(『アジア三国志』ビル・エモット著から抜粋)
靖国神社には、自民党の議員もたくさん訪問しているが、そこにはA級戦犯の14人も合祀されている。
靖国神社は、1869年に、戊辰戦争などによる新政府軍の死者を弔うために建立された。
当時の日本は、明治維新という革命をし、王政を復古させていた。
幕末期の戦死者を含めて、この神社には戦死した250万人近い霊が祀られている。
神道はもともと祖先崇拝だが、この神社は神ではなく「戦死者を崇める場」となっている。
靖国神社は、以前は国有だったが、戦後の政教分離の政策により民間の宗教法人となった。
靖国という名称(国家を安らかにするという意味)は、1879年に明治天皇が決めたもので、それ以降この神社はずっと皇室と深い結びつきがあった。
しかし1975年以降は、天皇は1度も参拝していない。
1978年に靖国神社が、A級戦犯14人を含めた、死刑になった戦犯1068人を一緒に祀ったからである。
当時の厚生省が、1068人について名簿を作成して提供していた事が判明し、問題になった。
厚生省が合祀に協力していたのである。
小泉純一郎・首相は、靖国参拝をして、中国と韓国の怒りを買い、アメリカにも批判された。
小泉の後継となった安倍晋三は、就任直後に北京とソウルを訪れ、靖国参拝を封印し、海外から称賛された。
しかし就任4ヵ月後に、「旧日本軍による従軍慰安婦への強制性を裏づける証拠はない」と発言し、良いイメージを損なった。
従軍慰安婦については、生存者の多数の証言がある。
安倍首相はその後、強い批判をうけて、この発言を取り下げた。
安倍は2007年のインド訪問の際に、パール判事の子孫を表敬訪問した。
これは意外ではない。
パール判事は東京裁判を批判した人物だし、安倍の祖父・岸信介は満州国の実権を握っていた人物で、A級戦犯容疑で収監された事があるからだ。
米欧は、なぜ日本の首脳が和解のプロセスを実行しないのか、不思議に思っている。
それを拒んでいる事で日本の力が損なわれていることに、どうして気付かないのだろうか?
日本政府は何度も謝罪してきたが、首相が靖国参拝をし、閣僚が戦時中の残虐行為を否定するために、真意を疑われている。
「日本には言論の自由があり、様々な意見を抑えつける事はできない」というのが、日本の弁明の常である。
元韓国外相の韓昇洲は、率直に問題点を指摘している。
「あなた方の謝罪が真摯だと思えない事が、問題なのです」
(2014年6月2日に作成)