(以下は、ハーバービジネス・オンライン『草の根保守の蠢動』から抜粋)
2015年12月16日に、2つの民法の規定に対して、最高裁の判断が下った。
「離婚した男女のうち、女性にのみ6ヵ月の再婚禁止期間を義務づける、民法733条の規定」については、違憲の判断だった。
婚姻にあたって、夫婦は必ずどちらかの姓に合わせなければならない、「夫婦同姓を義務づける民法756条の規定」については、合憲の判断だった。
733条について違憲判断としたのは歴史的な判決だったが、なぜ夫婦別姓は認められなかったのか。
注目したいのは、日本会議の動きだ。
日本会議とその周辺は、「夫婦別姓の阻止」に最大の熱意で長年にわたり取り組んできた。
2010年に日本会議は、夫婦別姓の阻止運動を行うフロント団体として、『夫婦別姓に反対し家族の絆を守る国民委員会』を結成した。
発起人は、櫻井よしこ、長谷川三千子、工藤美代子らである。
同委員会は、200万筆の署名を集め、国会議員の賛同者も100名を得た。
2010年3月に行った大会では、亀井静香、平沼赳夫、下村博文、衛藤晟一という国会議員も登壇した。
見逃せないのは、『日本会議の会長に、最高裁の元長官が就任してきた事実』だ。
日本会議の前身の1つは、「日本を守る国民会議」だが、この団体は1978年に設立された「元号法制化の国民会議」が名称を変更したものだ。
「元号法制化の国民会議」の設立に関わり初代会長になったのは、最高裁長官を退官したばかりの石田和外だった。
また、2001~2015年に日本会議の会長をしていたのは、元最高裁長官の三好達である。
三好は、『美しい日本の憲法をつくる国民の会』の共同代表も務めている。
日本会議と最高裁につながりがある点は、留意が必要だ。
今回の最高裁判決は、「夫婦同姓の義務は、違憲とする根拠がない」という見解を示しただけだ。
今後、議論の場は国会に移るだろう。
日本会議と日本政策研究センターは、「憲法改正の最初は、緊急事態条項と家族条項の追加だ」と主張している。
これと安倍政権は共同歩調をとっており、『夫婦別姓の選択の合法化』は安倍政権が続くかぎり難航が予想される。
(2016年5月16日に作成)