(『ニュースを読む技術』池上彰著から抜粋)
政権が交代をすると、それまでの政権が国民に隠していた事が、明るみに出る。
民主党に政権交代して明らかになった事のトップは、『日米の密約』だろう。
過去の自民党政権は、「日本には、核兵器は持ち込ませない」と言ってきた。
ところが、「米軍が核兵器を持ち込んだら、見て見ぬふりをする」と密約をしていたのである。
歴代の自民党政権は、国民に嘘をついてきた。
国会で野党が追究をした際に、過去の首相たちは「密約はない」と言い続けてきた。
民主党政権では、岡田克也・外務大臣が調査をして、有識者が分析をした結果、2010年3月9日の報告書で『3つの日米の密約』が明らかになった。
それを以下に述べる。
○ 1つ目の密約
米軍が日本に核兵器を持ち込もうとした際には、日米は事前協議を開くことになっていた。
ところが1960年代に、米政府は日本政府に対して、「核兵器を積んだ軍艦が日本に入っても、事前協議の対象にしないでほしい」と申し入れて、日本政府は許可をしていた。
これが、1つ目の密約である。
この結果、過去に核兵器が日本に持ち込まれていた可能性は、極めて高くなった。
実は過去に、横須賀港に向かっていた米軍の軍艦から出発した爆撃機が、核兵器を搭載したまま海に転落して沈むという事故があった。
日本政府は、「核兵器を、持たず、作らず、持ち込ませず」という『非核三原則』を守っていると主張してきた。
しかし、それは嘘だった。
佐藤栄作・元首相は、非核三原則を打ち出したとして、ノーベル平和賞をもらった。
彼は、嘘によってノーベル賞を受賞したのである。
○ 2つ目の密約
日本にいる米軍が他国を攻撃するために出撃をする場合、これも日米で事前協議をすることになっていた。
日本側がノーと言ったら、米軍は出動できない事になっていた。
しかし、朝鮮半島で有事があった場合には、事前協議なしで在日米軍が出撃できる事を、日米政府は密約していた。
○ 3つ目の密約
これは、沖縄を返還した際の密約である。
本来ならば、返還の時に現状回復するための費用は、米政府が負担するはずだった。
しかし、「日本が費用を負担する」という密約がされていた。
岡田克也・外務大臣の調査では、大量の資料が欠落している事も判明した。
これは、誰かが廃棄をしたからであり、歴史に対する犯罪である。
原則として、密約のない外交をしなければならない。
どうしても密約をしなければならなくなった時は、一定の期間を経ればすべてを公開する仕組みが必要である。
非核三原則が密約で破綻している以上、改めてどうするかを検討する必要がある。
非核三原則は、世界に誇れる原則である。
(2013年8月14日に作成)