2014年12月から始めた「安倍政権を見極める」シリーズですが、今回は高額な役員報酬についてです。
安倍政権は、よく指摘されますが、強者や富裕層を優遇する政策を採っています。
高額な役員報酬は、安倍政権になる前から行われてきましたが、それがさらに加速しているのが以下を読めば分かります。
(ここからは、週刊朝日2014年7月25日号からの抜粋です)
1億円以上の報酬をもらう役員は、年々増えている。
東京商工リサーチによると、2014年3月期決算で1億円以上の報酬が出た上場企業は191社で、人数は361人である。
前年同期よりも、16社・60人も増えている。
これは、役員報酬1億円以上の開示が始まった2010年以来では、最多である。
東京商工リサーチの坂田芳博
「報酬の高い人は、外国人の役員と、オーナー企業の社長が多い。」
報酬額のトップは、キョウデンの橋本浩・最高顧問で、12.9億円である。
2位と3位はカシオ計算機で、樫尾和雄・社長の12.3億円と、樫尾幸雄・特別顧問の10.8億円である。
この3人は、いずれも退職慰労金での躍進だ。
役員報酬は、大きく4つに分けられる。
「基本報酬」「賞与」「ストックオプション」「退職慰労金」である。
日本特有の退職慰労金は、海外株主の批判が強く、海外株主の多い企業は変更し始めている。
これに伴って最近は、現役中に退職慰労金を支払うケースが増えている。
日産のカルロス・ゴーン社長は、今年は5位だったが、慰労金を除いた実質的な報酬ではトップだ。
本来の報酬分が多いのは、パチスロ大手のユニバーサルエンターテイメント、半導体で強い信越化学工業、音楽のエイベックス、機械のファナックなどである。
最も人数が多かったのは、三菱電機で、なんと18人も1億円以上をもらっている。
2位はファナックの10人、3位は三菱商事と三井物産の8人である。
武田薬品は低迷を続けているが、報酬ランキング4位にフランク・モリック前取締役がおり、山田忠孝・取締役と長谷川閑史・会長もトップ30入りしている。
株主総会では、報酬の多さに反対意見が尽きなかった。
ソニーは、2009年と10年にハワード・ストリンガー社長に8億円以上の報酬を与えている。
12年度から社長を継いだ平井一夫も、3億円以上をもらっている。
だが、同社は赤字決算になっている。
ソニーを含めて、赤字決算なのに1億円以上を与えている企業は、10社もいる。
無配当なのに1億円以上を与えている企業は、5社である。
両方に当てはまっている日本板硝子は、1億円以上が4人もいる。
BNPパリバ証券の中空麻奈
「株式会社として、赤字・無配なのに高額な報酬を出すのは、あってはならない」
役員報酬1億円以上の開示は始まって5年目だが、5年間の総額は、ゴーン氏は48.4億円、日本調剤の三津原博・社長は29.6億円、セガサミーの里見治・会長は28.8億円である。
業績が低迷している武田薬品の長谷川会長とソニーの平井社長も、10億円以上もらっている。
社員の給料はなかなかアップしないが、役員報酬は1年で億単位で増える事もある。
ユニバーサルエンターテイメントの岡田和生・会長は、前年比で4.4億円増になっている。
ソニーの平井社長も、1.6億円増である。
その一方で、社員の年収は下落傾向だ。
国税庁の調査では、2012年の社員平均は408万円で、1997年の467万円をピークに下落している。
経営が悪化すると、社員はリストラされるのに、役員は高額報酬が維持され責任も取らない状態である。
もう1つ気になる事がある。
それは、『外国人の役員は、税負担が軽くなっていること』だ。
税理士の川田剛
「日本では、非居住者の所得税は、居住者に比べて低い。
(これは、典型的なタックスヘイブンとオフショアのやり口です)
非居住者は、日本で得た所得の20%しか課税対象にならない。
ストックオプションの場合、外国人役員が帰国後に株を売却すれば、日本は課税できません。」
つまり外国人役員は、非居住者になるように滞在日数を制限すれば、20%の課税になる。
税金の低い国(タックスヘイブン)で株を売却すれば、税金はかからなくなる。
神野直彦(東大教授)
「日本の所得税制は、グローバル社会を想定していません。
日本で稼いだら日本で税を納めるように、しなければなりません。」
(2015年1月5日に作成)