(以下は『東京新聞 2017年3月21日』から抜粋)
東京都の豊洲市場(江東区)への移転問題を検証する都議会調査特別委員会(百条委員会)は3月20日に、豊洲移転を決断した石原慎太郎・元知事を証人喚問した。
これまでの4日間にわたる証人21人への質疑で浮き彫りになったのは、市場の「安全・安心」よりも、用地確保を優先した都の交渉姿勢である。
百条委で語られた証言について、見ていく。
まず1999年4月23日に石原慎太郎が知事に就任し、浜渦武生が特別秘書に就いた。
石原氏は、「知事の引き継ぎ書に豊洲地域に移転する文言があった」と百条委員会で証言。
大矢元市場長は、「石原知事に複数の候補地を示し、豊洲しかないと説明した。東京ガスに用地を売ってもらえるかが第一目標だった」と証言。
2000年7月13日に、浜渦武生は副知事に昇格した。
浜渦は、「築地市場を豊洲に移すから交渉しろと石原知事に指示された」と証言。
2001年2月21日に、豊洲移転への協議を始める、「覚書」を締結した。
石原は都議会での演説で、「豊洲地区を新市場の候補地とし、関係者と本格的な協議を進める」と発表。
2011年3月31日に、「東京ガス側は今後、 土壌汚染の費用を負担しない」との協定書を東京都は締結した。
石原は、「当時は東日本大震災という大混乱の中で、そうした報告を受けた記憶がない」と証言。
岡田・元市場長は、(東京ガスの瑕疵担保責任の免除という条件を)飲まない限り、永遠に合意できないと思った。知事に説明した資料がある。」と証言。
百条委で石原慎太郎・元知事は、「豊洲の土壌問題は大丈夫だというので、ピラミッドの頂点にいた私が決裁した。その責任は認める」と語った。
一方で「都庁全体がつくった大きな流れに逆らいようがなかった」とも述べ、責任回避に動いている。
用地交渉のキーマンだったとされる浜渦武生・元副知事が、地権者の東京ガスと行っ たとされる水面下の交渉については、「(浜渦氏に)全権委任し、いちいち詳細に報告は受けていない」と石原は述べた。
今回の証人喚問では、水面下交渉を物語る 「マル秘」文書の存在が初めて明らかになった。
2001年7月18日付の「基本合意にあたっての確認書」で、都が百条委に当初提出した資料には この確認書がなく、東京ガスの資料から見つかったという。
「(東京ガスは)現処理計画により土壌汚染対策を実施する」と書かれている。
東京ガスによる土壌汚染処理は敷地全域ではなく、東京ガス側の計画通りに範囲を限定することを、都が認める内容だ。
その後の都の調査で、環境基準の4万3千倍ものベンゼンが検出されたのは、東京ガスの求めた処理区域の外だった。
(※つまり東京ガスは、汚染地区を東京都に処理させようとした)
不利な条件を飲んだ事について、大矢実・元中央卸売市場長は「広さや利便性など移転先の条件を満たすのは豊洲しかなかった。東ガスが売ってくれるかが最大の戦略目標だった」と証言した。
石原も「向こうは売りたくない、こっちは買いたくてしょうがない」と証言。
この確認書が、2011年3月の協定で都が東京ガス側の土壌汚染に関する追加負担を免除したことのベースとされる。
こうして都が負担する土壌汚染対策費は、858億円に膨らんだ。
豊洲では環境基準の100倍の地下水の汚染が見つかり、大問題になっているが、この問題は石原慎太郎らの用地交渉の延長線上にある。
百条委は来月4日に都の元幹部3人の証人喚問を行う。
(以上は2026年1月2日に作成)