宝塚歌劇団の隠蔽体質と苛酷労働

(以下は『週刊文春 2023年11月9日号』から抜粋)

宝塚歌劇団の関係者は次のように明かした。

「宙組の有愛(ありあ)きいの自殺の直後、理事長の木場健之(こばけんし) らは隠蔽を画策しました。

自殺事件の当日に唯一出た案は、『有愛を休演扱いにして、千秋楽で退団にする』でした。

しかし報道されて隠せなくなったのです。」

有愛の自殺直後、宙組の役者たちのグループLINEに、組長の松風輝(まつかぜあきら)がメッセージを送り、「有愛は心の病だった」と書いた。

宙組の下級生は言う。

「有愛さんの死の原因が、上級生のイジメではないことにする、という松風さんの意図を感じました。

トップスターの芹香斗亜(せりかとあ)さんと組長の松風さんは、有愛さんに罵倒をくり返してました。

出番ギリギリまで謝り続けて涙を流していた有愛さんを思うと、本当に胸が痛みます。」

別の宙組下級生もこう話す。

「松風さんは、有愛さんら下級生を罵倒した後、舞台上ではその相手に異様な笑顔でわざと絡みに行くのです。」

宙組の関係者は、こうも話す。

「宙組では新型コロナウイルスの感染者が続出し、約半数が陽性となりました。

ところが松風組長は、劇団に絶対言うな、体調が悪くても出ろと、下級生に命じたのです。」

宙組の下級生が言う。

「専科で出演する悠真倫(ゆうまりん)さんに感染が気付かれてはいけない、との通達もあり、『上級生の前で咳を禁止』というルールが敷かれました。」

有愛きいの自殺後、芹香斗亜は親友に本音をもらしている。

「こんなことで公演を止めるなんておかしい。
なんで私が下級生から嫌われてるのか分からへん。」

木場健之・理事長は、「自殺の原因は宙組にある」と述べた。

これに芹香は猛反発し、周囲に「理事長は頭を抱えるだけで無策や」と話した。

他方で、雪組トップスターの彩風咲奈(あせかぜさきな)は、木場にこう伝えた。

「生徒全員へのケアを含めた対応をお願いしたい。

それと、もっと休養時間を確保しないと、私はもうやりません。」

雪組公演の一部中止が発表されたのは、4日後の10月20日だった。

宝塚歌劇団の関係者が解説する。

「雪組には、有愛の双子の妹である一禾(いちか)あおが在籍しています。

またトップ娘役の夢白(ゆめしろ)あやは、有愛の同期で相談相手だった。

劇団は約80人にいる雪組生のヒアリングを1日で終わらせて、公演に突き進もうとした。
だから彩風が立ち上がったのでしょう。」

宝塚歌劇団の腐敗のキーマンは、2021年3月まで6年にわたり理事長だった小川友次(おがわともつぐ)である。

現在は阪急電鉄の子会社である、「タカラヅカ・ライブネクスト」 の社長をしている。

(以下は『週刊文春 2023年8月31日号』から抜粋)

宝塚歌劇団の礼真琴は、入団11年目で星組のトップスターになった役者である。

礼真琴は2023年8月15日の公演中、体調が悪化して、休演・休養に追いこまれた。

礼は5月の時点で、「この公演が終わったら2ヵ月の休養をとる」と、異例の発表していた。

タカラジェンヌ(宝塚歌劇団の役者)は、かねてから働きすぎと指摘されている。

礼の体力は限界にきていたのだ。

劇団関係者が内情を明かす。

「8月13日に星組では、10人以上の体調不良者が出ました。
しかし劇団は休演にしなかった。

このことに星組の内部で相当な抵抗がありました。」

そして8月15日の公演では、幕が開いた直後に歌い始めた礼真琴は、声がかすれており、ポロポロと大粒の涙をこぼしたのである。

泣くシーンではないので、観客がざわついた。

この日の公演は結局、途中で中止となり、礼はそのまま休演・休養に入ってしまった。

劇団関係者が解説する。

「礼は喉のポリープが悪化していて、以前から強い薬で抑えていました。

日に日に悪化して、舞台でも録音を使うことがあった。

この公演では、初日の6月2日も大量の汗をかき、顔も真っ青でした。」

(以下は『週刊文春 2023年12月7日号』から抜粋)

有愛きいの遺族は、有愛が亡くなるまでの1ヵ月間の残業時間が277時間だったと明かした。

8月16日から亡くなる前日まで、45日連続で勤務し、1日3時間の睡眠が続いたと言う。

宝塚歌劇団を運営する阪急阪神ホールディングスは、角和夫・会長の下で、宝塚の公演数を増やし、利益を追求してきた。

宝塚は、小川友次・理事長の指示により、役者たちはチケット販売のノルマを課され、集客力がなければ退団するようプレッシャーをかけられる。

役者の過重労働の温床になっているのが、「自主稽古」である。

公式の稽古は午後1~10時だが、その前後に自主稽古がある。

元生徒が証言する。

「自主稽古は、強制参加でした。
演出家も振付家も全ては教えずに、『あとは自主稽古で固めておいて』と生徒任せです。

自主稽古をしないと公演が成立しないので、労働基準監督署は自主稽古も労働時間と見なすべきです。

さらに生徒たちは、公演で使うアクセサリーを自腹で制作しており、年に百万円ほどかかります。

劇団はそれを生徒に押し付けています。

ブロマイドなどのグッズ収入は、生徒には一銭も入りません。

休日にはグッズなどのための撮影が行われ、タダ働きで1日拘束されます。

研1生(デビュー1年目の生徒)は、月収が10万円もいきません。

そこから毎年ごとに月収が1万円ほどアップするだけ。
だから親の仕送りがないと苦しい。

上級生からのパワハラ・イジメも酷くて、人格を否定される言葉がきつくて、私は毎日吐いてました。

死のうと睡眠薬を大量に飲んだこともあります。」

宝塚の生徒は、入団から5年目までは雇用契約を結び、6年目からはタレント(個人事業主)契約を結ぶ。

その契約書を見ると、拘束力が強く、肖像権は劇団が管理するなど、「奴隷契約」である。

別の元生徒が語る。

「宙組は歴史が浅く、最初は上下関係のゆるやかな組でした。

それが近年、星組から移籍してくる者が相次ぎ、宙組は大きく変わりました。

星組は体育会系で、上下関係がどの組よりも厳しい。
でも暴君がいても組長が注意する。

星組で育った者が宙組でトップスターになり、星組流のパワハラ指導をして、組長が静観したら、耐性のない宙組生はドン引くはず。

劇団は、同じ檻に肉食動物と草食動動を入れたようなもの。劇団の罪は重い。」

宙組は、過去10年のトップスター4人のうち、3人が星組経験者である。

(以上は2024年5月1日、6月27日に作成
2025年7月9日に加筆)


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