(以下は『赤旗日曜版 2014年9月14日』から抜粋)
🔵新里宏二(弁護士)の話
私は弁護士として、多重債務の問題に取り組んできました。
ギャンブル依存症の人が借金を重ねて、仕事を失い、家族も離れ、自殺までするケースを見てきました。
ギャンブルを使った経済政策は、間違いだと思います。
アメリカの投資銀行は、「カジノには4兆円の経済効果がある」と云っています。
算定の根拠は、日本人の個人資産です。
「高齢者のタンス預金がカジノに使われて、経済が活性化する」と云うのです。
でも、例えば自分の親に、「タンス預金を使ってカジノで遊んできたら」と言いますか?
日本ではギャンブル依存症の人が、2008年の調査では『成人男性の9.6%、成人女性の1.6%』も居ます。
成人全体の5.6%がギャンブル依存症で、アメリカの1.4%と比べても格段に多い。
総人数は560万人もおり、日本はすでに『ギャンブル大国』なのです。
世界にあるスロットマシンは600万台以上ですが、そのうち400万台が日本にあります。
パチンコの売上は、年に19兆円といいます。
今の日本では、カジノ解禁ではなく、『依存症対策』や『パチンコへの規制強化』をしなくてはなりません。
また、カジノには「マネーロンダリングに使われる」という問題もあります。
これまでカジノ合法化の前面に立ってきたのは、自民・公明・みんな・結い・生活の各党議員でつくる「カジノ議連」です。
国会にカジノ合法化法案を提出したのは、自民・維新・生活などの議員たちです。
すでにカジノを合法化した韓国では、道路や町の整備にカネがかかり、ギャンブル依存症のケア、警察配備など、支出が税収を上回っています。
(韓国では2000年から、自国民向けカジノの「江原ランド」がスタートした。
江原では、雇用は6千人増えたが、ギャンブル依存症が増え、犯罪率は1.5倍になった。
周りは質屋だらけで、住民は1万人減った。)
地方にカジノを造ることは、リゾート法の二の舞になる懸念があります。
(リゾート法は、1987年に施行された「総合保養地域の整備法」の通称である。
この法律を元に、バブル景気に乗って各地にゴルフ場・スキー場・ホテルなどが建設された。
そして、宮崎のシーガイヤをはじめ次々と破綻した。)
カジノは人間をダメにするので、リゾート法よりもさらに危険です。
(以下は『毎日新聞 2014年11月27日』から抜粋)
🔵鳥畑与一郎(静岡大学の教授)の話
安倍政権の成長戦略の1つである「カジノ法案」は、衆院解散で審議が先延ばしになりました。
カジノ導入に伴う、メリットとデメリットを知ってほしい。
メリットは、一時的でも大きな経済効果が得られる事です。
デメリットは、カジノは顧客の負け金が収益となるため、新たな価値を生み出さない事です。
カジノ収益は、『客の巨額の負け』で生まれる事を、忘れてはなりません。
カジノの経済効果が永続するかは、しっかり考える必要があります。
アメリカでは、外国人をターゲットにしたラスベガスは成功しているが、国内(アメリカの一般人)をマーケットにした他の場所では、「地元の商品を買わずにカジノにつぎ込む『消費の置き換え』」で商業不振が起きています。
そもそも日本でIR(統合リゾート)を造ったとして、世界をマーケットにできるでしょうか。
既にアジアではIR建設が続き、今後は市場飽和すると見られています。
成功例とされるマカオとシンガポールでさえ、地元商店街の衰退が見られる。
カジノを造って国内客が大半となった場合、一般の日本人が顧客になってしまうでしょう。
横浜市のIR構想も、周辺地域との経済格差を生む可能性があります。
(以上は2014年12月12日に作成)
(以下は『東京新聞 2018年8月6日』から抜粋)
🔵イングランドの話など
イングランドは、1960年にギャンブルをほぼ全面的に合法化した。
その結果、選挙結果から王室の赤ちゃんの名前までが賭けごとの対象となっている。
それでもカジノの客に事業者がカネを貸すことは禁じている。
賭け事への融資は認めていない。
日本のIR整備法は、カジノ事業者に客へのカネ貸しを認めた。
これはギャンブル依存症を悪化させる。
イングランドでは、依存症などの問題を抱える客にギャンブルをさせた場合、ギャンブル事業者に高額な罰金など厳しい罰則を科している。
イングランドの調査会社「H2ギャンブリング・キャピタル」によると、2017年のギャンブル消費額(賭けた人が負けた総額、公営のみ)は、次のとおりだ。
1位は米国で901.9億ドル(約10兆円)。
2位は中国。
日本は3位で427.2億ドル。
イングランドは5位。
1人あたりの年間のギャンブル消費額は、1位はオーストラリアで、1009ドル(約11万円)。
オーストラリアはギャンブルの規制が緩く、パブなどに設置されたゲーム機で1時間に1150ドルまで賭けられ、社会問題化している。
2位はシンガポール。
日本は461ドルで5位だ。
(以上は2025年7月11日に作成)