(『しんぶん赤旗 2023年3月19日号』から抜粋)
在日米軍基地の周辺で、有機フッ素化合物(PFAS、ピーファス)の汚染が広がっている。
PFASは、有機フッ素化合物の総称である。
有機フッ素化合物は、環境中で分解されにくく、「永遠の化学物質」とも呼ばれ、癌になるといった健康への悪影響がある。
水や油をはじく性質があるため、泡消火剤や、フライパンのコーティングなどに使われてきた。
沖縄県では、水源で高濃度の汚染だと発覚し、住民の血中からも全国平均より高い値がで検出された。
喜友名泉(チュンナガー、湧き水)では、PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の合計で1リットルあたり最大1100ナノグラムが検出された。
(※PFOSとPFOAは、有機フッ素化合物の代表的なものである)
沖縄県では、2016年1月に米軍・嘉手納基地の近くにあり、県民の3割が利用する「北谷浄水場」から、高濃度のPFOSが検出された。
これを皮切りに調査したところ、各地で汚染が見つかった。
県は、「汚染源は米軍基地の蓋然が高い」と見ている。
日本には、水などに含まれるPFASを規制する基準がない。
厚労省は2020年に、水道水の暫定目標値として、PFASのうち、PFOSとPFOAの合計を1リットルあたり50ナノグラム以下に設定した。
アメリカは、1リットルあたりPFOSとPFOAの合計を70ナノグラム以下に規制してきたが、2022年6月に規制を強化して、1リットルあたりPFOSを0.02グラム以下、PFOAを0.004ナノグラム以下にした。
PFOSとPFOAは、米軍の使う「泡消火剤」に含まれている。
米軍はこれを訓練でも使い、基地外への流出事故も起こしている。
沖縄県は米軍基地への立ち入り検査を求めているが、米軍も日本政府も認めない状態が続いている。
沖縄県は、粒状の活性炭を用いた水の浄化装置を使い始めたが、2019~23年度で14.6億円の費用がかかった。
米軍の尻ぬぐいを、県がしている形だ。
市民団体の「有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会」は、京都大学の原田浩二・准教授と共に、沖縄の米軍基地の周辺で6市町村、387人の血液を調べた。
すると水道水をそのまま飲んでいる人達は、PFOSとPFOAの合計値が全国平均の3倍を超えていた。
ドイツでは、血中濃度が1ミリ・リットルあたり、PFOSは20ナノグラム、PFOAは10ナノグラムを超えると、健康被害が起こり得るとして、管理値に定めている。
この基準に照らすと、上記の米軍基地周辺に住む387人のうち、27人が値を超えている。
米軍基地周辺のPFAS汚染は、沖縄以外の横田基地などでも発覚し、問題になっている。
米軍の調査では、沖縄県うるま市の米陸軍貯油施設が1リットルあたり8万7000ナノグラムで、全国一の汚染である。
前述した喜友名泉(チュンナガー)の近くにある、普天間基地は、1リットルあたり1400ナノグラムである。
青森県の三沢基地は、1リットルあたり2079ナノグラム。
横田基地は640ナノグラム。
横須賀基地は1万2900ナノグラム。
厚木基地は1084ナノグラム。
原田浩二(京都大学・准教授)
「日本政府はPFASについて、1リットルあたり50ナノグラム以下という暫定目標値を決めたが、これは守るべき義務ではない。
基準値をきちんと設けて規制し、住民の血中濃度も国が調査すべきだ。
これまでの調査結果を見ると、米軍基地が有力な汚染源である。」
前泊博盛(沖縄国際大学・教授)
「PFASの影響の1つに、低体重児の出生率の高さがある。
沖縄は長期にわたり、全国でほぼワーストワンだ。
米軍基地に日本側が立ち入って調べる必要がある。
ドイツやイタリアは、日本と同じく第二次大戦で負けた国だが、米軍基地への立ち入り権を獲得している。
日米の地位協定は、変更できる取り決めだが、日本政府(自公政権)は手を打ってこなかった。
国民の健康が脅かされているのに、米軍基地の調査ができないのでは、安全保障は口先だけだ。」
(以下は『東京新聞2023年3月29日』から抜粋)
発がん性が疑われる「有機フッ素化合物(PFAS)」について、2021年度の自治体調査では、国の指針である1リットルあたり50ナノグラムを81地点で上回った。
しかし汚染源が特定されたのは、大分県の2ヵ所のみである。
この調査では、東京都の多摩地域では、米軍・横田基地の周辺で地下水から高濃度で検出された。
しかし汚染源は特定されていない。
(※横田基地が汚染源だが、立ち入り調査できないので汚染源と特定できない、という事だろう)
国の指針を上回った81地点は、そのうち東京都が24地点である。
大分県の特定できた汚染源は、過去にPFASを使っていた工場の敷地内の井戸である。
PFASは主に、PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)と、PFOA(パーフルオロオクタン酸)である。
水、油、熱に強いので、泡消火剤、塗料、フライパンのコーティングなどに使われてきた。
自然分解されず、環境中や人体に長く残る。
米国の公的機関によると、血中濃度が1ミリ・リットルあたり20ナノグラム以上になると、腎臓がんなどのリスクが高まる。
(2023年10月15日に作成)