発足した高市政権の分析(以下は『文藝春秋 2025年12月号』から抜粋
2026年7月6日に作成)
🔵高市政権について 田崎史郎と中北浩爾の対談
田崎
10月に発足した高市政権の高支持率は、「働いて、働いて、働いて・・・」と言ったことに期待したのもあるが、一番の要因は公明党の連立離脱と見ている。
お互いに嫌々やっていた選挙協力から解放されて、自公の両党の支援者が喜んでいる。
高市内閣について、私は「身内優遇」と分析している。
総裁選で高市を応援した議員が6人も入閣した。
片山さつき、黄川田仁志、小野田紀美、松本尚という入閣した4人は、総裁選で推薦人となった者たちだ。
同じく城内実も、2021年の総裁選で高市の選対の事務総長をつとめた人。
内閣官房長官になった木原稔は、「高市と思想的に近い」と茂木敏充が言っていた。
木原は2021年総裁選でも高市を応援していた。
岸田政権までは閣僚指名は派閥に配慮するのが常識だったが、(裏金問題などで派閥のほとんどが解散となり)石破政権では様変わりした。これを高市も踏襲した。
中北
高市政権の自民党・役員人事は、身内重視がさらに強い。
麻生太郎を副総裁にし、麻生派から鈴木俊一を幹事長に、有村治子を総務会長にした。
さらに選対委員長は、総裁選の推薦人代表だった古屋圭司にした。
田崎
党役員人事は、麻生太郎が大きく関与した。
麻生は「自分には(高市政権の)製造者責任がある」と語っているそうだ。
中北
高市は総裁選の時に女性の起用を説いていたが、ふたを開けたら女性の閣僚は2人、党四役も有村治子だけだ。
田崎
高市と考え方の近い女性議員が少ないのが理由だろう。
起用されたのは保守系の女性議員ばかりだ。
官邸に目を向けると、首席秘書官は元経産次官の飯田祐二になった。
首席秘書官は政策全般への目配りが求められる。
秘書官では、財務省出身の吉野維一部に注目している。
中北
高市は、安倍政権の官邸を意識している。
安倍政権で首席秘書官をした今井尚哉を内閣官房参与にした。
田崎
国家安全保障局(NSS)の岡野正敬・局長を在任わずか9ヵ月で退任させて、市川恵一を起用した。これは極めて異例の人事だ。
自民党税調の会長も、宮沢洋一から小野寺五典に代えた。
官邸が税調会長の人事に手を突っこむのは、2015年に軽減税率に反対した野田毅を安倍首相が交代させて以来のこと。
もう1つ注目したのは、維新の遠藤敬国を首相補佐官にしたこと。
遠藤は間に入って調整する能力が高い。
高市は、性格が気難しい。
2021年9月の総裁選では、安倍晋三が多くの議員に働きかけて高市支持を訴えた。
ところがその年の暮れになると、安倍が電話しても高市は出なくなり、安倍は困惑していた。
高市と石破は共通点が3つある。
1つ目は勉強家で本をよく読む。
2つ目は仲間が少ない。
2021年の総裁選の時、安倍は高市の携帯電話に国会議員がほとんど登録されてないことに驚いていた。
(※田崎史郎の話を聞いていると、安倍との密接なつながり、癒着が伝わってくる。
この人が安倍政権の時にテレビに出まくっていたのは、メディアの中立性を損なう大問題だったと思う。)
3つ目は信念を曲げないこと。
中北
公明党が連立から離脱する直前、麻生太郎が「連立を離脱したら宗教法人に課税してやる」と息巻いたとの噂が出ていた。
公明党は疑心暗鬼になっていた。
田崎
公明党が離脱した最大の理由は、公明党が独占していた国土交通大臣のポストをもらえないと判断したからだろう。
かねてから麻生は、「国交大臣を取り戻せ」と主張していた。
中北
私は、離脱の最大の理由は創価学会の意向だと見ている。
公明党の協力がなければ、自民党の小選挙区の当選者の3割が落選に変わるとの試算が出ている。
田崎
高市政権が組もうとしている維新の会は、議員定数の一割削減(比例の定数削減)を説き、自民党はこれを丸呑みした。
公明党は離脱を機に小選区から比例に力点を移そうとしていたから、「そこまでやるか!」と高市政権に怒っている。
高市首相は早期解散を否定しており、2026年の後半になるまでは衆院解散はできないと私は見ている。
中北
私も2026年1月の解散はないと思うし、2027年春までに解散すると予想し、2026年の通常国会の後にやると思う。
(※この2人の衆院解散時期の予想は、完全に外れた。
高市は2026年1月に解散し、2月に衆院選が行われた。)
田崎
維新は閣外協力にとどまったが、維新の本音は閣僚に出しても恥ずかしくない議員がいなかったのだ。
2年間限定で食料品の消費減税を検討すると、自民と維新の合意書は書いているが、おそらくやらないだろう。