(赤旗日曜版2014年9月14日号から抜粋)
○小林節さん(慶大名誉教授)の話 『安倍首相は三重の憲法違反をしている』
集団的自衛権の行使容認の閣議決定では、大騒ぎになったので安倍首相は冷却期間を置こうとしています。
だけど、忘れちゃだめです。
安倍政権は『三重の憲法違反』をしました。
憲法で定められている主権者は、国民大衆です。
主権者としての役割を我々が、今こそ果たす時です。
三つの憲法違反について、説明します。
第1は、『憲法9条を踏みにじった事』です。
憲法9条は、戦争を放棄して、軍隊と交戦権を禁じています。
だから日本は、自衛隊による「専守防衛」を国是として、「海外派兵の禁止」をしてきました。
集団的自衛権は、同盟国を支援するために海外派兵をする事が本質です。
この行使を解禁する閣議決定は、乱暴な憲法違反です。
第2は、『憲法改正の手続きを定めた、96条への違反』です。
改正の手続きなしに、憲法解釈の変更だけで9条を勝手に踏み越えるのは、明白な違反です。
第3は、『99条に明記された「公務員の憲法尊重および擁護義務」に対する違反』です。
安倍内閣は、「わが国を取り巻く安全保障環境の大激変」を語り、閣議決定を急がせました。
私も、中国や北朝鮮の動向に懸念は持ちますが、「オオカミ少年」になってはいけません。
尖閣諸島は太平洋の入り口にあり、アメリカとの対決まで覚悟して中国が軍事侵略する事はまず考えられません。
北朝鮮にしても、ミサイル攻撃したら即時に反撃されて自国が滅ぼされるので、攻撃する気はありません。
実は政府当局者も、それは知っているでしょう。
それなのに、「オオカミ少年のように脅威を声高に語って、急ぐ口実にした」のです。
しかし、あれほど「急務である」と言ったのに、閣議決定後はどうですか。
関連法案の国会提出は急がず、来年5月以降にして知事選や統一地方選での争点化を避けようとしています。
安倍首相は、国内では争点化を避ける一方で、外遊先では「集団的自衛権を解禁し、その同意を得た」と宣伝しています。
法律も出来ていないのに、日米防衛協力のガイドライン改定も進める方針です。
この手法こそ、主権者国民を見下した態度です。
緊急でない話を「緊急だ」と偽り、国民に時間をかけた議論をさせず、与党だけで憲法を破壊する。
その後、国民が忘れるように時間を置き、国際的には話を進めて「国際公約だから」と言って国民を納得させる。
こんな反省のない政権は、もはや倒す以外に国民主権を守る道はありません。
集団的自衛権の行使には、世論調査でも反対が増えています。
今の与党は、小選挙区で4割台の票を得ただけであり、基盤は弱いし政権交代は難しい事ではありません。
私は改憲論者ですが、今回改めて気付いた事があります。
それは、『経済大国の日本が、70年も戦争をしていない』という事実です。
こんな国は、世界の歴史上ありません。憲法9条があるからです。
誇っていい「日本の新しい国柄」です。
日本はこの実績を生かし、「戦争の止め役」になれる。
しかし、集団的自衛権で「アメリカの2軍」になったら、止め役はできず、東京でテロが起きる可能性も高まります。
そんな危険な道は、断じてストップさせねばなりません。