(以下は『毎日新聞 2012年11月27日』から抜粋)
経団連・会長の米倉氏は2012年11月26日の会見で、安倍首相が金融緩和をしようとしている事を批判して、こう述べた。
「(建設国債を日銀に買ってもらうのは)世界各国で禁じ手となっていて、無謀に過ぎる。国債の国際的な信用問題に発展しかねない。」
(以下は『毎日新聞 2013年1月23日』から抜粋)
日銀は1月22日の会合で、消費者物価の2%上昇を目指す「インフレ・ターゲットの導入」を決め、「強力な金融緩和の推進」を日本政府と共同声明することも決めた。
政府(安倍政権)と日銀の政策協定と言える。
日銀は、期限を定めずに国債などを毎月購入する「無期限緩和」も決めた。
2014年初めから実施する。
無期限緩和は、アメリカのFRBにならった手法だ。
これまでの物価上昇目標は1%で、2%に上げることで緩和が大規模・長期化するのは確実だ。
さらに物価目標については、従来の「ゴール」から「ターゲット」に英訳を改め、より強い表現にした。
安倍政権の圧力による政策変更は、日銀の独立性の懸念を広げそうだ。
なお日銀の1月22日の会合では、二人の委員が2%に上げることに反対した。
デフレ脱却を目指す安倍政権の介入により、日銀は政策の大転換を余儀なくされた。
次期総裁の人選が本格化し、日銀法の改正論がくすぶる中での出来事だった。
1月22日の日銀の政策変更までに、声明の文言は安倍首相の同意を得るまで4~5回の修正が行われた。
その結果、日銀が求めてきた成長率目標の明記は見送られ、日銀が抵抗してきた物価上昇目標2%はあっさり盛り込まれた。
「日銀の変節ぶりは際立っている」との指摘は少なくない。
日本は1980年代後半のバブル期でも、物価上昇率の平均は1%台だった。
足元では0%近辺で推移しており、「2%は非現実的だ」と日銀は主張していた。
土地や株が高騰したにも関わらず物価上昇が低いままだったバブル期の教訓から、「実体経済が必要とする以上の過剰なカネを供給すれば、制御できない状況になる」と 日銀は考えてきた。
民主党の閣僚経験者は、「今回の共同声明は、日銀法改定を避けたい日銀の生存本能が出た」と苦笑する。
日銀の独立性を高める現在の日銀法が施行された1998年以降、政府と日銀は政策をめぐって対立してきた経緯がある。
日銀はこれまで、望ましい物価上昇率は「当面1%をめど」としていた。
これに対し安倍政権は、「1%は低すぎで、めどの表現もあいまい」と批判をしている。
ただし物価目標は本来はインフレを抑える手段で、デフレ解消や景気の活性化に効くかは不明である。
物価上昇は、賃金増や雇用拡大が伴わなければ、暮らしは悪化する。
過去10年で1%以上の上昇だったのは2008年度だけだが、その時は原油や穀物の値上がりが主因で、国民生活は悪化した。
(以下は『毎日新聞 2013年1月25日』から抜粋)
自民党と公明党が(安倍政権が)1月24日に決定した、「2013年度の税制改正大綱」は、2014年4月の消費増税をにらんだものだ。
この大綱では、企業向けの減税がずらりと並ぶ。
まず、投資額の3%を法人税から差し引けるようにした。
研究費を法人税額から差し引ける「研究開発減税」も、上限を2割から3割にした。
中小企業の交際費は、800万円まで法人税のかからない損金に認めた。
だが減税で企業が助かっても、雇用や給料が増える保証はない。
なお消費税は2014年4月に5%から8%に上がるが、自公は軽減税率の導入を見送ることで合意した。
公明党は導入を求めていたが、自民党が首をたてに振らなかった。
ちなみに欧州諸国のほとんどは軽減税率を採用している。
(以下は『毎日新聞 2014年12月9日』から抜粋)
安倍政権の経済政策であるアベノミクスは、デフレからの脱却を目指している。
だが実際には、実質賃金は伸びず、消費税率の8%へのアップが家計を痛めつけている。
2014年11月に公表された総務省の報告では、『勤労者世帯の収入は、実質で昨年10月から13ヵ月連続で前年同月を下回って』いる。
この間、物価は前年同月比で3%の上昇が続いている。
そのため家計の消費支出は、7ヵ月連続で前年同月を下回っている。
消費税が10%になるのは1年半の先送りになったが、家計のやりくりで苦しんでいる家庭は増えている。
アベノミクスには、『格差の拡大』という側面がある。
野村総研は11月に、『1億円以上の純金融資産を持つ世帯は、昨年に過去最高の100.7万世帯となった』と発表した。
これは2011年に比べると、24.3%の増加である。
富裕層は資産を増やしており、株価上昇の影響が大きい。
他方で、日常の生活費しかなく金融資産を持たない世帯は、3割に上っている。
末広徹(みずほ証券)
「最近は、収入が下位の人ほど賃金が減っている。
所得が低い人ほど、先行きは明るくない。
格差は、さらに広がる可能性が高い。
アベノミクスの恩恵は国民全体には波及していない。」
内閣府が2014年12月8日に発表した7~9月期の実質GDPは、前期比0.5%減、年率で1.9%減だった。
これは、11月の速報値(年率1.6%減)からの下方修正である。
個人消費や企業の設備投資の低迷が続いている。
今回の下方修正により、「消費や設備投資など民間需要が総崩れ」であることが鮮明となった。
円安で輸入品の価格が上昇しており、消費冷え込みが続く恐れがある。
(以下は『毎日新聞2014年11月27日』から抜粋)
誰もがおかしいと感じた、安倍首相の衆院解散・総選挙の会見だった。
特定秘密保護法や集団的自衛権では「信」を問わなかったのに、消費税率10%への引き上げ先送りで、突如として信を問うという。
安倍首相は会見で、「100万人も雇用を増やした」と豪語した。
だが公的な統計では、イメージが異なる。
厚生労働省の統計では、アベノミクス以降、非正規雇用は93万人増えたが、正規雇用は46万人減った。
野村総研の調査では、2011年に比べて、2013年は富裕層が24%増加した。
富裕層の資産は53兆円増えて、241兆円に達している。
その一方で、国税庁の調査では、同時期に年収200万円以下の層は50万人増加した。
つまり格差がより拡大したのが、アベノミクスの成果なのだ。
(以下は『東京新聞 2014年12月11日』から抜粋)
○竹田茂夫(法政大の教授)の話
安倍内閣の成長戦略は、中小企業の振興に無策で、非正規社員を固定化する労働法改定を目指している。
まさに自滅的な政策である。
実際に、GDP第二次速報値からも、「中小企業の不振」と「民間消費の落ち込み」が景気後退の主因と分かる。
黒田総裁の日銀は、達成不可能なインフレ目標を掲げて、「金融バブルで浮かれる富裕層」と「所得が伸びない中間層・貧困層」を引き起こしている。
(以下は『しんぶん赤旗日曜版 2014年8月24日』から抜粋)
2014年8月13日に発表された4~6月期のGDPの速報は、衝撃的な数字が並んだ。
家計消費は、戦後最大級の落ち込みとなった。
実質GDPは前期比で-6.8%となり、東日本大震災のとき(6.9%減)に匹敵する。
GDPの6割を占める家計消費は、実質19.2%も減少した。
この下落率は、1997年の消費増税時(13.3%減)を大きく上回り、第1次石油ショック時(1974年1~3月期)に匹敵する落ち込みである。
増税前の駆け込み需要(1~3月期の増加分)を差し引いても、10%以上のマイナスになっており、単なる反動減ではない。
実は、消費増税の前から、賃金は上昇しないのに円安で物価が上がり、実質賃金は減少し続けていた。
そこに消費増税が追い打ちをかけ、実質賃金は3%を超える減少を続けている。
アベノミクスの恩恵は、大企業と役員・株主に集中している。
2013年度の上位500社の決算では、利益は12兆円→22兆円と、ほぼ倍加した。
ところが、肝心の従業員給与は14.7兆円→14.9兆円と、微増にとどまっている。
その一方で、企業の内部留保は242兆円→262兆円と、20兆円も増えている。
さらに、株主配当は5.8兆円→7兆円、役員報酬は2015億円→2162億円と、かなり増えている。
『大企業の利益が、内部留保・役員・株主にばかり回っている事』、そこにこそ日本経済の最大の病因がある。
(2014年12月10~11日に作成
2025年3月29日に加筆)