(『ニュースを読む技術』池上彰著から抜粋)
『日経平均株価』とは、そもそもどういうものなのか。
日経平均株価が1万円の数字をつけた時に、個々の株価を見ると、1万円の株価がついている会社はほとんどない。
日経平均株価は、単純な平均株価ではないのである。
日経平均株価は、海外では『日経225』と呼ばれている。
それは、一部上場企業から225社を選んで、その株価を対象に計算しているからである。
なぜ、225という中途半端な数字なのか?
実は、初めて計算を始めた1950年には、一部上場の企業は225社だった。
つまり、当初は全社の株価が対象だった。
その後、平均株価の計算は、1970年に日本経済新聞社が引き継ぎ、「日経平均株価」という名称に変わった。
さらに75年からは、アメリカのダウ・ジョーンズ社と提携をしたため、「日経ダウ平均株価」という名前になった。
85年に提携は解消されて、「日経平均株価」に戻った。
日経平均株価の計算方法を紹介しよう。
かつては、株式の1枚1枚に、50円、500円、5万円という額面が表記してあった。
ところが2001年10月に、この額面制度は廃止された。
そして、それまでの額面を「みなし額面」として、計算する事になった。
現在の計算式は、こうである。
各社の株価=50÷みなし額面×現在の株価
日経平均株価=225社の株価の合計÷除数
まず各社の株価を、50円の額面に換算し直す。
つまり、みなし額面が5万円であれば、株価を1000分の1に直す。
次に、こうして計算された225社の株価を合計して、それを除数という決められた数字で割る。
なぜ決められた数字で割るかというと、「調整をするため」である。
例えば、ある会社が1株を2株に分割したとする。
こうなると、この会社の株価は半分になるので、そのままでは日経平均株価は下がってしまう。
会社の業績に変化はないのに、日経平均株価が下がるとおかしいので、除数で割って調整をするのだ。
また、採用されている225社は、入れ替えもある。
入れ替えた場合も、除数で調整をする。
こうした調整をくり返した結果、当初は225だった除数は、30を割り込むまでに小さくなっている。
直近の除数の値は、日経新聞の朝刊に出ている。
こうやって見ると、日経平均株価の数字自体には、実は何の意味もないと分かる。
数字自体には意味はないので、過去との連続性を見て、昨日に比べて上がった下がったという「トレンドを見るもの」と考えてほしい。
日本では、『TOPIX(トピックス)』という数字も使われる。
これは「東証株価指数」のことで、一部上場株の値段の総額である。
全部の株の総額を出して、過去と比べるものである。
計算を始めた1968年1月4日を100として、計算を継続してきている。
(2013年8月9日に作成)
(以下は『毎日新聞2013年5月24日』から抜粋)
東証の日経平均株価は、1143円の急落となった。
これはITバブルが崩壊した2000年4月以来の大きな急落である。
アベノミクスへの期待で過熱気味だった円安と株高は、調整局面を迎えた。