昨日に、宝塚歌劇団の花組公演「サン=テグジュペリ」「コンガ」を観劇して来ました。
最近は一年に1回くらい、宝塚を観ています。
今回は宝塚作品の中でもかなり面白い作品だったので、感想を書く事にします。
まず、お芝居の「サン=テグジュペリ」です。
これは、「星の王子様」を著した、サン=テグジュペリの人生を描いたものです。
私はサン=テグジュペリも星の王子様も名前しか知らず、予備知識なしで観たのですが、なかなか魅力的な人物だったようです。
作家にはめずらしくスポーツマンタイプで、飛行機乗りとしても有名だったらしいです。
さらにはフランス貴族の出身でもあり、かなり作家としては異色です。
最後には第二次大戦にフランス志願兵として参戦し、戦死してしまいます。
基本的には、飛行機乗り仲間との友情、南米先住民の血を引いた妻との愛憎模様、戦争に巻き込まれる悲劇が、この芝居のテーマでした。
星の王子様を書いた動機とか、書き上げるまでの苦労みたいな、作家としてのエピソードは少なかったです。
私が良い作品だと評価するのは、「サン=テグジュペリと仲間たちの死を、単なる悲劇として描くのではなく、意味のあるものだったと描写していること」、「星の王子様の文章を、要所に上手く入れていること」です。
これにより、作品に深みが出ています。
星の王子様の文章については、美しいの一言ですね。
最後の方で主役の二人が、王子様が病気になる場面の文章を語るのですが、あまりに美しくて涙がにじみました。
聞いていて、「星の王子様という作品は、神のインスピレーションを得て書かれたものだ」と、直感しました。
聖なるエネルギーを、文章の一部からでも感じました。
私は、こういうピュアな世界に弱いです。聞いていると、魂が感動しちゃいます。
我慢しなければ、号泣していましたね。
宝塚に限らず、主人公が死ぬ話は、「思いっきり悲劇にして、お客を泣かせてやろう」という脚本・演出が多いです。
私はそういう芝居は、大っ嫌いです。
後味が悪いし、下手をすると内臓がむかむかして体調不良にすらなります。
この作品は、主人公が死んでも希望があります。
私は、「死は、終わりや悲劇ではない」と思っているし、「死の後にも希望はある」という考え方こそ、生命の正しい解釈だと思っています。
次に、役者たちの演技について書きます。
まず、主役の蘭寿とむさんですが、歌はすばらしく、演技も常に心理がちゃんと分かり良かったです。
蘭寿さんが苦手なのは踊りですね。
ショーでも感じましたが、相手娘役を活かすスキルは素晴らしいのですが、一人で踊ると華や色気が足りないです。
彼女は、踊りでは、力強さや元気さで勝負した方がいいです。
そのほうが持ち味を活かせると思います。
トップスターになると、激務のために元気の良さが足りなくなる人が多いんですよね。
ハードスケジュールすぎます。劇団として、ちゃんと考えたほうがいいです。
二番手の壮一帆さんは、華はあるのですが、表現が全体的に地味ですね。
狐として演技する場面があるのですが、もっともっと大胆に演じた方がいいです。
吹っ切れていない、という印象です。
三番手の愛音羽麗さんは、壮さんよりも良かったです。
演じる役の心理が一貫して分かりました。
真面目に演技する人ですね。遊び心や余裕がもっと出れば、さらに良くなります。
娘役トップの蘭乃はなさんは、踊りの実力は素晴らしいです。本人もよく分かっているみたいで、踊りの時は自信を持ってやっています。
お芝居は、セリフも動きもまだぎこちないです。落ち着きがもっと必要です。
華形ひかるさんは、まだまだですねー。
顔が緊張しすぎです。もっとリラックスしないと。
ベテランの汝鳥伶さんと高翔みず希さんは、落ち着いていて良い味を出していました。
こういう人がばっちり決めてくれるかが、大きいんですよね。
壮さんや蘭乃さんあたりにこの位の落ち着きがあったら、作品のクオリティがもっとアップし、終演時の感動度は50%増しになると思います。
芝居では「影コーラス」が結構入っていましたが、クオリティが高かったです。
メインテーマの曲だと思うのですが、その曲では最後の最後に転調して終わります。
そのメロディの終結の仕方に意外性があって、飛び立つようなフィーリングでかっこ良かったですねー。
蘭寿さんと影コーラスのハーモニーがとても美しく、感動しました。
宝塚って、全員女性だから、コーラスが独特の繊細な美しさになります。
(音程や音量がばっちりなのが大前提ですけど)
ここまででかなり長くなってしまいました。
ショーの「コンガ」は短めでいきます。
この作品は、元気の良さを全面に出した作品で、次々と人が入れ替わって出てきて、飽きさせなかったです。
この様な作品は、ヘタをするとうるさくなってしまうのですが、そうならずに上手く展開していましたね。
蘭乃さんは、踊りが評価されている人なのでしょう。
沢山の場面に出て、時には大技の動きもしていましたがなかなかでした。
踊りにスケールの大きさが出てきたら、娘役史上でも屈指のダンサーになれそうです。
アフリカ的な踊りを大勢でする場面では、中央付近の、客席から見て右側で踊っている娘役の人が、一人だけ圧倒的に上手かったです。
動きに、アフリカ特有のくねくね感や野性味が出ていました。
この手の踊りは、足をガッと開いて、ワイルドにやった方がいいんですよね。
きれいにやろうとすると雰囲気が出ないです。
宗教的な踊りで、半分は霊媒みたいな所がありますから、妖しさも必要です。
全体を通して、役者に一体感がありました。
宝塚のショーは、『役者たちの一体感』が一番大事だと思います。
それを出せるかは、トップスターや組長の人間性や態度が大きいのでしょうね。
エンディングで勢ぞろいして、メイン級が銀橋に出てきた時は、役者全員が素晴らしい一体感を出していました。
後ろの大階段で踊っている人たちも、美しかったです。
今回は1階の10列目で観ましたが、この位の位置が一番観やすさと臨場感が両立している気がします。
宝塚は銀橋があるし、舞台が広いので、あまり前だとかえって観づらいんですよねー。