アベノミクスについて
的外れな政策であり、真の景気回復には繋がらない①

(ユーチューブの動画から)

今回の記事は、ユーチューブにアップされている『二宮厚美さんへのインタビュー』を文字に起こしたものです。

二宮さんは、アベノミクスについて、『アベノミクス デタラメに飛ぶ3本の毒矢』という動画で見事な解説をしています。

私は動画を見ていて、感動すらおぼえました。

自分が勉強するために、ノートに内容を書いたのですが、多くの方に知ってもらうためにも、ここに書く事にします。

動画を見るよりも、文章の方が分かり易いことも多いですしねー。

◎ 二宮厚美さんによるアベノミクスの解説

アベノミクスは、元々は2012年12月の総選挙の前に、「このままデフレ不況が続いた場合には、13年秋にある消費税率の引き上げの決定確認で、引き上げの決定が出来ない」との状況に追い込まれていた事が、背景にあります。

デフレ不況を、見せかけの上だけでも改善している様にしないと、消費税率の引き上げは出来ません。

(※消費税率の引き上げには、景気を見て決めるとの条項があります)

そこで、あわててごった煮の政策を作って、『アベノミクス』と言って打ち出したのです。

ですから、直接の狙いは、『消費税率の引き上げの前提を作り出すこと』です。

「見せかけだけでも、物価上昇を作り出さなければならない」、これが当初の狙いです。

○ 第1の矢 量的な金融緩和 的に届かない矢

アベノミクスの第1の矢は、『量的金融緩和の政策』です。

結論から言うと、この矢はデフレ不況の打開の的には、届かないで落ちてしまう矢です。

なぜかと言うと、日銀の量的金融緩和の政策は、それ自体ではデフレ不況を打開する力は持っていないからです。

日銀の政策には、もともと限界があります。

これは、かつての白川・日銀総裁が、繰り返し言ってきた事です。

いくら日銀がお金をばら撒いても、不況の打開までにはいかないのです。

なぜかと言うと、日銀が出来るのは、銀行の資金量を拡大する所までで、すでにゼロ金利なので「金利の上げ下げ」は出来ないからです。

(日銀が上げ下げするのは、短期金利です。後に出てくる長期金利とは違います。)

アベノミクスは、この状況を変えるために、『新しい金融政策』と称して、「通貨量そのものを操作する」という政策に乗り出しました。

しかしこれは、実は21世紀の初頭から、日銀がすでにやっている事です。

具体的に説明すると、日銀は銀行が保有している国債や株式や債券を買い取って、銀行は買い取り代金を日銀の中にある「当座預金」に振り込んでもらうのです。

この当座預金と、流通しているお金を合計したもの。
これが、「マネタリー・ベース」と呼ばれるものです。

「マネタリー・ベース」は、昔は「ハイパワード・マネー」と呼んだもので、中央銀行(日銀)が世間に出回らせるお金の発動値(総量)です。

「マネタリー・ベース」は、日銀が銀行から債券などを買えば、それが現金(日銀券)に換わるから、増やせるわけです。

この行為を、『量的金融緩和の政策』と言って、現在まで10数年間も続けてきました。

実は、日銀はここまでしかやれません。

つまり、銀行から先の「個人や企業」に資金が出回るかは、日銀には決められないのです。

個人や企業が銀行からお金を借りることで、初めて世間に出回るお金の量が増えます。

つまり、『世間に出回るお金の量は、その時々の景気の動向が決める』のです。

景気が良くなれば、個人も企業もお金を借ります。

世間に流通しているお金を、「マネー・ストック」と言います。
昔は、「マネー・サプライ」と言いました。

「マネー・ストック」の量は、景気の動向そのものが決めます。

それなのに、アベノミクスでは『日銀が世間に出回るお金の量を決められるかの様に、錯覚している』のです。

しかし、先に立つのは日銀ではなく、景気の動向です。

だから私は、アベノミクスを「アベコベミクス」と呼んでいます。

今までの量的緩和により、銀行はすでにわんさとお金を持っています。
ジャブジャブにお金が溜まっています。

ところが、銀行から個人や企業にお金が流れていない。

だから、物価も上がらないし、景気も良くならないのです。

この事実があるから、白川・日銀総裁は「日銀の政策には限界があるんだ」と、正論を言ってきました。

ところが安倍首相は、日銀総裁の首をすげ替えて、無理をして量的緩和をやらせている。

新しく総裁になった黒田さんは、「従来とは次元の異なる、異次元の金融緩和だ」と言っています。

問題は、『どこが従来と違っているのか』です。

これは、2つあります。

① マネタリー・ベースを、2年間で2倍に増やす

これはつまり、銀行に満腹以上にお金を与える事です。

黒田総裁の狙いは、銀行から「直接に取引市場にお金を持っていくこと」です。

ゼロ金利ですから、銀行はお金を国債にかえても利益が出ないし、ジャブジャブに資金を与えれば「銀行は、株や社債への投機に向かうのではないか」というわけです。

これは、やってはいけない政策です。
これは確かに、従来とは次元が異なります。

② 日銀そのものが、ETF(上場株式の投資信託)やREIT(不動産の投資信託)といった証券を買い取って、証券市場にてこ入れを図る

これはつまり、銀行を通じて介入するのではなく、直接に証券(リスク資産)を買って、価格を引き上げようとする事です。

長期国債を買うと、長期金利は下がります。

長期金利が下がると、各種の金融資産の価格は上がります。
そして、バブルが起こります。

これは、伝統的にやってはいけない金融政策です。

日銀がバブルを呼び起こすなんて、とんでもない事であって、とても悪質な事です。

アメリカの住宅バブルや証券バブルは、FRBや銀行の管轄外の、ヘッジファンドや投資ファンドが、勝手に起こしました。

FRBがバブルを生み出したわけではありません。

今の日銀は、FRBですらやらなかった、『中央銀行が自ら長期金利を下げて、資産価格を膨張させてバブルを起こす』という事をしています。

黒田総裁は自ら、「長期金利と資産価格に影響を与える点で、新しいんだ」と説明しています。

株や不動産の価格が上がると、「資産効果」と言いますが、資産価格が上がり、所得が上がります。

そうすると資産家の所得は増えて、最近はデパートで高級品が売れているように、「リッチな消費」は伸びるんです。

これによって消費を喚起できると、黒田総裁らは考えているのです。

さらに、株が上がれば企業もうるおうのではないか、とも考えています。

この政策は、私に言わせれば、全く無謀な政策です。

「バブルを呼び起こすのは、ダメな事だ」というのは、アメリカでもヨーロッパでも実証されています。

この政策では、景気は本当の回復はしません。

その証拠に、一般の庶民の生活では、消費の節約が続いています。

ここを解決しないでバブルに走るというのは、危険な政策です。

話をまとめると、アベノミクスの第1の矢は、一般の人々の生活に影響しない(お金が世間に出回らない)ので、「的に届かない矢」です。

(※続きはこちらのページです)

(2013年8月29日に作成)


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