有事法制
違憲であり、明治憲法の原理に基づいている

(『なぜアメリカはこんなに戦争をするのか』C・ダグラス・ラミス著から抜粋)

(以下は、2002年8月に書かれた記事の抜粋です)

有事法制の事を考えると、小泉純一郎・政権はずる賢いなと思う。

自民党は、結党以来ずっと憲法改正を求めてきた。

でも改憲はできていないし、世論もその方向に向かっていない。

自民党はとても困っている。

有事法制は、それを解決する策の1つである。

有事の場合には、有事法制を憲法にとって替えるのである。

「改憲できないならば、凍結してしまえばいいじゃないか」という事だ。

いつが有事かといえば、総理大臣が「いまが有事だ」と言えば、有事になる。

「なぜ有事だ?」と質問するのは、できないそうだ。

有事になれば、言論の自由は制限される。

もちろん日本国憲法には、「この憲法を一時停止してもよい」とか「有事の時には基本的人権が制限される」とは書いていない。

つまり、有事法制は憲法違反である。

いま政府がやろうとしている事は、事実上の改憲であり、憲法違反なのである。

有事法制が成立すると、憲法第9条は一時停止になり、主権在民も危うくなる。

明治憲法にも人権条項は書かれていたが、それは「天皇が国民に恵んであげるもの」であり、停止しようと思えばいつでも出来るものであった。

日本国憲法の人権条項は、「政府に対する命令」になっていて、政府を縛るものである。

有事法制は、人権について「政府が決定する」と書いてある。

だから有事法制は、憲法を破壊する法律であり、明治憲法の原理である。

この法に対して、私たちはどうすればいいのか。

インドのガンジーの例を紹介したいと思う。

インドがイギリスの植民地だった1919年に、イギリスは有事法制をインドの議会に提出した。

それは、「独立運動を弾圧するために、戒厳令を布告できる」という内容だった。

ガンジーの組織は、「この法案は、我々の人権と法の統治を押しつぶしてしまうものであり、たとえ可決されても我々は守らない。」という文書を作って、人々の署名を求めた。

これは、不服従という名の実力行使である。

結局、法案は可決されたが実施されず、ガンジーが勝った。

有事法制には、もう1つ重要な側面がある。

有事になれば、国内の平和勢力が弾圧されるのである。

今のアメリカは、その状況である。

9.11事件以来、アメリカの平和勢力は非難されている。

1964年のトンキン湾事件は、ベトナム戦争のきっかけになったが、アメリカ政府の自作自演の事件であった。

1931年の柳条湖事件も、日本軍が満州に侵攻するきっかけになったが、日本軍の自作自演であった。

こういう事件は、現在でも起こり得る。

日本で有事が宣告されて戦争になり、後になって「あれは作り話だった」となったら、どうする?

小泉首相は「備えあれば憂いなし」と言っている。

「戦争をする準備をしておかないと、危ないじゃないか」と主張しているが、「その準備があると危ないじゃないか」と私は言いたい。

息子ブッシュ大統領は、「先制攻撃も辞さない」と言っている。

そして日本は、そんなアメリカに付いていこうとしている。

「北朝鮮が危ない」と言うが、北朝鮮が日本を攻撃する可能性よりも、アメリカが北朝鮮を攻撃する可能性の方が高い。

(2014年6月18日に作成)


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