(『週刊文春2023年10月26日号』から抜粋)
宝塚歌劇団の生徒の1人は言う。
「劇団は生徒へのフォローをしてくれず、馬車馬のように私たちを働かせてきました。」
(※宝塚歌劇団では、役者は生徒の扱いである)
宙組の生徒の1人である「有愛(ありあ)きい」の自殺について、劇団は弁護士らの調査チームが生徒に聞き取りする事になった。
これについて、宙組の関係者が証言した。
「弁護士は調査にあたり、名刺を出さず、名乗りもしない。
ある生徒が名刺を求めたところ、拒否された。
だからこの調査は、結論ありきではないかと、生徒たちは不信感を持っている。
他の組でも聞き取りが行われたが、約80人も1組に役者がいるのに、1日で終了するお粗末なものだった。」
現在、宙組では退団希望者が30数人に及ぶと言われている。
宝塚歌劇団では、5年前にも宝塚音楽学校の予科生(1年生)が、飛び降り事件を起こしている。
その生徒・A子さんは、2018年に倍率24倍の中で、合格して宝塚音楽学校に入学した。
A子さんの知人は言う。
「A子は入学して寮に入ると、指導担当として本科生(2年生)のB子さんが付いた。
A子は予科事(よかごと)と呼ばれるルールに苦しめられた。」
本科生が予科生に、日常的にパワハラをくり返す仕組みが、音楽学校には作られている。
指導役のB子は、A子に日々、謝罪文を書くことを強要した。
A子は睡眠時間を削って書き続けるうちに、思いつめてしまった。
入学して2ヵ月後にA子は、学校の職員に心身の不調を訴えた。
だが職員はその訴えに向き合わず、6月17日にA子はすみれ寮の2階バルコニーから飛び降りた。
A子は全身打撲を負い、約1週間を集中治療室ですごした。
事件の翌日に、伊木常雄・校長代行は、寮生を集めて、「口外しないように」と指示した。
音楽学校の関係者は証言する。
「A子さんの両親は、第三者委員会の設置と、保護者会を開いて事件を公表するように求めた。
しかし学校側は拒否した。」
両親と学校側の3度目の会談では、宝塚歌劇団の親会社の阪急電鉄から幹部の木場健之(こばけんし)が参加した。
(※木場健之は、その後に宝塚歌劇団の理事長に就任した。
有愛きいの自殺後、不誠実な対応をしたため、批判が殺到し、理事長の辞職に追い込まれた。)
A子の父は、保護者会の開催を求めたが、木場は拒否した。
木場らは、最後までB子の言動をパワハラと認めず、「行き過ぎた指導」と表現した。
(※行き過ぎた指導は、パワハラと同じだと思うが、木場らは違うとこだわりたいのだろう)
結局、A子は宝塚音楽学校を退学した。
学校側は弁護士を立てて100万円の見舞金で解決しようとしたが、A子側は納得せず交渉は進んでいない。
宝塚音楽学校に、この件を聞くと、次の回答だった。
「生徒の自主性を尊重するあまり、指導の状況が十分に把握できてなかった。
その結果、生徒に過度な負担がかかった。」
(※学校に蔓延するパワハラを、生徒が勝手にやっていることとし、いざとなったら全ての責任を生徒に押し付ける答弁といえる。最低である。)
(以下は『週刊文春2023年11月2日号』から抜粋)
宙組に所属する生徒(役者)の有愛きいが自殺したのは、2023年9月30日だが、宝塚歌劇団の関係者はこう語る。
「劇団が、警察の宝塚署から自殺の連絡を受けたのは、午後2時すぎだった。
しかし宙組の生徒たちには情報を伏せ、有愛きいを休演者として発表し、3時半からの公演を強行した。
この公演は、阪急交通社の貸切公演だった。
公演後に劇団側は、有愛の自殺を生徒たち(役者たち)に伝えたが、複数の生徒が倒れるほどのショックを受けていた。」
ファンクラブの関係者は語る。
「宙組のトップスターである芹香斗亜(せりかとあ)は、有愛が自殺した後も『公演を続けたい』と言い続けた。
しかし下級生たちは、『今回の自殺を招いた上級生と顔を合わすのは無理』と考え、宙組は分断状態にある。」
有愛きいの自殺について、宝塚歌劇団では弁護士による聞き取り調査が始まったが、歌劇団の関係者はこう明かす。
「木場健之(こばけんし)・理事長は当初、宙組の生徒たちに対し、『調査は1人につき30分で行う』と発言していた。
形だけの調査という意図が見え、非難が殺到しました。」
現在は、希望すれば2時間ほどの聞き取り調査になるよう改善された。
宝塚歌劇団では、宙組以外の生徒への聞き取り調査も始まったが、聞き取りは主に同劇団のプロデューサーが担当している。
雪組の生徒は、本紙にこう疑問を述べた。
「配役などに影響力をもつ、劇団のプロデューサーに対して、上級生や劇団の悪い点は話しづらい。
しかも理事長や、組長が、同席することもある。
下級生の多くは、形ばかりのヒアリングだと話している。」
元タカラジェンヌ(元宝塚歌劇団の役者)の東小雪(ひがしこゆき)は、自らが宝塚歌劇団で体験したことを、こう振り返る。
「私たちの頃も、時には何十人にも囲まれて、人格を否定するような事を大声で言われた。
私たちの時代も、情報を外部に漏らすのはご法度でした。
親にも言ってはいけない事になっていた。
宝塚歌劇団には、連綿と受け継がれる暴力の構造があり、演出家などの先生もそれを止めない。
そのため役者たちは皆、被害者であり、加害者にもなってしまう。」
実は現在の宙組トップスターである芹香斗亜も、イジメを受けていた。
前トップスターの真風涼帆(まかぜすずほ)から、きつく当たられる事が多かったのである。
芹香斗亜の知人は言う。
「真風涼帆が宝塚を退団することになり、次のトップが芹香と発表された時のことです。
通常なら拍手喝采になるが、真風が下級生を威嚇し、拍手はまばらでした。
芹香は周囲に、『悲しかった』と語っていました。」
元タカラジェンヌの東小雪は言う。
「宝塚歌劇団のスポンサーたちは、このイジメ問題を黙認してはいけないと思います。
もはやスポンサーの外圧によって変えていくしかないでしょう。」
現在、宙組の退団希望者は30人以上になっている。
(2024年1月21日に作成)