在日米軍の横田空域、日米合同委員会

(『日本はなぜ、戦争ができる国になったのか』矢部宏治著から抜粋)

日本の首都圏の上空は、米軍の管理下にあり、日本の民間機はそこを飛ぶ事が出来ない。

この空域は米軍の横田基地によって管理されているため、『横田空域』と呼ばれている。

日本の民間機は、この空域を避けるために、7000m以上の上空を飛んでいる。

(※横田空域の最高高度は7000mである)

横田空域を避けるために急旋回と急上昇をしているが、同じエリアに飛行機が集中する事になってしまい危ない状況が続いている。

この問題は、テレビや新聞で取り上げられるようになったので、知っている方も増えてきた。

1都8県の上空をカバーする横田空域は米軍に支配されており、どんな飛行機が飛んでいるかを日本政府も分かっていない。

さらに空域の下には横須賀、厚木、座間、横田の巨大な米軍基地があり、その中は治外法権になっている。

軍用機で飛んできた米軍や米政府の人々は、日本政府の知らないうちに横田基地などに着陸し、そのままフェンスの外に出られる。

つまり、日本への入国は全くのフリーパスで、なんのチェックもない。

CIA長官らは、いつも直接横田に来るという。

この状態なので、日本国内にアメリカ人が何人いるのか全く分かっていない。

この時点でもう、日本は独立国家ではないと証明されてしまうのだ。

横田空域を設定したのは、1958年12月15日に米軍横田基地と東京航空交通管制部で合意がされたからだ。

東京航空交通管制部とは、国土交通省の一部局だが、横田空域の東にある東京進入管制区を管理している。

この部局は、実務担当者として空域の境界線を定めたにすぎない。
実際に決めたのは『日米合同委員会』である。

軍用機で横田などに来たアメリカ人は、そこから移動するのに車を使ったりはしない。
軍用ヘリを使う。

ヘリならば、基地から都心まで20分くらいとなる。

ヘリが着陸できる米軍基地は、ちゃんと用意されている。
六本木にあるのだ。

その六本木にある米軍基地は、大きなヘリポートが1つと、大きなビルが2つある。

ビルの1つは米軍用の新聞を発行している「星条旗新聞社」で、もう1つは米軍関係者の専用ホテルである。

この基地は新聞社とホテルに見えるので、軍事施設には見えないが、正面ゲートには銃を持った日本人の警備員が立っている。

横田基地などもそうだが、「銃を持った日本人の警備員」がいる事実は、そこが日本の法律とは無縁な世界だと分かる。

米軍はこの六本木基地に、「赤坂プレスセンター」という可愛らしい名前を付けている。

だから基地だと分かりづらいが、地元の住人はずっと米軍基地反対の運動を続けている。

反対運動をしてきた人達によると、星条旗新聞社のビルにはCIAなどの情報機関が入っていて、日本の先端技術の情報を収集している。

CIAらは何の妨害もなく日本中で活動している。
日本が完全に主権を失った国なのは明らかである。

六本木基地のヘリポートからアメリカ大使館までは車で5分だが、もう1つ、5分で着く施設がある。

そこは「ニュー山王ホテル」と呼ばれているが、正式名称は「ニュー山王米軍センター」で、米軍基地なのだ。
やはり入り口には銃を持った警備員が立っている。

そして、ここで毎月開かれているのが、『日米合同委員会』である。

『日米合同委員会』は、日本に駐留する米軍と米軍基地について、日米で協議する機関である。

米軍のエリート将校と日本の高級官僚が集まり、毎月2回、会合している。

毎月ごとに、ニュー山王米軍センターで1回、外務省が設定した場所で1回、行っている。

問題なのは、この委員会で合意された内容は公開義務がなく、ほとんど公開されてない事だ。

過去60年にわたって、時には日本国憲法を停止させるような取り決めまでもが、ここで決定されてきた。

憲法停止の1例を挙げよう。
1953年9月29日に合意したのは、次の取り決めである。

「日本の当局は、所在地のいかんを問わず、合衆国軍隊の財産について、捜索、差し押さえ、検証を行う権利を行使しない」

この取り決めにより、在日米軍が軍用機や車両の事故を起こした場合、どんな場所であっても現場を封鎖して日本人を立ち入らせない状態が続いている。

記憶に新しいのは、2004年の沖縄国際大学への米軍ヘリの墜落事故だ。

この時は普天間基地から米兵が大学キャンパスになだれ込んできて、あっという間に封鎖してしまった。

そして市民たちに「アウト!アウト!」と怒鳴りつけて排除した。

日本の警察は、米軍の許可をもらってから大学構内に入る有様で、植民地日本の現実が明らかになった。

横浜でも1977年に住宅街にファントム偵察機が墜落し、3歳と1歳の男の子が死亡した。(他にも6名が負傷)

この時、現場に飛んできた自衛隊のヘリは、何の救助活動もせず、パラシュートで脱出し無傷だった米軍パイロットだけを乗せて厚木基地へ帰ってしまった。

被害者が米軍パイロットらに対し行った刑事告訴は、3年後に不起訴となった。
つまり日本では、米軍に関しては治外法権の状態なのだ。

日米合同委員会の秘密の取り決めは、他にもある。

「特別に重要な事件以外は起訴しない(裁判権の放棄)」や、「米軍機はどんな危険な飛行も許される(航空法の適用除外)」などである。

注目すべきは、日米合同委員会の日本側代表は外務省の北米局長だが、アメリカ側代表は在日米軍の副司令官なことだ。

アメリカ側は1人を除いて軍人で、日本側は各省のエリートである。

異常なことに、日本のエリート官僚が、アメリカの官僚ではなく軍人と協議するシステムになっている。

明らかにおかしいので米国務省は、アメリカ側代表を外交官に交替させようと何度も試みている。

しかし在日米軍は「日本政府は変更を求めていない」と言って拒否してきた。

つまり米軍は、「いいんだよ、あいつら日本人がそれでいいと言ってるんだから」と説明してきた。

この事実は、米軍による日本占領の継続は、アメリカ軍部と日本の官僚組織が原因だと明らかにしている。

日米合同委員会には、法務省の大臣官房長も参加しているが、このポストに就いた者は多くが事務次官を経て検事総長になっている。

つまり、日米合同委員会が検事総長を出す構造ができている。

日米合同委員会で結ばれる密約は、一言でいうと在日米軍の違法行為を合法化するためのものだ。

(2019年3月6~7日に作成)


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