(TV番組・ヨソで言わんとい亭から抜粋)
ここで紹介するのは、「TV番組・ヨソで言わんとい亭」で、テーマが『元キャリア官僚大集合』だった日の抜粋です。
官僚の実態が分かる、興味深い内容なので、取り上げることにしました。
番組に参加されている元キャリア官僚の方は、石川和男(元経産省)、岸博幸(元経産省)、福井秀夫(元国交省)、寺脇研(元文科省)の4人です。
○ 退職金について
寺脇
天下りせずに『自力で何とかやっていく』と言って辞めると、退職金が多く出ます。
勧奨退職になるので。
(天下りとは、『定年前に退職する官僚のために、次の就職先のお世話をしてあげること』です)
岸
寺脇さんみたいに30年働いて辞めるのは、ずるいんですよ。
退職金がいっぱい貰えますから。
俺は20年で辞めたから、すごい安かったもん。
20年と30年は全然違います。
寺脇
辞める時の給料が基準になりますから。
岸
退職金の額は、50代前半の年収が1300~1400万円で、局長くらいまで行ってれば、6000万円くらい出ます。
○ 天下りの実態
寺脇
天下りシステムは、昭和40年くらいに完成しました。
福井
基本構造は、明治時代からです。
寺脇
田中角栄・内閣の頃には、完成していたと聞いています。
岸
終身雇用制度も、実は高度成長期にできた仕組みなんです。
寺脇
終身雇用だと、60歳まで雇わないといけない。
ところが、役所の中はピラミッド構造なので、次官になれるのは1人だし、局長にも何人かです。
出世できなかった人を60歳まで雇用するために、天下りシステムが確立された。
福井
民間企業だと、『同期の中で誰かが出世したら、他は辞める』なんて慣行は無いですよ。
官庁はそれをするから、天下りが行われるんです。
(官僚組織では、出世できなかった官僚に辞めてもらって、若い官僚にポストが回るようにする慣習がある。
そして『定年まで面倒をみる』という名目で、天下り先が斡旋される。)
岸
最近は変わってきましたけど、企業側も役所と良い関係になりたくて、天下れるポストを用意してきました。
天下ってきたOBが頑張ってくれれば、政府予算を取ってきたり、役所に便宜を図ってくれます。
はっきり言えば、『口利き』をしてくれるのです。
福井
天下りは、役所での最終到達ポストに応じて、松竹梅とランクがあります。
出世した人ほど、良い再就職先が斡旋されます。
寺脇
企業側は、能力に期待してではなく、保険として元官僚を受け入れます。
だから元官僚には、『朝から夕方まで新聞を読んでる』なんて人も居ます。
福井
仕事はしてもらう必要はありません、って言われる方も居ます。
寺脇
天下りした人は、仕事は少ないから残業は無いです。
福井
新聞と週刊誌が全部、頭に入っている人も居ます。
寺脇
それで年収は1000万円以上です。
天下りは、何回も行く人がいます。
80歳くらいまで、天下りで転々としてる人も居ます。
質問者
企業を辞める際には、退職金が発生しますよね?
5回も6回も、退職金をもらうパターンはありますか?
岸
イエス。トータルでは1億円以上になります。
寺脇
それが、『渡り』といって問題になっている事です。
国会で追及されたのは、それです。
岸
民間企業では、60歳を超えた人を、再雇用という形で雇っています。
でも再雇用では、給料は半分くらいに下がります。
『何で官僚の天下りの場合は、給料が増えるんだ!』と、普通の人々は思うわけです。
寺脇
現役時代よりも天下り先で良い待遇を受けたいと思うのが、そもそも間違っています。
質問者
官僚はプライドが高すぎるから、普通の待遇で雇われるのは無理なんじゃないですか?
寺脇
役所言葉で、『部屋・車・女』というのがあるんです。
偉くなると、個室、専用の黒塗りの車、女性の秘書、が付いてきます。
辞めてから3つ共に無くなるのが、堪えられないらしいです。
○ 官僚の接待事情
福井
我々の現役時代は、接待に関して大らかでした。
財務省は『THE官庁』ですから、他の官庁が財務省の予算担当を接待するのは、ごく当たり前でした。
(こうして官僚が官僚を接待する事を、『官官接待』と云う)
岸
僕も昔は、大蔵省(現在の財務省)の人を頻繁に接待していました。
あの頃は、そのための予算がありましたからね。
今はもう厳しくなりましたが、私は週3回で料亭に行ってました。
僕の上司の課長は、1年中ゴルフを週末に業界の人としていました。
昔の接待は、風俗など何でもアリでした。
寺脇
今は、風俗系の接待なんてあり得ないです。
昭和の時代にはありました。
質問者
接待の時には、お土産もあるんですか?
岸
お菓子の包みを渡されて、中に車代が入っていた事はありました。
寺脇
地方自治体の役人と話す時には、国から補助金が出ているので、どうしても官僚が上位になります。
でも、お酒の席では上下が無くなるので、本音を聞ける事があります。
石川
接待の場じゃないと本音で語れない部分もあります。
岸
人によっては、『裸にならないと本音を言えない』って奴も居ましたからね。
○ 知られざる官僚の待遇
質問者
タクシーは、乗り放題なのですか?
石川
枠があって、タクシー・チケットという物があるんです。
福井
省庁によって全然違うんです。同じ省でも部署で違う。
岸
恵まれた部署では、無制限に乗れます。
福井
予算の中枢に近いほど、恵まれているんです。
会計課とか局の総務課は、恵まれています。
残業させられて、自腹でタクシーで帰った事も、何回もあります。
質問者
残業代が出るのですか?
福井
残業には、大体は頭打ちがあります。
私の経験では、会計部局を除いては20時間で頭打ちでした。
石川
××党の大物議員の場合、言う事を聞いて(時間外の)働きをすると、お金をくれるからね。
そういう時は、全てピン札なの。
○ 国会答弁の裏側
国会答弁では、野党からの質問は『事前に官僚に通達されて』いる。
そして官僚は、回答用の原稿を作成し、それを総理や閣僚は読み上げている。
福井
国会の質疑は、最後(結論)は決まっているんですよ。
質疑に入る時には、結果はすでに決まっています。
だから、質疑応答じたいが出来レースなんです。
石川
想定していない質問をされて、ごく稀にですが政府側が負ける事もあります。
でも通常の場合、官僚が事前に質問を取りに行って、不利な質問は全部その時に消しちゃうんです。
『先生、その質問はこうです』と、役人がその場で答えちゃう。
私は、これをよくやりました。
福井
本番で言われたくない事は、あらかじめ納得してもらうように心掛けます。
石川
それが、事務方の手腕になっているんです。
質問者
政治家に渡す原稿は、『漢字にルビが振ってある』と聞きますが?
福井
ルビを振れと言われた事があります。
『円滑な事業の進捗状況』と書いたら、「エンコツなジギョウのシンショウジョウキョウ」と政治家が読んじゃいまして。
後から局長に思いきり叱られました。
『小学生でも分かるように、漢字には全てルビを振れ』と。
岸
漢字の読めない大臣は、いっぱい居ます。
寺脇
総理大臣だって、漢字の読めない人も居るから。
石川
役所用語は、難しい漢字が多いんですよ。
自由闊達とか侃々諤々とか。
質問者
そういう難しい言葉じゃないといけないのですか?
噛み砕いて書いたらダメなのですか?
岸
前例に倣って無難な答弁にするのが、メインになってますから。
結局は、単語は難しいけど、文章自体は大した事は言ってないんです。
福井
揚げ足をとられない事が、非常に重要なんです。
岸
国会答弁には、決まり文句がいっぱいあります。
僕も愛用していた決まり文句は、『いずれにしても』です。
国会答弁の一番の原則は、『野党の質問に正面から答えないこと』なんです。
すれ違い答弁とよく言われますが、揚げ足をとられないように、言質をとられないように、答弁をしていきます。
相手の質問に答えにくい場合、話を変えるために、「いずれにしても、鋭意前向きにがんばってまいる所存です」と言うわけです。
○ 官僚の素顔
質問者
農水省の元官僚の人が、「経産省の人はチャラい(軽薄だ)」と言っていましたよ。
岸
それは否定しません。
石川
私みたいに生真面目な人もいますよ。
質問者
合コンなんて、するのですか?
岸
よくやりました。
官僚って、合コン相手としては良くないんです。
話がつまらないですから。
福井
「自分は何法の何条の条文を作ってる」とか、延々と女の子の前で喋っちゃうんです。
延々と喋り続ける人が、官僚には多いです。
岸
役所の人間って、自慢したがるんです。
役人同士で昼飯を食ったって、自分の仕事を自慢してますから。
福井
官僚は、同じ課のアルバイトの女性と結婚する人が多いですよ。
岸
手が足りないと言って、非常勤のアルバイトを雇います。
官僚は男ばかりですから、若くてかわいい子をアルバイトに選ぶんです。
福井
面接は、庶務係長などがします。
採用は縁故関係が多いです。
岸
自分のセクションごとに募集して採用できますから。
福井
アルバイトには公務員試験が必要ないから、どんな人でも採用できます。
(2014年11月24日に作成)