日本人は長時間労働をさせられている
各国との比較

日本では、長時間労働が蔓延しています。

それが当たり前になっていて、洗脳されきったサラリーマンの中には「私はこんなに会社で長時間働いている。ここまで忠誠を尽くしている。」と自慢する人までいる状態です。

東京新聞の2016年11月27日サンデー版では、『日本の長時間労働が先進国で最悪レベルなこと』を取り上げていました。

これを紹介して、是正への一助にしたいと思います。

(以下は東京新聞11月27日サンデー版から抜粋)

日本は欧米に比べて、長時間労働が日常化し、賃金不払い(サービス)残業も多い。

先進7か国(G7)で、労働時間が週49時間以上の人の割合が最も高いのは日本で、22%である。約5人に1人が該当する。

次いでアメリカの16%、12%のイギリスが続く。

国際労働機関(ILO)は、「週48時間を超えると、健康、成果、安全に悪影響を及ぼすことがある」と報告している。

○各国の労働環境

イギリス

労働時間の上限は週48時間。
しかし適用除外制度があり、欧州では労働時間が長い。

ドイツ

1日の最長時間は10時間。週の上限は48時間。

6か月平均で1日平均8時間を超えることが許されない。

フランス

通常の労働時間は週35時間。
これを超えれば割増賃金が支払われる。

週の上限は44時間。

イタリア

通常は週40時間。週の上限は48時間。

1日2時間の残業が常態化し、欧州では労働時間が長い。

EU

残業を含めて週48時間を超えない。

勤務間の休息の規制(インターバル規制)があり、24時間につき11時間の休息期間を設けることが義務づけられている。
つまり13時間以上の連続勤務は禁じられている。

デンマーク

基本は週37時間。それを超えると割増賃金になる。

アメリカ

基本は週40時間。管理職などは適用されない。

韓国

基本は週40時間だが、労使合意により週12時間まで残業が認められている。

労働時間が週49時間以上の人が30%を超えていて、世界的に見ても多い。

日本

法定時間は1日8時間、週40時間だが、労使協定(36協定)で時間を延ばせる。

36協定を結べば、1ヵ月45時間まで残業が可能になる。
さらに特別条項を結べば、時間上限がなくなる(6か月間)。

○ 中嶋滋さん(ILO前理事)の話

不名誉なことに、「Karousi」は国際共通語となっている。

日本の長時間労働と、その被害の大きさは、全世界に知れ渡っている。

最近でも電通社員の過労自殺が大きな話題となった。

この状況を改善するには、ILO条約などの国際労働基準を導入することだ。

ILOは1919年の創設以来、189の条約を採択している。
しかし日本は1つも批准しておらず、『労働時間の国際基準を適用していない特異な国』である。

具体的には、「36協定」による労働時間の青天井状態(無制限状態)を解消することだ。

さらに、「インターバル規制(勤務間の休息時間の義務化)」を導入するべきだ。

(抜粋はここまで)

36協定を詳しく知りたかったので、ネットで調べました。

重要だと思う所をここに書いておきます。

36協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」という。
労働基準法第36条が根拠になっていることから、一般的に「36協定」という名称で呼ばれている。

会社が法定労働時間以上の残業や法定休日出勤を従業員に課す場合、労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、別途「36協定届」を労働基準監督署に届け出ることになっている。

もしこの「36協定届」を労働基準監督署に届け出ずに従業員に時間外労働をさせた場合、労働基準法に違反となる。

ところが平成25年10月に厚生労働省労働基準局が発表した調査によると、中小企業の56.6%が時間外労働・休日労働に関する労使協定を締結していなかった。

このうちの半数以上が、時間外労働や休日出勤があるにも関わらず労使協定を締結していなかった。
つまり『違法残業をさせていた』のである。

時間外労働(残業)には上限が設定されているが、例外措置がある。

「特別条項付の36協定届」の届け出をすることで、上記の限度時間を超えた延長時間を設定することができる。

具体的には、36協定届の余白に、延長理由と延長時間を書く。

ただしこれが認められるのは、年間で6か月以下。

36協定を結んでも、残業代はきっちりと払わなければならない。

実は「法定労働時間」を正しく理解していないがために、残業代を正しく計算できていないケースがとても多い。
『1日8時間、1週40時間』という法定労働時間をしっかりと理解することが、未払い残業を防ぐ最初の一歩となる。

ITmediaビジネスOnlineというウェブサイトがあり、そこの記事がなかなか面白い内容でした。

それも抜粋して紹介します。

(以下は、ITmediaビジネスOnline 山田敏弘さんの記事から抜粋)

厚生労働省の調査では、「過労死」の労災認定の目安となる月80時間を超えた残業をする正社員がいる企業は22.7%に達しており、正社員の36.9%が高いストレスを抱えている。

2016年10月16日付のニュージーランド・ヘラルド紙は、日本人が過労死する理由のひとつとして、「転職が世界と比べてあまり行われないこと」を指摘する。

米国などでは、さらに良い労働条件を求めて転職するのは当たり前である。

同紙は「与えられる年間の有給休暇がかなり低い」とも指摘している。
確かに、日本は世界と比べて有給休暇が少ない。

同紙によれば、日本では平均10日間の有給休暇が得られる(その後、勤務年数が増えるごとに1日ずつ増え、最大で20日)のだが、他の国と比べて少ない。

有給休暇が多いオーストリアやポルトガルは35日、スペインは34日、フランスは31日、英国は28日だ。

問題なのは、日本人は与えられた有給休暇を消化していないことだ。

旅行サイト・エクスペディアの調査によると、日本の有給消化率は60%である。
有給の多いフランス、スペイン、オーストリアなどでは消化率は100%だ。

この「有給休暇を使わない」感覚も、過労死の根底にあるかもしれない。

海外メディアからは、「日本の会社は労働生産性が悪い」との指摘も出ている。

例えば、英エコノミスト紙(10月15日付)は、一連の過労死問題についてこのように書いている。

「仕事の成果よりも会社で過ごす時間や献身さに価値を見出している(日本の)文化では、慣行を根本的に変えるのは容易ではない。あるIT企業の会社員(42)は、『会社は大きなチームのようなもの。私が早く帰ったら私の仕事を誰かが引き継いでやる必要が出てきて、かなり罪悪感を感じる』と話す」

多くの国には、こういう態度はない。
英米では勤務終了時間になれば、見事なまでにオフィスから皆いなくなるし、他人の仕事を気遣って残業するなんてことはまずない。

同紙はこう指摘している。

「日本の超過労働は、経済にあまり恩恵をもたらしていない。

要領の悪い労働文化と、進まないテクノロジー利用のおかげで、日本はOECD(経済協力開発機構)諸国の中でも、最も生産性の悪い経済のひとつである。

日本が1時間で生み出すGDPはたったの39ドルで、米国は62ドルである。
(オランダは61ドル、フランスは60ドル、ドイツは59ドルである)

つまり、労働者が燃え尽きたり時に過労死するのは、悲劇であるのと同時に無意味なのだ。」

過労死対策は、強制的に労働時間を減らすしかないのではないか。
そして生産性を上げるようにする。

東京都の小池百合子知事は9月14日に都庁での「20時以降の残業禁止」を発表したが、これは素晴らしい提案である。
例えばドイツ労働省は2013年から勤務時間後に上司が職員に連絡するのを禁止しており、同様の対策はすでに世界では始まっている。

(以下は、ITmediaビジネスOnline 窪田順生さんの記事から抜粋)

2016年10月7日に、電通の新入社員の自殺が、「過労自殺」だったとして労災認定された。

この自殺では、武蔵野大学の長谷川秀夫・教授が「残業100時間くらいで自殺なんて情けない」とコメントし、批判にさらされた。

長谷川教授はビジネスエリートで、東芝で23年間経理一筋で勤め上げた後、コーエーのCFO(最高財務責任者)にヘッドハンティングされ、ニトリの取締役も歴任した。

こういう人生を歩んできた人には、「1日20時間とか会社にいると、もはや何のために生きているのか分からなくなって笑けてくるな」(自殺した女性社員のツイート)というSOSは、単にプロ意識が欠如した「甘え」にしか映らない。

「これだから最近の若いのは」という感覚が、死者にムチ打つ「失言」につながったわけだ。

長谷川教授のような思想が、今回の女性社員のような犠牲者を生み出す原因になっている現実は忘れてはいけない。

こうした「お前ら若い連中はなぜできぬ」的な思想が、特に際立って強い企業が、新入社員に富士山登頂をさせるなどの体育会系文化をもつ電通だ。

「朝まで接待で飲んでゲロ吐いて、家に帰ってシャワー浴びてすぐプレゼン」なんてのは電通マンでは日常風景である。

なぜ電通などの大企業に在籍する人たちは、こういうハラスメントにつながる思想に囚(とら)われてしまうのか。

シティグループ証券の藤田勉副会長は、非常に端的に説明している。

「戦時体制の影響は、今もなお広範囲に残っている。

所得税の源泉徴収、地方交付税、国民皆保険、厚生年金、9電力体制、経団連、新幹線も、戦時中にその原型ができた。

同様に、年功序列、終身雇用制、系列・下請、メインバンク、天下り、行政指導のルーツは、すべて戦時体制である。

戦後できた日本的経営の要因は、株主持合いのみである。

それほど、戦時体制を出発点とする日本的経営は根が深いのである。
(月刊資本市場 2015年5月から)」

日本社会は戦時体制を引きずっており、入隊年次を基にする人事制度、上官の命令には絶対服従、所属組織への強い忠誠心など、旧日本軍の組織文化が企業に引き継がれている。

「企業戦士」である事になんの疑問も抱かせず、「経済戦争」に没頭させるには、軍隊をモデルにするのが最も理にかなっているからだ。

旧日本軍を真似たのだから当然、旧日本軍と同じ問題が生まれる。
その中のひとつが、今回の電通の女性社員が受けた上司からのパワハラだ。

旧日本軍では、「新兵いじめ」と呼ばれるパワハラが常態化していた。

だが当時はそういう見方をする者は少なく、大多数の人たちは暴力やパワハラを「人生修練」の一環ととらえていた。

長時間労働やパワハラを是とする企業人たちは、「企業=人生の修練道場」だと思い込んでいるふしがある。
だから、組織が期待する修練レベルに達しない「新兵」には、「貴様、それでも電通マンか!」という厳しい言葉がかけられるのだ。

『日本企業=軍隊』と考えてみると、最近多い「不正」も妙に納得できる。

旧日本軍は戦況が悪化していく中で、思うような「戦果」を得られなくなると、大本営発表で被害を過小にし戦果を過大に報告した。
国民にウソをつくという「粉飾」に走ったのだ。

電通は広告主への虚偽報告や過大請求が発覚したのは記憶に新しいが、長谷川教授が23年間を捧げた東芝も不正会計があった。

これは、思うような「戦果」を得られなかったことをどうにか取り繕おうという組織ぐるみの「粉飾」である。

旧日本軍をモデルとした日本の大企業に、不正が増えているというのは、「敗戦」が色濃くなってきたからなのか。

電通の女性社員は、亡くなるおよそ10日前、こんなつぶやきをした。

「こんなにストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか」

(2016年12月12~14日に作成)


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