安倍政権を見極める⑬
原発の再稼働・川内原発について 広瀬隆さんの話

これから紹介するのは、私の敬愛する広瀬隆さんが行った2014年4月18日の講演から、抜粋したものです。

ユーチューブにアップされている映像から、要点をまとめました。

広瀬さんは、原発や放射能汚染に詳しい方で、長年にわたって原発を無くすために闘ってきました。

この講演では、川内原発の危険性について解説しています。

彼は、激しい怒りのために、語り口が厳しくなりすぎる傾向があります。

そのままだと激烈すぎると感じるので、柔らかい雰囲気にアレンジして紹介します。

もちろん、内容そのものは変えません。

○ 広瀬隆さんの話

川内原発(鹿児島県川内市)は、1号機と2号機があって、3号機を造る計画もありました。

1号機は、すでに運転開始から29年になります。

かつて技術者だった立場から言いますと、どんな機械でも30年は持ちません。

そういった機械を組み合わせたものが、原発なんです。

ですから再稼働させるのは、危険な行いです。

2011年1月26日に、新燃岳(鹿児島県の霧島山の一部)で噴火が始まり、火口から上空2000mまで噴煙が達しました。

この時に、アメリカのNASAが撮った衛星写真があります。

それを見ると、噴煙は東に流れて、太平洋にまで流れています。

これを川内原発に置き換えると、もし事故が起きたら、放射能は東に流れて、鹿児島全域が放射能まみれになります。

(川内原発は、鹿児島県の西端にあります)

福島では今、地下水を通して汚染が拡がっています。

それなのにメディアは、ろくに調査もせずに「風評被害」という言葉を使って、汚染を軽視しています。

そこで私達は、福島原発の近くに入っていき、危険地帯を調査しました。

大熊町に行って、全域を調べました。

最後に「広域避難場所」と書いてある所(住宅街のど真ん中)で、放射能を測定しました。

すると、『毎時320マイクロシーベルト』でした。

私は本当に怖くなりました。致死量だったからです。

急いで皆で逃げました。

毎時320マイクロシーベルトは、3年間の量になおすと「7シーベルト」です。

7シーベルトは致死量です。

つまり、大熊町に原発事故後に住み続けていたら、町民は全員が死んでる可能性があるのです。

現在の大熊町は、人間は1人も居ません。
それが事故現場なんです。

もし川内原発で事故が起きたら、鹿児島県もそうなるのです。

福島原発事故では、実は8割の放射能は、風に乗って東の太平洋に落ちました。

内陸に積もったのは2割だけです。

この意味が、おわかりですか?

もし川内原発で事故があったら、風で北東に流れる可能性が高いので、九州だけでなく、四国などにも流れていきます。

福島では、海洋汚染がすさまじいです。

原発から出た放射能は、海流にのって2012年3月にはハワイまで到達しました。

現在では、アメリカ西海岸まで行っているでしょう。

これを、川内原発に置きかえてみましょう。

九州大学の広瀬直毅・准教授らは、「川内原発で放射能物質が海に流出した場合の、海洋拡散シュミレーション」を発表しています。

そのシュミレーションでは、3ヶ月後には、九州、四国、中国地方の海が汚染され、中国大陸の沿岸まで汚染されます。

ですから、九州の人々だけの問題じゃないんです。

九州から黒潮が上がっていくんですから。千葉県まで。

鹿児島の人々の再稼働させるかどうかの判断が、日本人の命を握っているのです。

ここからは、鹿児島県の火山問題を話します。

鹿児島には、新燃岳、6つのカルデラ地帯、桜島、があります。

火山群があるのです。

桜島の大型噴火は、2009年に始まって、今も止まっていません。

100年前(1914年)には、桜島で大噴火が起きました。

この時は、霧島でも噴火があり、『マグニチュード7.1の桜島地震』も起きました。

この時の桜島の噴火記録は、『桜島噴火記』として纏められています。

これを読むと、「桜島は噴火しない」と専門家は言っていて、それを信じた人達が犠牲者になり亡くなったと分かります。

今の福島でも、「放射能は大丈夫だ」というのを信じた人々が、どんどん被曝しています。

桜島の噴火回数は、2010年から年間1000回を超えています。

活動が活発化しています。

福島原発事故では、全電源が喪失して、大事故になりました。

あの時は、まず送電塔が倒れちゃったんです。

非常用電源(バッテリー)は、津波でやられました。

鹿児島で大噴火が起きて、火山灰が川内原発の方に流れたら、原発が稼働していた場合、爆発する可能性があります。

大量の火山灰が送電線に降り積もると、送電は上手く行かなくなります。

非常用のディーゼル発電機は、空気を吸い込んで発電しますが、フィルターに火山灰が詰まれば使えなくなります。

つまり、大噴火があったら、全電源喪失が起こり得ます。

火山灰よりも恐ろしいのは、火砕流です。

桜島では、2万9000年前に巨大噴火があり、東京ドーム36万個分という驚異的な量の火砕流が出て、南九州全域を壊滅させています。

これは、地質学の調査で分かっています。

川内原発の近くは、高さ数十メートルの火砕流が襲ったと推定されています。

毎日新聞は、日本中の50人の火山学者にアンケートをとりました。

そこで「日本の原発で、どこが一番危ないか」との質問に、29人が「川内原発」を挙げています。

それにも関わらず、原子力規制委員会は、たった1回の会合で、「周辺の火山が噴火しても、原発には影響はない」とする九州電力のデタラメ報告を了承してしまいました。

先月に(2014年3月に)、九州電力は大火砕流の可能性は認めましたが、「危険性は小さい」とのふざけた結論を出しました。

はっきり言いますと、日本は地震地帯にあり、「動いている島国」なのです。

そこに原発を建てるのは、沸騰寸前のやかんの蓋に原発を建てるのと同じです。

私達は「地震研究会」を作って、『原発を造る時に、どうやって耐震性を計算しているのか』を、原発の設計者・技術者が使う計算式を、全部調べました。

すると、でたらめの式ばかりでした。

1997年5月13日には、川内市の北東わずか20kmの地点を震源として、震度6弱の地震がありました。

驚くことに、当時の新聞を見ると、九州電力は原発の運転を止めなかったのです。

原発は危険なので、普通の地震でも(小規模の地震でも)止めるようになっているはずが、止めなかった。

これが、私が九州電力を信頼できない根幹です。

この地震のあと、九州電力は「データが無くなった」とか色々とデタラメを話しました。

「どこに活断層があったのか」と、我々は追及したのですが、九州電力の調査結果はこうでした。

「調べましたが、活断層を見つける事ができませんでした。

従って書いていないし(報告しないし)、評価していません。」

九州電力は、地震が起きたにも関わらず『活断層が見つからないから、地震は想定しない』という態度をする、信じられない電力会社なんです。

原発を建設するには、必ず地質調査をします。

パイプを打ち込んで地下の地層を見る、ボーリング調査も行われます。

ところが、川内市の地盤は軟弱なので、地層は「固い部分」と「柔らかい部分」が交互になっていました。

こんな所には、絶対に原発を建ててはいけません。

そのデータを出すと建設できないので、困った九州電力は、固い地層を取っておいて、弱い地層と差し替えました。

この行為は、北陸電力でも行われました。

今わかっているのは、その2社だけですが、おそらくほとんどの電力会社がやっていると思います。

この詐欺行為は、ばれてしまいました。

九州電力は「そんな事できるはずない」と反論しましたが、現場の作業者が国会に参考人招致されて、「私がやった」と証言しました。

九州電力は、ついに事実だと認めましたが、「差し替えはしたが、測定結果には間違いはない」と主張し、原発は建設されてしまいました。

つまり、川内原発はとんでもない地質の上に建っているのです。

活断層(中央構造線)は、長野県から九州まで続いています。

この活断層の終点が、川内原発です。

「この断層が動くかどうか」について、いま四国では大きな議論が起こっています。

伊方原発(愛媛県)の下も通っているからです。

中央構造線は、マグニチュード8を超す地震を起こす可能性のある、世界最大級の活断層です。

川内原発にもそれが来ているから、直下で大地震の起きる可能性があります。

九州電力の作ったデータ(断層の分布図)を見ると、奇妙なことに川内原発の近くになると断層が無くなるんです。

おそらく川内原発の所にも、断層が繋がっています。

断層があっても消す、それが電力会社がやってきた事です。

ところが2013年2月に、政府の地震研究推進本部が、『川内原発の至近距離に断層があること』を明らかにしました。

ついに2014年2月には、新潟大学の立石教授が、川内原発の東800mの所に、活断層と見られる3本の断層と破砕帯を発見しました。

(破砕帯とは、軟弱な地層のことです)

これが動いたら、大変な事になります。

ここからは、原発の耐震性の問題について話します。

昔、松田時彦という日本トップの地震学者がいまして、日本中の地震記録を調べました。

そして1975年に、データを(グラフを)発表しました。

このグラフは、断層の長さとマグニチュードの関係を示したもので、2つが比例することを表しました。

グラフを見ると、断層が10kmだとM6.5になります。

そして、「原発の近くには、10km以上の断層はあってはならない。原発はM6.5の直下地震にまで耐えられるように設計してあるからだ。」という結論になりました。

私は、松田のグラフを詳しく見ました。

すると、例えばM7.3の庄内地震(死者730人)は、断層10kmで起こっています。

松田の結論は、地震の平均値を基にしています。

でも原発の危険性をはかるには、真ん中の平均値でとってはならず、一番大きい側を基準にしなければなりません。

なぜなら、M6.5とM7.3では、エネルギーが16倍も違うからです。

松田は2008年から、「私は国に利用された」と釈明し始めました。

なぜ釈明を始めたかというと、2007年に中越沖地震が起きて、柏崎刈羽原発がボロボロになり、責任者として彼の名が挙がったからです。

中越沖地震の時は、M6.8でしたが、運転中だった4号機の原子炉の上にある大型クレーンが、落下寸前になりました。

これが落下していたら、終わってました。

驚くことに九州電力は、松田の古い概念に基づく式を使い続けて、耐震性を計算しています。

2008年6月の岩手・宮城内陸地震では、M7.2の地震でしたが、震源の真上では最大加速度4022ガルとなり、観測史上で最大の揺れとしてギネスブックに認定されました。

福島第一原発では、「想定を超える揺れ」が観測されたが、わずか500ガルでした。

川内原発は、福島原発事故をうけて620ガルに基準を引き上げました。

柏崎刈羽原発は2300ガルまで引き上げましたが、これは中越沖地震をうけて数字だけ上げたものです。

1000ガルを超えると、物は浮いてしまいます。

2300ガルで耐えられる原発など、あり得ません。

ですから、新基準はデタラメなものです。

岩手・宮城内陸地震は、震源域は「活断層は存在しない」とされてきた場所でした。

つまり、『日本で安全性を保証できる土地は無い』のです。

原子力規制庁は、こう云っています。

「新しい規制基準を満たした原発でも、事故は起きます。

この基準は最低のもので、あとは事業者の責任です。

放射能の拡散シュミレーション・モデルにも、限界があります。

どうするかは、自治体と住民および事業者で判断して下さい。」

さらに原子力規制委員会の田中委員長は、2014年3月26日の会見で、「適合性審査に合格しても、安全性は保証しません」と明言しました。

安倍内閣は、「大事故が起こった時の住民避難は、日本政府の関知することではない。地元の自治体が判断すべき事である。」と明言しています。

何という無責任な人間たちなのか!!

頭のおかしな人達が、再稼働をしようとしています。

(結局のところ、政府も専門家も『原発の直下で大地震が起きたら、必ず大事故になる』と予想しているのでしょう。

そして、日本では何処でも、大地震の起きる可能性はかなりあります。

だから、無責任に態度にならざるを得ないのです。

原発の再稼働を進める人たちは、『たぶん大地震は起きないだろう。起きないでくれ、頼む。』という願いを、行動の根拠にしています。

頭がおかしいと言われても、仕方ないですねー。)

川内原発(鹿児島県川内市)は、なぜ再稼働のトップに選ばれたのか。

鹿児島県の南大隅町は、最終処分場の候補地として名前が挙がっています。

その理由は、(沖縄を除くと)日本の最南端だからです。

高レベル最終処分場の候補地は、この間は九州で最北端の対馬市が挙がり、今度は南大隅町が挙がっています。

一番端っこを選んでいるのです。

ひどい話じゃないですか。

鹿児島の人々は、「危険なものを押し付けられている」との怒りを持って下さい。

(2015年1月15日に作成)


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