアメリカ軍だし、PKO活動ではなく戦争参加である。
自衛隊はいま、アフガニスタンに侵攻したアメリカ軍に、後方で物資を運搬している。
これは、国際法では「参戦していること」になる。
第二次大戦中に、イギリスの貨物船がドイツのUボート(潜水艦)に沈められた事があった。
この貨物船は、民間のものだったが、武装していた。
この撃沈についての裁判判決は、「民間の貨物船といえども、武装していれば非戦闘員の資格を失う」というものだった。
上の判例にてらせば、インド洋上でアメリカ軍に物資を運んでいる自衛隊には、非戦闘員の資格がないのは明らかである。
自衛隊の船は軍艦だし、戦闘訓練をして武器を持っている。
日本政府が「軍隊ではありません」と言っても、説得力がない。
だから、アフガニスタンのタリバン政権が自衛隊の軍艦を攻撃しても、合法となる。
周辺事態法においても、武器使用は正当防衛と緊急避難に限られている。
小泉内閣は、それを改定しようと懸命だが、憲法第9条が生きているので出来ない。
戦後の日本では、交戦権の名の下での戦争・殺人をしてこなかった。
もし交戦権を認めれば、平和憲法の最後の砦が崩れる。
(2014年6月11日に作成)