(以下は『毎日新聞 2012年6月16日』から抜粋)
🔵消費増税法案が成立へ
2012年6月15日に民主党、自民党、公明党の3党は、「税と社会保障の一体改革関連法案」の修正で合意した。
民・自の合意を見て、 公明党は一転して賛成を表明した。
これにより消費税は2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げられる。
3党の確認書では、次の3点が明記された。
①公的年金制度と高齢者医療制度の改革を、3党で合意に向けて協議する
②低所得者へ給付を行う法案は、消費税の引き上げまでに成立させる
③年金の財源確保のため交付国債を発行する規定は削除する
民・自の両党は、将来の年金・医療制度の設計について、国会議員や有識者でつくる「社会保障制度改革・国民会議」を設置して議論することで一致した。
今回の修正により、政府案(民主党案)にあった所得税の最高税率を45%に、相続税を55%に引き上げることは、先送りされた。
高所得者の基礎年金を最大半分に減らすのも、削除された。
非正規労働者の厚生年金加入は、月収7.8万円以上から、月収8.8万円以上に変更された。
年間所得77万円以下の人について、年金に月6000円を加算するとしていたが、5000円の「福祉的な現金給付」に変更された。
公明党は「年金額に25%加算」を主張しており、民主党はそれに沿って修正を図ろうとした。
しかし自民党が 「保険料負担に応じた年金」にこだわったため、年金とは別枠の制度となった。
政府(野田政権)は、目玉に掲げた幼稚園と保育所を一体化させた「総合こども園」を撤回し、現行制度の存続となった。
厚生年金と共済年金を2015年10月に統合するのは、政府案の通りで合意した。
年金受給に必要な加入期間は、25年から10年に短縮する。
国民年金は対象外だ。
自民党は消費増税の実施条件について、「名目3%、実質2%の成長率」を削除するよう求めてきた。
民主党は「数値は増税の条件ではない」と説明し、自民党は譲歩した。
法案は、増税の条件として「経済状況の好転」を明記し、景気悪化時には増税を凍結できるとしている。
もし消費税の引き上げが2014年に行われた場合、1997年以来で17年ぶりとなる。
🔵過去の消費増税と何が違うか
1989年の増税時は、税収増よりも少子高齢化に備えて、勤労世帯に依存している所得税中心の仕組みを見直すことだった。
そこで一部の物品税などを廃止し、全体では国民負担が生じないようにした。
1997年の再引き上げ時も、所得・住民税や相続税の減税をし、国民全体での負担は相殺した。(※これは金持ち優遇策とも言える)
今回の引き上げは、減税と一体ではなく、純粋な増税である。
野田政権は消費税を「社会保障目的税」にしたいと言っている。
なお97年の再引き上げの後は、マイナス成長となり、長期不況のきっかけとなった。
(2025年4月30日に作成)