タイトル作家の話

(以下は『しんぶん赤旗日曜版 2023年6月4日号』から抜粋)

🔵阿川佐和子の証言

私の父・阿川弘之は作家をしており、私の小さい頃は、父は著書の増刷通知が来ると家族を外食に連れ出しました。

逆に通知が来なくなると、「明日から(おかず)はモヤシと豚肉だ」と言いました。

父は食い意地のはった人で、朝ご飯を食べながら、母と私に「今夜は何を食わせてくれるんだ?」といつも聞いてくる。

少しでも口に合わないものが出ると、「死にそうにマズイ」、「一食損をした!」と言いました。

父はちょっとしたことで激怒する暴君でした。

私が小学生1~2年生の時、私の誕生日に家族で外食しました。
食べ終えて店を出ると、11月で北風が吹いていたのですが、
父は「寒い。お前らのためにわざわざごちそうしたのに、寒いとは何だ!」と激怒したんです。

私は泣き出し、私をかばった母は途中で車から降ろされました。

他にも、一家離散や流血沙汰になりそうな時がありました。

作家の子たちに話をきくと、同じような悲惨な体験をしている人が多いんです。

遠藤周作さんや北杜夫さんの家でも同様だったと分かりました。

父は嫌な奴でしたが、笑い話にすることで私は乗り越えました。

作家は、世間の枠にはまらない変人がなるものだと思います。

常識的な行動に我慢できず、文章で稼ぐしか手立てがないんです。

(2025年11月30日に作成)


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