安倍政権を見極める㉒
政権を支える特異な人々⑬
放送法遵守を求める視聴者の会

(以下は、『ニュースサイト/リテラ』2015年11月27日の記事からの抜粋です)

「TBSのNEWS23でアンカーを務める岸井成格の降板が決定した」と、2015年11月25日に本サイトは報じた。

この解任騒動の引き金となったのは、『放送法遵守を求める視聴者の会』なる団体が、11月14日の産経新聞と同15日の読売新聞に掲載した意見広告だ。

15年9月16日に、NEWS23で岸井は、「メディアとしても(安保法案の)廃案に向けて声を上げ続けるべきだ」と述べた。

それに対してこの意見広告は、放送法の第4条を持ち出して「岸井氏の発言は、第4条への重大な違法行為」と攻撃したのだ。

『放送法遵守を求める視聴者の会』という団体は、今まで聞いたことはなかった。

この会が、11月26日に記者会見を行った。

その内容は、広告同様にとんでもないものだった。

まず最初に、会の代表呼びかけ人をつとめる作曲家のすぎやまこういちが、「昨今の政治報道は極端に偏った報道が目立つ」と非難した。

すぎやまは、「我々の運動は法律を守れという運動です」と述べた。

法律を守る運動なら、まず安倍首相に「憲法を守れ!」と言えよ、と突っ込みたくなる。

同会で事務局長をする小川榮太郎は、「現在の報道は、国民への洗脳レベルに達している」と訴えた。

他の呼びかけ人も、不正に立ち向かうポーズを取った。

呼びかけ人たちは会見の中で、何度も「政治家や公権力との連動性も関係もない運動」と主張した。

「非力な一国民として声を挙げた」と、小川は繰り返し強調した。

よくもまあ、ぬけぬけとこんな嘘が言えるものだ。

すぎやまこういちは、「安倍総理を求める民間人有志の会」の発起人を務めた人物である。

彼は、「新しい歴史教科書をつくる会」が分裂した後に立ち上がった、「教科書改善の会」にも参加している。

2014年の衆院解散の際には、「勇者(安倍のことを指す)が国を思い踏み切った解散」と絶賛している。

呼びかけ人となった渡部昇一と渡辺利夫は、極右発言を連発しつつ、安倍をべた褒めしてきた。

ケント・ギルバートも同様である。

同じく呼びかけ人となった鍵山秀三(イエローハットの創業者)は、安倍も関わる組織「日本教育再生機構」の顧問をしている。

『放送法遵守を求める視聴者の会』の呼びかけ人7人のうち4人は、日本会議が中心になった改憲イベント「今こそ憲法改正を! 武道館1万人大会」(2015年11月10日に開催)の代表発起人となっている。

『放送法遵守を求める視聴者の会』の意見広告には、「各局の安保法制の両論放送時間の比較」データが出ている。

このデータを提供したのは、同会の事務局長をつとめる小川榮太郎が2015年10月に立ち上げた「日本平和学研究所」だ。

小川は、『約束の日 安倍晋三試論』の著者でもある。

さらに彼は、『創誠天志塾』を開いているが、自身のブログで「この塾は、安倍首相の復活のための団体として始まった」と明言している。

この塾の第1回の月例勉強会では、安倍の妻・昭恵がゲストだった。

2012年9月の勉強会では、安倍本人も出席している。

小川はインタビューの中で、「安倍氏を総理にするための戦略プランを作成し、下村博文を通じて安倍氏に渡した」と述べている。

つまり『放送法遵守を求める視聴者の会』は、安倍晋三に直接に関係する人物が仕切る組織なのだ。

彼らが「平等で正しい報道を」と訴えても、何の説得力もない。

(※彼らは権力者とダイレクトに結びついているのに、普通の市民団体の様に装っている。

非常にいかがわしい。)

『放送法遵守を求める視聴者の会』は、産経と読売の2紙に意見広告を出したが、最低でも広告料は4000万円はかかったはずだ。

「費用は寄付でまかなった」と説明しているが、会の発足は11月1日であり、短期間で4000万円の寄付をどうやって集めたのか。

小川榮太郎が立ち上げた「日本平和学研究所」が入居するビルの所有者は、「倫理研究所」だ。

「倫理研究所」は、大元は「扶桑教ひとのみち教団(現在のPL教団)」から分離した組織で、理事長の丸山敏秋は日本会議の代表委員をつとめている。

丸山は、日本平和学研究所の監事もつとめていた。

小川の私塾「創誠天志塾」の前身は、「青年真志塾」という名で、神谷光徳が塾長をしていた。

神谷は、「生長の家・栄える会」の名誉会長で、「生長の家」の幹部である。

「青年真志塾」は、生長の家の傘下団体だった。

小川榮太郎と安倍晋三に直接の結びつきがある以上、『放送法遵守を求める視聴者の会』と自民党にも関係があると考えられる。

事実、自民党は「放送法の改正に関する小委員会」を組織し、「テレビの安保法制の報道では、公平・公正・中立は壊れた。放送法も改正したほうがいい。」と主張している。

自民党は、批判的な報道を監視する「報道モニター制度」も運用している。

『放送法遵守を求める視聴者の会』の主張と活動は、自民党の意向と完全に一致する。

まるで安倍政権の別働隊のようだ。

(以下は、『ニュースサイト/リテラ』2016年4月18日の記事から抜粋)

TBSの『NEWS23』の前アンカーである岸井成格。

彼は週刊文春4月21日号で、阿川佐和子と対談し、かつて籾井勝人(現NHK会長)から受けた圧力について述べている。

岸井

「BS-TBSの『われらの時代』という討論番組の中で、麻生太郎さんの批判になったことがあった。

そうしたら、スポンサー企業の社長が乗り込んできて、「岸井さん、麻生さんの悪口は一言もダメです」と。

その社長が、籾井勝人さんだった。

『われらの時代』は、日本ユニシスがスポンサーで、籾井さんはそこの社長だった。

あとで聞いたのですが、福岡県の筑豊炭田では、麻生炭鉱と籾井炭鉱は兄弟分の関係だったと。

筑豊で麻生太郎が兄貴分だから、悪く言ってはいけないという仁義があるみたいです(笑)。」

籾井勝人の実家は、籾井鉱業という炭鉱業者だった。

麻生太郎の曽祖父は、麻生鉱業の創業者である。

要するに籾井は、格上の麻生財閥におもねって、放送に圧力をかけたのだ。

「お上には平身低頭で、下には暴君」という籾井の性格が、よく分かるエピソードである。

岸井は、他にも興味深い話をしている。

岸井成格

「自民党の幹部から聞いたけど、「視聴率は、今や操作はいくらでもできるんですよ」と。

視聴率って、ビデオリサーチ社が測定していて、測定機を置いているのは関東で600世帯くらい。

官邸は、どこの家庭に測定機があるか知っている。

だから本気で操作しようと思ったら、方法がないわけじゃない。

「岸井さんも気をつけて」と言われました。」

これは、自民党幹部からの恫喝だろう。

岸井

「官邸から、直接にも間接にもですが、「この人が岸井さんに怒っています」との情報が逐一入ってきた。

よほど気に入らなかったらしい。」

官邸は、こうした手法でテレビ局の上層部に圧力をかけている。

もはや安倍政権を倒す以外に、この言論統制を食い止める手立てはない。

(以下は、『ニュースサイト/リテラ』2016年3月26日の記事から抜粋)

2014年に安倍首相が『NEWS23』に生出演した際、彼は街頭インタビューのVTRに「厳しい意見を意図的に選んでいる」と難癖をつけた。

自民党と官邸は、NEWS23の膳場キャスターと岸井成格を徹底的にマークしていた。

膳場キャスターは、2014年の総選挙の特番で、報道への圧力について安倍首相に問い質したが、安倍はこれに激怒したらしい。

岸井については、自民党は「保守色が強い」と認識していた。

そのため安保法制に厳しい姿勢を貫いたことに、「裏切り」として怒った。

(認識が間違っていただけなのに、それを反省せずに一方的に怒るという幼稚さ。さすが安倍・自民党です。)

安倍・自民党は、「岸井を何とかしろ」とTBS幹部に再三訴えていたという。

(2016年4月20日に作成)


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