ビル・ゲイツについては、「GAVIワクチン・アライアンスという組織のトップで、この組織もゲイツ財団と同様にWHOに巨額の出資をしている」との話を耳にしていました。
今記事は、その事をネットで調べてまとめたものです。
これを読むと、ワクチンがどれほど巨額のビジネスになっているかが分かるでしょう。
〇 PRWire 2020年6月5日の記事から抜粋
ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、「GAVIワクチン・アライアンスに5年間で16億ドルの拠出をする」と発表した。
この事は、グローバル・ワクチン・サミット2020で発表された。
GAVIワクチン・アライアンスは、20年にわたるワクチンの展開(販売)の実績を活かして、貧困国にコロナ・ワクチンを届ける。
ゲイツ財団は、低所得国に向けたコロナ・ワクチンを購入(して配布)するというGAVIワクチン・アライアンスの取り組みに、1億ドルを拠出している。
〇 GAVI,HGPI,UNICEF東京事務所 共催シンポジウム「グローバルヘルスと企業戦略」(2012年10月11日東京) から抜粋
セス・バークレー(GAVIワクチン・アライアンスの事務局長)の話
GAVIワクチン・アライアンスは、革新的な資金調達の手法を用いている。
1つ目は、「ワクチン債」だ。
ワクチン債は、「予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFlm)」が発行している。
IFFlmの財務は、各国政府からの法律で取り消し不能にした寄付金によって支えられている。
2つ目は、「ワクチンの事前買取制度」だ。
ワクチンの開発には莫大なカネがかかるため、製薬会社はワクチンを高値で売る。
これに対し開発資金をGAVIワクチン・アライアンスが出す代わりに、適正価格でワクチンを(GAVIワクチン・アライアンスに)提供するという契約を交わすのだ。
3つ目は、「マッチング・ファンド」だ。
民間企業などからの寄付金を、イギリス政府やビル&メリンダ・ゲイツ財団からの原資と一緒にする仕組みである。
山本聡(大和証券・金融市場営業第一部)の話
ワクチン債は、予防接種に必要なカネを、(各国政府から)前倒しで調達するスキームである。
IFFlmへの将来の各国政府からの寄付金を裏付けにして、債券を発行し、投資家からカネを調達する。
ワクチン債を発行するIFFlmは、2006年にGAVIワクチン・アライアンスを財政面で支援するために設立された。
IFFlmは、各国から寄付された63億ドルのカネで構成され、世界銀行が財務を管轄している。
日本で初めてワクチン債の引き受け・販売をしたのは、大和証券である。
黒川清(日本医療政策機構・代表理事)の話
住友科学は、マラリアの予防用に殺虫剤を練り込んだ糸でできた蚊帳「オリセットネット」を開発し、ユニセフなどを通じて、アフリカを中心に50以上の国に販売している。
山田忠孝(武田薬品・取締役)の話
ワクチンの歴史を振り返ると、天然痘のワクチンが開発されて、天然痘を根絶した。
しかしワクチンは重篤な副作用が発現する場合があり、1960年代からアメリカではワクチン製造会社や医療機関に対して訴訟が起きた。
これにより、多くの企業がワクチン・ビジネスから撤退し、ワクチン不足となった。
そこでワクチン接種による健康被害の賠償を、製薬会社ではなく、政府が行う制度が作られた。
このワクチンの官民パートナーシップで、新ワクチンの研究・開発が促進され、B型肝炎などのワクチンが開発されてきた。
なお、GAVIワクチン・アライアンスの最大のサポーター(出資者)は、ビル・ゲイツである。
取出恭彦(味の素・国際栄養担当専任部長)の話
「ガーナ・プロジェクト」は、ガーナで行う栄養改善プロジェクトである。
ガーナの伝統的な離乳食はおかゆだが、栄養素が不足しているので、補うサプリメントを開発するビジネス・プロジェクトだ。
栄養改善を必要とする子供は主に農村にいるので、農村で活動しているNGOと協働しようと考えている。
本プロジェクトは、ガーナ大学やガーナ保健省との連携して進めている。
民間企業とNGOや政府とは違いがあるが、Win-Winの関係を作るのが重要だ。
〇 GAVIワクチン・アライアンスのホームページ 2011年9月29日の記事から抜粋
本日、JPモルガン、世界銀行、「予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFlm)」は、日本において1億6940万ドルのワクチン債を発行した。
この債券で調達されるカネは、GAVIワクチン・アライアンスがワクチン接種のために活用する。
IFFlmは2006年以降、36億ドルものワクチン債を発行して、GAVIの資金になってきた。
JPモルガン証券の社長兼CEOであるクリストファー・ハーヴィーは、こう述べた。
「この度、JPモルガンがワクチン債の主幹事を務めたことを光栄に思います」
今回、東京で発行されたワクチン債は、次の3つである。
①南アフリカ・ランド建ての5年債 6.5億ランド
②ブラジル・レアル建ての3年債 1億500万レアル
③オーストラリア・ドル建ての4年債 1200万ドル
IFFlmのアラン・ギレスピー会長は、こう述べた。
「多くの日本の投資家からワクチン債に投資してもらったのは、GAVIの活動が評価された証でしょう。
最高格付けを有するIFFlmのワクチン債を組成した、JPモルガンと日本の3つの証券会社に感謝します。」
またIFFlmの財務マネージャーを務める、ドリス・ヘレラ・ポル世界銀行・財務局局長も、感謝のコメントを出した。
なおGAVIワクチン・アライアンスは、WHO、ユニセフ、世界銀行、各国のワクチン企業、ワクチンの研究機関、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、などが参加している。
そしてIFFlmは、各国政府から法的な拘束力を有する寄付金をもらって活動している。
〇 新潮社Foresight 2021年7月8日の記事から抜粋
「GAVIワクチン・アライアンス」と、「CEPI(感染症流行対策イノベーション)」は、共にダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)で発足が決まった。
GAVIは2000年のダボス会議で、CEPIは2017年のダボス会議で発足が決まった。
(どちらの組織も、設立時にビル・ゲイツが支援した。
そしてビル&メリンダ・ゲイツ財団は、両方に出資している。)
日本政府も2011年から、GAVIの出資国となった。
GAVIは、11種類のワクチン接種を、発展途上国で進めている。
GAVIは、低価格のワクチンを買い、低価格で発展途上国に供給しているが、なぜ出来るかというと製薬会社に「薄利多売」の魅力を提案できるからだ。
GAVIは数多くの途上国をカバーすることで、「ワクチンの大きな市場」を握っている。
そうなると製薬会社は、ワクチン1本あたりの価格を下げても利益を得られる。
しかも官民の連携組織であるGAVIを仲介者にすれば、売る側の製薬会社は支払いの点で安心できる。
実際にGAVIのホームページを見ると、「世界の子供の半数を対象にワクチン接種しているので、自分たちは製薬会社との価格交渉で絶大な力を持っている」と記されている。
コロナ・ワクチンのニュースでは、「COVAX」あるいは「COVAXファシリティ」という名称を目にする事がある。
「COVAX」は、先進国が資金を出し、そのカネでCOVAXは複数のワクチン企業からワクチンを買う。
そして買ったワクチンは、先進国と後進国に平等に配られる。
資金を出した先進国も、出してない後進国も、人口の20%のワクチンを受け取れるのが原則である。
COVAXは、既存の組織が使われている。
それが「GAVIワクチン・アライアンス」と、「CEPI(感染症流行対策イノベーション)」である。
2020年4月4日にWHOは、COVAXの土台となる「ACTアクセラレータ」の立ち上げを宣言した。
この枠組みの要は、GAVIのワクチン調達と供給であった。
立ち上げの会議では、WHOのテドロス事務局長が進行役をつとめ、フランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のメリンダ・ゲイツらが出席した。
コロナ・ウイルスの流行で、ワクチン会社は急ピッチでワクチンを開発・販売したが、先進国はCOVAXの枠組みの外でワクチンの確保を急いだ。
アメリカやEUは人口の2倍、カナダは人口の4倍ものワクチンを購入した。
(イスラエルはワクチンを先取りするため、定価の2倍で買ったと言われている)
先進国のワクチン買い占めや、ワクチンをプレゼントするワクチン外交は、GAVIの行ってきた「薄利多売」のワクチン・ビジネスを脇に押しやった。
そのためCOVAXの活動は低迷している。
実は、COVAXは先進国にカネを出させるため、「人口の50%までワクチンを購入できる仕組み」に変更した。
つまり「平等に人口の20%づつワクチンを配る」という原則は崩れてしまった。
COVAXは、先進国にもワクチンを回す。
このため、人口を上回るワクチンをすでに入手している国々にも、ワクチンが配られる。
実際にカナダにも配られた。
2021年6月13日に日本を含めたG7は、サミットの首脳宣言で「来年にかけて8.7億回分のコロナ・ワクチンを供給し、今年中にその半分を主にCOVAXを通じて届ける」と表明した。
しかしランセット誌によれば、COVAXは今年中に先進国に4億8500万回分のワクチンを届ける取り決めになっている。
つまりG7がCOVAXを通じて届けるワクチンは、全てが先進国に行くのだ。
〇 Swissinfo.ch 2020年4月17日の記事から抜粋
アメリカ政府(トランプ政権)は、WHOへの資金拠出を停止すると発表した。
トランプ政権は、WHOがコロナ・パンデミックの対応を誤ったため感染が広がったと批判し、中国とWHOが親密だとも批判した。
ではアメリカ政府はWHOにいくら出し、どんな活動に使われたのか。
2018~19年の(2年間の)WHOの予算総額56億ドルのうち、14.7%がアメリカの拠出金だ。
WHOへの拠出額は、上位10は次のとおりだ。
1位 アメリカ 14.7%
2位 ビル&メリンダ・ゲイツ財団 9.3%
3位 GAVIワクチン・アライアンス 8.4%
4位 イギリス 7.8%
5位 ドイツ 5.7%
6位 国連の人道問題調整部 5.1%
7位 世界銀行 3.4%
8位 ロータリー・インターナショナル 3.3%
9位 欧州委員会 3.3%
10位 日本 2.7%
WHOの財源は、加盟国に義務付けられた「分担金」と、国以外でも行える「任意の拠出金」で賄われている。
分担金の額は、その国の経済力から算出される。
近年、WHOへの分担金は減少し、任意の拠出金が財源の4分の3を占めている。
2018~19年度にアメリカ政府は、特定のプログラム・国に使途を限定して、6億5600万ドルを任意拠出した。
その使途は、ポリオ撲滅が27.4%、基本的な健康と栄養へのアクセスが17.4%、などである。
〇 Forbes 2020年4月13日の記事から抜粋
WHOへの出資は、「分担金」と「任意の拠出金」の2種類がある。
分担金は、加盟国の資産と人口に応じて計算される。
アメリカのトランプ政権は2020年2月の予算案で、WHOへの出資額を1億2260万ドルから分担金のみの5790万ドルまで減らすのを要請した。
それでも拠出額は加盟国中でトップで、2位の中国は2870万ドルで、次の日本は2050万ドルだ。
今年に各国が支払う分担金は、総額で2億4680万ドルとなっている。
〇 AFPBBnews 2020年4月17日の記事から抜粋
WHOの予算サイクルは、2年ごとの枠になっている。
2018~19年度では、予算額56億2000万ドルのうち、43億ドルが任意の拠出金だった。
「任意の拠出金」を最も出しているのはアメリカで、全体の15%を占める。
次いでビル&メリンダ・ゲイツ財団が9.8%を占め、3位のGAVIは8.4%。(※合計すると1位のアメリカを抜く)
4位がイギリスの7.8%で、5位がドイツの5.7%となっている。
中国は全体の0.21%となる790万ドルにすぎない。
一方、「分担金」ではアメリカが25%近くを占め、中国は7600万ドルで全体の8%を占める。
〇 NIID国立感染症研究所 GAVIの活動について 2017年3月号から抜粋
2011年以降、日本政府はGAVIワクチン・アライアンスの出資国である。
GAVIは2016年までに、日本から7270万ドルの出資を受けてきた。
2020年までに日本から受ける出資金は、累計で1億4830万ドルの見込みである。
なお、GAVIが設立以来今までに受け取ってきた出資金の総額は、211億ドルである。
GAVIのプログラムでは、合計11のワクチンが用いられる。
またワクチン開発を促進するため、製薬会社と事前買取の協定も結んでいる。
GAVIの定期プログラムでは、対象国の国民1人当たりの所得(GNI)によってワクチン価格が変動する。
具体的には、GNIが年に1045ドル未満の国だと、ワクチン代は1本あたり0.2ドルとなる。
1045ドルを超えると、毎年の負担金額は15%づつ増加する。
1580ドル以上になると、5年後から国がワクチンの全額を負担するのに向けて、GAVIの支援金が毎年20%づつ減る。
2016年の時点で、ブータン、ホンジュラス、モンゴル、スリランカ、ウクライナの5ヵ国が、全額負担へ移行した。