安倍政権のテレビ局への圧力
放送法の解釈変更、その内幕

(以下は『東京新聞 2023年3月18日』から抜粋)

高市早苗・経済安全保障大臣が、安倍政権で総務大臣をしていた時期に、安倍政権に批判的なテレビ番組に圧力をかけたと、疑われている。

高市氏は、その根拠となる文書を「捏造」と主張しているが、彼女の答弁は迷走している。

この文書は、総務省の職員が秘密に作成したとされるもので、全78枚。

そのうち高市氏に関する4枚を、高布氏は「事実ではない」と言っている。

この文書は、安倍首相の腹心の礒崎補佐官が、総務省に連絡してテレビ番組に圧力をかけようとしたと書いている。

総務大臣だった高市氏は、2015年5月の国会で、(放送局の)政治的公平性の判断基準を「事業者の番組全体」から「1つの番組」に変える、解釈変更の答弁をした。

これが安倍官邸の意向をくんだものと、文書から分かるのだ。

文書によると、高市氏は解釈変更をした答弁の3ヵ月前に、礒崎氏から相談をうけた。

その際に高市・総務大臣は、「そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある?」と言い、「総理も思いがあるでしょうから(解釈変更の)ゴーサインを出すのでは」と言った。

文書には、2015年3月に高市大臣が安倍首相に電話し、国会質問の意向を確認したとの記述もある。

これらの文書を、総務省は「行政文書」と認定した。

だか高市氏は、「私に関するものは不正確だ」、「私は覚えていない」、「私は放送法の解釈変更の話をしていない」と、言い逃れを続けている。

高市氏は、「礒崎さんという名前、彼が放送行政に興味があると知ったのは、2023年3月になってからだ」と、2023年3月8日に語った。

以前から礒崎氏と親密だったことが示されると、高市氏は「私の日本語が乱れた」と言い訳した。

高市氏を擁護する者は自民党議員にもあまりいない中、国民民主党の玉木雄一郎・代表が擁護を始めた。

玉木氏は、「争点がずれている。行政文書が安易に外に流出するのは問題」などと発言。

だが公務員が公益のために告発(通報)することは認められている。

国民民主党は与党(自公)にすり寄る姿勢を見せており、昨年度の政府予算案に賛成しアシストもしている。

テレビ番組「報道ステーション」でコメンテーターを務めていた古賀茂明氏は、「今回の文書で、裏で起きていた事が分かった」と話す。

古賀氏がコメンテーターを降板したのは、礒崎氏が総務省に連絡して圧力をかけた直後の2015年3月下旬だ。

だが古賀氏は、「私の降板は2月までに決まっていた」と言う。

そもそも2014年11月に、礒崎氏がTBSの番組を問題視し、放送局に対して自民党から「公平中立な放送を求める」との文書が送られていた。

古賀氏は、「今回の文書では、むしろ高市・総務大臣は受け身で、官邸と自民党が一体となってテレビ局に圧力をかけたと分かる」と話す。

ちなみに高市・総務大臣は2016年に、公平を欠く放送をくり返した場合、電波停止を命じる可能性にも言及した。

元テレビ朝日記者の岩崎貞明氏は、テレビ局の弱腰さも問題だと指摘する。

「放送局の独立や自由は、自分たちの努力で維持しなければならない。

政権批判をきちんとしなければ、見るに値しないと視聴者に判断されてしまう。」


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