(『毎日新聞2014年6月29日』から抜粋)
○作家・早乙女勝元さんの話
集団的自衛権は、「戦闘権」というべきものです。
今の安倍内閣のやり方は、過去の日本がたどった道です。
戦前の日本では、「聖戦を行う神国・日本」「神風が吹いて日本は必ず勝つ」と教えられていました。
しかし、日本の町は焦土と化し、民間人が犠牲になりました。
私の母は、「いつの間にか戦争が始まって、いつの間にか火の粉が降ってくるようになった」と言っていました。
何も知らされないまま国民は戦争に動員された、と思いました。
戦争が恐ろしいのは、その本質が隠蔽される事です。
安倍首相がパネルで説明する集団的自衛権の類型は、きれいな面ばかりを見せています。
もし集団的自衛権の行使を認めたら、自衛隊に死者が出るかもしれないし、日本の基地が狙われる可能性も出てきます。
○ジャーナリスト・木村元彦さんの話
私は25年前から、東欧の民族問題を取材してきました。
旧ユーゴスラビアの民族紛争では、1999年にNATO軍はアメリカ主導でコソボを空爆しました。
この空爆の狙いは、「コソボにあるアメリカ軍基地の確保」で、正当性は無かったのです。
日本が集団的自衛権の行使を認めれば、アメリカの大義なき戦争にも巻き込まれます。
民族紛争では、民族の数だけ主張があり、見る角度を変えれば正義も変わります。
私が取材をした時は、日本のジャーナリストだと名乗れば、どの民族も温かく迎えてくれました。
「日本は戦争をしない国だ」と、彼らはよく知っていた。
安倍内閣は、海外の人たちの「日本は戦争をしない」という信頼を(日本の宝物を)、棄てようとしています。
武力を使う範囲は、戦場では限定できません。
このままでは、なし崩しになるでしょう。
閣議決定だけで憲法を変えることも、問題です。
政権の判断で憲法を変えれば、司法が根底から揺らぎます。
○公明党員も反対が多数
公明党は2014年6月28日に、47都道府県の地方代表による「集団的自衛権についての懇談会」を開いた。
党の執行部はここで、集団的自衛権の行使を容認することを説明した。
しかし地方側は『慎重・反対論が100%』となり、「連立からの離脱」や「次の選挙では応援できなくなる」との意見も出た。
執行部は、「1972年の政府見解をベースとしており、従来の方針との整合性は保たれている」と言って、理解を求めた。
地方側は、「憲法の解釈変更を、閣議決定でやっていいのか」との疑問を述べた。
広島代表
「県の全議員から意見を聞いたが、行使容認は納得も理解もできていない」
長崎代表
「原爆の被爆県であり、行使容認にはかなり拒否反応がある」
沖縄代表
「アメリカ軍基地を抱えており、万一の時には攻撃されかねないと心配している」
静岡代表
「戦争に突き進むのかと言われている」
長野代表
「閣議決定ありきではなく、地方議員に説明すべきだ」
執行部は地方側にかん口令を敷いたが、記者団の取材に応じる代表者が続出した。
鳥取代表「党と地方・支持者たちの意識には、相当に差がある」
福岡代表「地元の説得は難しい」
執行部は、地方の意見を取りまとめずに、閣議決定に踏み切る構えだ。
地方や支持者の反発が続くのは、避けられない状況である。
(2014年6月29日に作成)