(『なぜアメリカはこんなに戦争をするのか』C・ダグラス・ラミス著から抜粋)
アメリカの一般社会と比較すると、アメリカ軍人のドメスティック・バイオレンス(恋人や妻への暴力)や児童虐待は、統計的に多い。
それは驚くことではない。
暴力が軍隊の目的であり、軍人は暴力を振るう訓練を受けている。
その暴力の一部が、妻や子供にあたるのは当然だろう。
沖縄でも、女性や子供がしばしば米兵の暴力の被害者になっている。
暴力事件が起きると、アメリカ軍は「教育と綱紀粛正」をするのだが、解決になっていない。
それは不思議ではない。
軍の教育と綱紀粛正の基本的な目的は、人を殺せる人間にする事である。
軍事教育は、暴力を使える人間を育てるのが第1の目的である。
女性蔑視や女性に対する暴力は、古代からの「軍隊の伝統」である。
私がアメリカ海兵隊にいた時、繰り返し言われたことは、「戦時の任務は敵を破壊すること、平時の任務は敵を破壊する準備をすること」であった。
絶対に忘れたり目をそらしたりしてはいけないのは、『軍の機能は人を殺すことであり、軍人は殺人の訓練や精神的な教化を受けている』ことである。
第二次大戦の末期に、アメリカ軍は強制的に兵たちの心理面などを調査した。
その中の1つに、「戦場で人を狙って銃を撃ったことがあるか」との質問があった。
これに対して、80~85%の人が「ない」と答えた。
8割以上の人が、人を殺そうとしなかったのである。
「たとえ敵兵でも、人間を撃つのはしたくないし出来ない」というので、地面などを狙った兵が多かった。
敵兵を殺そうとしないのは、軍にとっては非常に困ったことである。
そこで軍は、訓練のやり方を変えた。
昔のやり方は「円い標的を置いて、それを狙って撃つ」ものだったが、「人間の形をした標的が飛び出してきて、それを反射的に撃つ」ようにした。
これにより、ベトナム戦争の時には、9割以上の人が敵兵に向けて銃を撃ったという。
洗脳をして人を殺せるようにするのが、軍の教育である。
「あっちの人たちは殺していいが、こっちの人には親切にしなければいけない」と軍は教育するが、混乱してしまう人も出てくる。
そして、犯罪や暴力をしてしまうのだ。
人種差別も、軍隊文化の1つである。
「あいつは劣っている」と思えば、殺しやすくなるからだ。
私がアメリカ海兵隊にいた1950年代には、「次の戦争は中国とだろう」思われていたので、差別の対象は中国人(アジア人)であった。
湾岸戦争の時には、アラブ人に替わったようである。
アメリカ軍の中では、同性愛の人が多い。
男性ばかりの組織なので、同性愛が起こるのは当然である。
同性愛であるとはっきりすると除隊処分になるので、それを利用して将校らが、部下の女性にセックスを強制する事がよくあるという。
「僕と寝ないかぎり、君が同性愛ではないと信じないよ」という論理である。
(2014年6月19日に作成)