(以下は、ハーバービジネス・オンライン『草の根保守の蠢動』から抜粋)
新安保法制の審議の中で、見逃せないニュースがあった。
辻元清美・民主党議員は、「集団的自衛権を合憲とする憲法学者がたくさんいると示せなければ、新安保の法案は撤回したほうがいい」と指摘した。
これに対して、菅義偉・官房長官は「長尾一紘、百地章、西修」の3名を、合憲とする憲法学者として挙げたのだ。
大方の反応は、「たくさんいると(政権側は)豪語していたのに、たった3人とは…」だったろう。
しかし筆者は、「やはりこの3人か」と呆れた。
日本会議のフロント団体である『美しい日本の憲法をつくる国民の会』と『二十一世紀の日本と憲法』。
この2団体の役員に、菅が挙げた3名はなっている。
菅の発言は、「合憲とする学者は、みな日本会議の人間だ」と要約すべきである。
百地章は、『美しい日本の憲法をつくる国民の会』の幹事長をしており、保守論壇人として露出している。
彼は、「センター試験の出題に腹を立てて、文科省に抗議した不思議なおじさん」としても知られている。
1969年に、「生長の家」の信者学生を中心にして、「全国学協」が結成された。
その少し後に、同じメンバーで『全日本学生文化会議』が結成された。
『全日本学生文化会議』の結成大会で、実行委員長を務めたのが、百地章だった。
この団体は、日本会議の事務局を担うことになる。
百地は、日本青年協議会(これは日本会議の中核団体です)の機関紙「祖国と青年」に、憲法論を中心に寄稿してきた。
「アメリカのグレンデール市に設置された従軍慰安婦像により、現地の日系人がいじめられている」というデマに基づき、「朝日新聞はNYタイムズに慰安婦誤報の謝罪広告を載せろ」との運動を展開している団体がある。
その団体『朝日・グレンデール訴訟を支援する会』の代表者が、なんと百地である。
以上のことから、百地章が特殊な組織に属し、特殊な論理を展開しているのは明らかだ。
こんな学者を「集団的自衛権を合憲とする学者」として挙げる安倍政権は、日本会議の人脈に頼っていると見る他ない。
安倍晋三・首相に近い若手議員が立ち上げた勉強会の『文化芸術懇話会』。
この会の初会合が、2015年6月25日に、自民党本部で開かれた。
そして、参加者たちの言論弾圧ともとれる発言が、物議をかもしている。
講師として呼ばれた百田尚樹
「本当に沖縄の2つの新聞社は、絶対つぶさなあかん」
長尾敬・衆院議員
「沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくためには、どのようなアクションを起こされるか」
見逃せないのは、木原稔・議員の存在だ。
この人物は、熊本1区から選出されているが、日本会議の熊本支部の理事長である多久善郎と活動を共にする姿が、ブログで繰り返し報告されている。
多久善郎は、日本青年協議会の理事長をつとめる人物だ。
木原は、「熊本県の親学推進の議員連盟」を立ち上げており、「親学」の提唱者である高橋史朗と懇意にしている。
この高橋史朗も、かつては日本青年協議会に所属していた。
また、長尾敬・議員は、自身のブログで「日本青年協議会のメンバーでもあった私は」と告白している。
そして、同協議会の会長である椛島有三を、「尊敬する椛島氏」と書いている。
以上のように、『文化芸術懇話会』の参加者を見てみると、「日本会議および日本青年協議会の代弁機関」という側面があると断ぜざるを得ない。
自民党は、「表現の自由」や「立憲主義」を踏みにじる、野蛮で幼稚な政党に変質してしまった。
(2016年3月25日に作成)