(毎日新聞2014年12月9日から抜粋)
アベノミクスは、デフレからの脱却を目指している。
だが実際には、実質賃金は伸びず、消費税率の8%へのアップが家計を痛めつけている。
2014年11月に公表された総務省の報告では、『勤労者世帯の収入は、実質で昨年10月から13ヵ月連続で前年同月を下回って』いる。
この間、物価は前年同月比で3%の上昇が続いている。
そのため、家計の消費支出は、7ヵ月連続で前年同月を下回っている。
消費税が10%になるのは1年半の先送りになったが、家計のやりくりで苦しんでいる家庭は増えている。
アベノミクスには、『格差の拡大』という側面がある。
野村総研は11月に、『1億円以上の純金融資産を持つ世帯は、昨年に過去最高の100.7万世帯となった』と発表した。
これは、2011年に比べると、24.3%の増加である。
富裕層は資産を増やしており、株価上昇の影響が大きい。
他方では、日常の生活費しかなく金融資産を持たない世帯は、3割に上っている。
末広徹(みずほ証券)
「最近は、収入が下位の人ほど賃金が減っている。
所得が低い人ほど、先行きは明るくない。
格差は、さらに広がる可能性が高い。
アベノミクスの恩恵は、国民全体には波及していない。」
内閣府が12月8日に発表した7~9月期の実質GDPは、前期比0.5%減、年率で1.9%減だった。
これは、11月の速報値(年率1.6%減)からの下方修正である。
個人消費や企業の設備投資の低迷が続いている。
今回の下方修正により、「消費や設備投資など民間需要が総崩れ」であることが鮮明となった。
円安で輸入品の価格が上昇しており、消費冷え込みが続く恐れがある。
(毎日新聞2014年11月27日から抜粋)
誰もがおかしいと感じた、安倍首相の衆院解散・総選挙の会見だった。
特定秘密保護法や集団的自衛権では「信」を問わなかったのに、消費税率10%への引き上げ先送りで、突如として信を問うという。
安倍首相は会見で、「100万人も雇用を増やした」と豪語した。
だが公的な統計では、イメージが異なる。
厚生労働省の統計では、アベノミクス以降、非正規雇用は93万人増えたが、正規雇用は46万人減った。
野村総研の調査では、2011年に比べて、2013年は富裕層が24%増加した。
富裕層の資産は53兆円増えて、241兆円に達している。
その一方で、国税庁の調査では、同時期に年収200万円以下の層は、50万人増加した。
つまり、格差がより拡大したのが、アベノミクスの成果なのだ。
(東京新聞2014年12月11日から抜粋)
○竹田茂夫(法政大の教授)の話
安倍内閣の成長戦略は、中小企業の振興に無策で、非正規社員を固定化する労働法改定を目指している。
まさに自滅的な政策である。
実際に、GDP第二次速報値からも、「中小企業の不振」と「民間消費の落ち込み」が景気後退の主因と分かる。
黒田総裁の日銀は、達成不可能なインフレ目標を掲げて、「金融バブルで浮かれる富裕層」と「所得が伸びない中間層・貧困層」を引き起こしている。
(しんぶん赤旗2014年8月24日から抜粋)
8月13日に発表された4~6月期のGDPの速報は、衝撃的な数字が並んだ。
家計消費は、戦後最大級の落ち込みとなった。
実質GDPは前期比で-6.8%となり、東日本大震災のとき(6.9%減)に匹敵する。
GDPの6割を占める家計消費は、実質19.2%も減少した。
この下落率は、1997年の消費増税時(13.3%減)を大きく上回り、第1次石油ショック時(1974年1~3月期)に匹敵する落ち込みである。
増税前の駆け込み需要(1~3月期の増加分)を差し引いても、10%以上のマイナスになっており、単なる反動減ではない。
実は、消費増税の前から、賃金は上昇しないのに円安で物価が上がり、実質賃金は減少し続けていた。
そこに消費増税が追い打ちをかけ、実質賃金は3%を超える減少を続けている。
アベノミクスの恩恵は、大企業と役員・株主に集中している。
2013年度の上位500社の決算では、利益は12兆円→22兆円と、ほぼ倍加した。
ところが、肝心の従業員給与は14.7兆円→14.9兆円と、微増にとどまっている。
その一方で、企業の内部留保は242兆円→262兆円と、20兆円も増えている。
さらに、株主配当は5.8兆円→7兆円、役員報酬は2015億円→2162億円と、かなり増えている。
『大企業の利益が、内部留保・役員・株主にばかり回っている事』、そこにこそ日本経済の最大の病因がある。
(2014年12月10日に作成)