(『アジア三国志』ビル・エモット著から抜粋)
日本は、旧日本軍が行った過ちについて、きちんと謝罪してこなかった。
だが、この問題では、アメリカにも悪い所がある。
日本の謝罪に真剣味がないのは、極東国際軍事裁判(東京裁判)が公正でなかったからだ。
いま裁判の記録を読むと、アメリカと連合国の裁判のやり方には、赤面を禁じ得ない。
実際に、マッカーサーの部下だったウィロビー少将は、「史上最悪の偽善な裁判だった」と評している。
エリオット・ソープ准将も、「裁判は無意味な儀式だった。正しい事だったと思えない。」と述べている。
この裁判では、11人の裁判官が参加したが、アジア人は3人だけであった。
被告人28人の主な訴因は、「不法な侵略戦争を計画し、それを実行したこと」だった。
つまり、国策の道具として軍事力を使用した事が、問題にされた。
ところが、裁判が行われているその時に、フランスやオランダはアジアの植民地を奪還しようと戦争をしていたのである。
フランスはベトナムで戦争していたし、オランダはインドネシアで戦争をしていた。
イギリスは、1947年に渋々インドを手放した。
しかし、ビルマ(ミャンマー)を独立させたのは48年だし、マレー(マレーシア)は57年まで手放さなかった。
この裁判では、こうした矛盾に目をつぶり、日本の反論を認めなかった。
ありていに言うと東京裁判は、『米欧の帝国を攻撃するという無鉄砲なことをした、日本の指導者を罰するためのもの』だった。
裁判に参加したパール判事が意見書で述べた、「東京裁判は偽の正義であり、訴因の大部分は法的根拠に欠けている。ヨーロッパの帝国たちは、何世紀も同じ事(侵略と植民地化)をやってきた。」という指摘は、正当である。
とはいえパール判事は、「日本軍の残虐行為は有罪である」とも述べている。
東京裁判での問題点は、『被告人は何について有罪であったのか』であろう。
被告人たちは戦争の責任を負ったが、彼らの上に立っていた昭和天皇は罪に問われなかった。
また、この裁判では第731部隊の犯罪は除外された。
(これについては、旧日本軍の第731部隊を見ると分かります)
被告人の何人かは、第731部隊の蛮行に関わっていた思われる。
このような行為には、政府の承認が必要だったはずだ。
日本は、かつて行った残虐行為について、謝罪しなければならない。
同様に、かつて植民地を持っていた国々も、そこで行った事を謝罪しなければならない。
(2014年6月3日に作成)