(『赤旗日曜版』2016年4月24日号から抜粋)
前回の都知事選(2014年2月)に出馬した田母神俊雄(元自衛隊の航空幕僚長)。
彼は、同知事選での公職選挙法違反(買収)で、東京地検特捜部に逮捕された。
「安倍首相には大ショックだ」と自民党・参院議員は言う。
特捜部によると、田母神容疑者は選挙後の14年3月に、選挙運動の報酬として現金200万円を、自衛隊出身で選対本部長だった島本順光(買収容疑で逮捕)に支払った。
2人は、共謀して選挙運動員5人に280万円を渡した疑いもある。
買収の原資は、「田母神としおの会」(資金管理団体)の5千万円の使途不明金と見られている。
田母神俊雄は、自衛隊・空幕長をしていた2008年10月に、先の日本の戦争について「侵略戦争だったというのは濡れ衣」とする論文を発表した。
これは村山談話に真っ向から挑戦するものとして批判を受け、同年10月に彼は更迭された。
彼は、安倍晋三や石原慎太郎らの支援を受けてきた。
2009年11月には、彼が防衛大の同期と開いた会合に、安倍が参加して挨拶している。
安倍はこの時、「この席でスピーチするのは政治家としてリスクが高いですが、田母神さんのためお話させていただきます」と切り出し、こう述べた。
「(第1次安倍政権での田母神の空幕長就任は)今から考えれば、安倍内閣らしい人事だった。
偶然ではなく、必然だった。
村山談話を歴史認識として正しいと自衛隊の諸君に教えるのは、大変な間違いだと思う。
日本は、こういう国にだけはなってはいけない。」
その後も、安倍晋三と田母神俊雄の応援関係は続いた。
2012年11月の「安倍救国内閣の樹立! 国民総決起集会」などにおいて、田母神らは熱烈に安倍を応援した。
自民党・総裁選前の2012年9月には、「安倍晋三 カフェ・スタートーク」で、安倍、田母神、稲田朋美(現在は自民党の政調会長)の3人が顔を揃えた。
そのトークでは、こんな会話で意気投合している。
田母神
「もともと憲法に、日本は悪い国だと書いてある。
この憲法に基づいて進めるから、みな悪くなる。」
稲田
「憲法に書いてありますね。」
田母神
「ですから憲法改正が必要です。」
安倍
「こういう事を言うと、傲慢とか排他的な人間をつくると言われるが、まったく違う。」
(※憲法に、日本が悪い国だとは書いてないです。
ただ、日本が行った戦争についての反省があり、それを彼らは「日本は悪い国」と書いてあるように感じるのでしょう。)
自民党の元首相秘書は言う。
「そもそも安倍と田母神の2人は、思想的にはほとんど同じです。
安倍は、自民党の中でも突出した右寄り路線。
歴史認識でも改憲でも、従来の自民党ではない。
その極右路線が、いま自民党の主流になり、政党としての劣化が進んでいる。
(かつてあった)懐の深さは、いま党内のどこにもない。
原発事故やアベノミクスで、保守政治が大事にしてきた国土と伝統が失われている。
安倍政治がいよいよ限界にきたことを、示していると思う。」
青木理(ジャーナリスト)
「逮捕容疑が事実なら、田母神氏には見識と品格が欠けています。
運動員に金をばらまいて選挙をやるのは常識外れで、品格に問題がある。
こうした人物を「閣下」などと持ち上げてきた、右派の運動のばかばかしさが、今回に露呈した。
同氏を持ち上げてきた政治家や文化人は、反省して謝罪すべきでしょう。」
(2016年4月25日に作成)