(『日本の課題40』池上彰著から抜粋)
日本の農業は、海外から入ってくる農産物に高い関税をかける方法で、守られてきた。
これが、『関税障壁』である。(関税で国内産業を守る仕組み)
関税は政府の収入になり、政府はそれを農業政策にあててきた。
日本の消費者は、高値の国産品を買うことで、日本の農業を支えてきたのである。
『非関税障壁』とは、国の税金を使って、農業などの産業を支える仕組みである。
具体的には、輸入品よりも国産品の価格が低くなるように価格調整をして、農家に補助金を出す「不足払い制度」がある。
もう1つ、輸出する農産物の売値を安く抑えて競争力を確保し、農家に儲けが出るように補助金を出す「輸出補助金の制度」がある。
非関税障壁は、消費者が安い価格で農産物を買えるのが利点で、アメリカやEUが採用している。
日本は、一部の農産物だけを高関税のまま残して、それ以外は関税を下げて市場を開いてきた。
農産物の平均関税は12%で、低い方なのである。
TPPは、公正な貿易を掲げているが、実際にはアメリカの論理が幅を利かせている。
TPP推進派は、「日本は農業を非関税障壁で守ればいい」と言っている。
TPP反対派は、「非関税障壁では守れない」と言っている。
○村本尚立のコメント
なるほど。
どちらも国内産業を守るシステムで、やり方が違うのですね。
どちらも目的が同じならば、関税障壁の方が簡便でいいと思うのですが。
アメリカなどにすれば、「日本を非関税障壁のシステムにして市場を開放させれば、日本にどんどん安い自国産の農産物を入れられる。そうなれば、日本が税金で守ろうとしても、守りきれないだろう。」との読みがあるのでしょう。
(2013年8月8日に作成)