『安倍政権を見極める㉒ 政権を支える特異な人々⑧』では、「徳島教組への襲撃事件」が文中に出てきました。
安倍政権を支える右翼勢力には、ヘイトスピーチをしている組織もいます。
2016年3月30日の東京新聞では、「徳島教組への襲撃事件」とそれを行った「在特会」が取り上げられていました。
興味深い記事だったので、それを抜粋して紹介します。
(以下は、東京新聞2016年3月30日から抜粋)
6年前の2010年4月14日に、『在日特権を許さない市民の会(在特会)』の会員らが、徳島県教職員組合の事務所を襲撃した。
在特会は、県教組による朝鮮学校へのカンパを「募金詐欺」と称して、襲撃の大義名分にした。
だが、これは全くの中傷デマだった。
在日特権は、根拠のないデマである。
在日コリアンを攻撃するために、特権を捏造している。
この襲撃事件では、在特会の会員ら19人が徳島教育会館に来て、そのうち16人が2階の県教組事務所に乱入した。
室内では、女性書記長(64)と女性事務員2人が、作業をしていた。
在特会側は、拡声器も使いつつ、書記長の名前を連呼して、「売国奴」「募金詐欺師」「ババア」などの言葉を浴びせ続けた。
警察に通報すると、受話器を取り上げて妨害し、肩を小突いた。
数分後に警官数人が来たが、在特会側をきちんと制止せず、逆に書記長に向かって「挑発に乗らないで下さい」と注意した。
在特会は30分ほどで退去したが、会館前の路上から「(書記長を)逮捕しろ」などと怒号した。
ターゲットにされた元書記長は、こう振り返る。
「人間としての尊厳をズタズタに引き裂かれ、背骨をぐしゃっと潰された感じがしました。」
この県教組は、2009年に「子ども救援カンパ」に取り組んだ。
集まった金は、連合とあしなが育英会におおむね半額ずつ納めた。
そして、四国朝鮮初中級学校と県内の児童養護施設について、連合に助成を申請して認められ、各150万円を寄付した。
在特会は、「朝鮮」の言葉に反応し、朝鮮学校で寄付金を手渡した書記長を標的にしたのだ。
襲撃から2週間後には、在特会は徳島県庁前で街宣し、書記長を名指しして「家に行くぞ」と恫喝した。
元書記長
「あの罵倒が自宅の前でやられるのかと思うと、恐怖の極限だった。」
県教組は、在特会を刑事告訴し、9月に7人が逮捕された。
だが書記長は恐怖心から逃れられず、翌11年に辞職して、教員に復帰した。
教職に戻り、中1の社会科を担当したが、入学式から数日後に男子生徒から「(在特会のアップした)動画を見た」と声をかけられた。
元書記長
「その日から、生徒が動画を見たのではないかと思うと、教壇に立っていても不安で押しつぶされそうだった」
彼女は血圧が高くなるなど体調不良が続き、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。
この襲撃事件の刑事裁判は、2014年12月に最高裁で、6人の執行猶予付き有罪判決と、2人の罰金刑が確定した。
元書記長は、「犯人たちは過ちを認めるどころか、反省のかけらも無かった」と憤る。
日本にはヘイトスピーチを処罰する法律がないため、歯止めがない。
襲撃犯らは2012年5月にも、韓国人女優をテレビCMに起用した「ロート製薬」への強要事件で、逮捕された。
県教組と元書記長は、民事訴訟をすることにし、2013年8月に在特会を相手に損害賠償を求める訴訟を起こした。
15年3月に徳島地裁は、在特会と会員8人らに計230万円の支払いを命じた。
だが、元書記長は目の前が真っ暗になった。
何といっても、襲撃の差別扇動目的が否定された。
在日社会への支援を萎縮させる目的は明白で、効果が表れているにも関わらず、判決は「朝鮮人に対する差別を直接的に扇動・助長する内容とは言いがたい」としたのだ。
当然、高松高裁に控訴した。
判決の焦点は、「ヘイトクライム」と認定するかどうかだ。
京都事件(京都での襲撃事件)の民事訴訟では、2014年12月に在特会の街宣を「人種差別」と認定する判断が、最高裁で確定している。
(2016年4月8日に作成)