最近の日記では、ワクチン・ビジネスの闇を主題にして4回にわたって書いてきました。
その勉強の中で、いくつか気になるワードがありました。
記事タイトルにあるクリスパー・キャス9や、GHIT Fund、ウェルカム・トラストです。
それも勉強したので、書いていきます。
〇 GLOBE+ 遺伝子を自在に書き換える「クリスパー・キャス9」とは 2018年6月28日の記事から抜粋
「クリスパー・キャス9」は、遺伝子(DNA)を自在に加工・編集できる技術である。
加工する遺伝情報の居場所を探し出す「ガイドRNA」と、DNAを切断するハサミとなる酵素「キャス9」から出来ている。
これを細胞の核に注入すると、ガイドRNAがDNA上から目的の部分を見つけ出し、キャス9がその場所でDNAを切断して、遺伝子が働かないようにしたり、遺伝子の情報を書き換えたりする。
上記の仕組み(技術)は、ウイルス撃退のために細菌が備えている免疫システムからヒントを得た。
細菌は、侵入したウイルスのDNAを、自らのDNAに取り込んで保管する。
そしてウイルスが再侵入した際に、すぐに相手を認識してハサミ役の酵素で切断・破壊する。
この細菌の能力を、クリスパー・キャス9はゲノム編集に使った。
〇 Gigazine ブタ遺伝子の一挙改変に成功 2015年10月16日の記事から抜粋
アメリカのハーバード大学などの研究チームが、豚の遺伝子を改変して、人間に感染するウイルスの不活性化に成功した。
豚の臓器は、大きさが人間に似ていて、臓器移植できないかが何十年も研究されてきた。
豚の臓器を人に移植してみたが、拒絶反応が生じたり、豚のレトロウイルスの遺伝子がウイルスを生み出して人間に感染したりする。
ハーバード大学のジョージ・チャーチ博士らの研究チームは、「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャス9)」という技術を用いたゲノム編集で、豚の遺伝子62個を同時に改変するのに成功した。
チャーチらは、豚の腎臓上皮の細胞を調べて、62種類のレトロウイルスに関係する遺伝子があると知った。
クリスパー・キャス9でこれらの遺伝子を破壊することで、レトロウイルスを不活性化したのだ。
これまでのクリスパー・キャス9では、一度に改変できる遺伝子は6個までだったが、チャーチらは10倍以上を一度に改変するのに成功したわけだ。
クリスパー・キャス9の開発者の1人であるカリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ドゥナ教授は、これを聞き大喜びしている。
今回の遺伝子改変した豚の腎臓細胞は、レトロウイルスの感染力が千分の1まで低下した。
次は人間に拒絶反応を起こさせる物質を特定して、その豚の遺伝子を改変することで臓器移植にチャレンジする予定だ。
〇 東京新聞 2022年1月12日の記事から抜粋
アメリカのメリーランド大学は2022年1月10日に、免疫拒絶が起きないように遺伝子操作した豚の心臓を移植したと発表した。
重い心臓病の男性(57歳)に移植し、3日後の今も経過は順調である。
この手術は、昨年末にアメリカ政府のFDA(食品医薬品局)が承認していた。
遺伝子操作した豚の心臓は、バージニア州の企業が提供した。
この心臓は、人間だと拒絶反応を起こす遺伝子の機能を失わせた上に、さらに人間の遺伝子を挿入して身体に受け入れやすくしている。
このために10個の遺伝子を操作した。
患者の手術後の免疫反応を抑えるため、未承認の薬も使用した。
(※人体実験の見本といえる手術だと思う)
動物からの臓器移植は、1960年代に盛んに試験された。
1980年代には、ヒヒの心臓を移植された患者が、20日で死亡している。
昨年にはニューヨーク大学のチームが、遺伝子を改変した豚の腎臓を、脳死した人に繋げて、機能するか試す手術を行った。
〇 GHIT Fund(Global Health Innovative Technology ファンド) のホームページから抜粋
「GHIT Fund」は、日本発の投資ファンドで、マラリアなどの感染症のワクチンや治療薬の開発に投資する、国際的な官民提携のファンドである。
運用金を出すのは、日本政府、製薬企業、ゲイツ財団などである。
「GHIT Fund」は、第二期(2018年~22年)において、日本政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラスト、日本の製薬会社から、200億円のカネを調達した。
このファンドの設立日は、2012年11月6日である。
職員数は2021年9月時点で18名である。
なおGHIT Fundは日本名だと、「公益社団法人 グローバルヘルス技術振興基金」である。
製薬の開発を確実にするために、GHIT Fundは製品開発のパートナーと定期的な進捗管理を行っている。
成長(利益)が見込めないプロジェクトは直ちに中止する。
このような厳格なポートフォリオ・マネジメントを行っている。
「GHIT Fundの評議会」は、評議会と理事会のメンバーの選定や解任、定款の変更、決算書の承認など、重要な決議を行う。
その評議会のメンバー(委員)は、次のとおりだ。
小野啓一 外務省 地球規模課題審議官
井上肇 厚生労働省 大臣官房・国際保健福祉交渉官
トレバー・マンデル ビル&メリンダ・ゲイツ財団 グローバルヘルス・プログラムのプレジデント
ジェレミー・ファラー ウェルカム・トラストの代表
畑中好彦 アステラス製薬の会長
内藤晴夫 エーザイのCEO
手代木功 塩野義製薬の社長
中山譲治 第一三共の常勤顧問
クリストフ・ウェバー 武田薬品の社長CEO
小坂達朗 中外製薬の会長
(※典型的な官民の癒着組織である。
弁解の余地がない癒着をしている。)
以下は、中谷比呂樹(GHIT Fundの会長・代表理事)の挨拶文である。
GHIT Fundは2020年度に、22件のプロジェクトに41.6億円を投資した。
これまでの累積の投資数は、101件、251億円となった。
本年度(2021年)は、特に低中所得国で使うための診断キットの開発を中心に投資した。
コロナ禍の中、新たに15団体が製品開発に加わってくれた。
臨床試験の後期段階にある、結核の診断キットなどは、WHOからの推奨取得や政府当局からの承認取得に向けて動いている。
これらの案件は、確実に製品が利用されるように、製品開発のパートナーたちと共に供給戦略(販売戦略)の議論を重ねている。
GHIT Fundはコロナ用の商品開発に直接投資はしていないが、私たちが投資した技術を応用して、富士フィルムはコロナ診断用の抗原検査キットを開発した。
〇 ウェルカム・トラストとはどんな団体か ウィキペディアから抜粋
「ウェルカム・トラスト」は、英国に本拠を置く、医学研究にも出資する信託団体である。
アメリカ出身で製薬会社のオーナーだったヘンリー・ウェルカムの財産を管理するため、1936年に設立された。
ウェルカム・トラストの資産は、かつて「バロウズ・ウェルカム社」と名乗り、のちに「ウェルカム財団」と改称した団体から(株式などの形で)拠出された。
ヘンリー・ウェルカムは、1880年にサイラス・バロウズと共同で、製薬会社の「バロウズ・ウェルカム社」を創設した。
1895年にバロウズは亡くなり、会社はウェルカムのものとなった。
ウェルカムは1924年に、すべての営利活動(製薬会社)と非営利活動を1つの持ち株会社である「ウェルカム財団」に統合した。
なおヘンリー・ウェルカムは、1910年に大英帝国の臣民となり、32年にナイトバチェラーの称号をもらった。
ウェルカムの死後、ウェルカム財団の収益は、株の配当金などの形でウェルカム・トラストに流れるようになった。
ウェルカム・トラストは、1986年にウェルカム財団の株のうち25%を売却した。
残りの株はライバルのグラクソ社に1995年に売却して、「グラクソ・ウェルカム社」が誕生した。
こうしてウェルカム財団はグラクソ社に買収され、株売却で得たカネはウェルカム・トラストに入り、格段に資産が増えた。
総資産は、2006年9月時点で134億ポンドを超える。
なおグラクソ・ウェルカム社は、同じ英国の「スミスクライン・ビーチャム社」と2000年に合併して、「グラクソ・スミスクライン社」となった。
1955年にウェルカム財団の製薬部門の米国支部として、「バロウズ・ウェルカム基金(BWF)」が設立された。
これは1993年に、ウェルカム・トラストから4億ドルの寄付を受けてウェルカム財団から抜けて、民間の生物医学研究の財団になった。
現在のウェルカム・トラストは、ブーツ社の買収に意欲を見せる「テラ・ファーマ社」と「HBOS(英国の金融保険グループ)」のコンソーシアム(共同事業体)に参加するなど、薬の製造・販売にも関わっている。
テラ・ファーマ社は、英国のプライベート・エクイティの会社である。
業績の悪い企業を買収して再構築し、売却するのを主に行っている。EMIの買収・乗っ取りが有名である。
ウェルカム・トラストは、傘下に「ウェルカム・トラスト・サンガーインスティテュート」という遺伝子の研究所を持っている。
2016年には、米国国立衛生研究所(NIH)およびハワード・ヒューズ医学研究所と提携して、「オープンサイエンス賞」を立ち上げた。
2015年には、(上記した)日本初の投資ファンド「GHIT Fund」に出資してパートナーの一員になった。
ウェルカム・トラストは、2014年8月には農場事業を2.5億ポンドで買収した。
これは共同組合の子会社で、協同組合が持つ広大な土地、15の農場、100を超える住宅などで構成されていた。
それが買収されてしまい、「ファームケア・トレーディング株式会社」に変更された。
現在は英国で最大の低地農業組織である。
ウェルカム・トラストは2015年には、「プレミアマリーナ・グループ」を買収した。
そして「プレミアマリーナ・リミテッド」となった。
この会社は、英国の9つの沿岸マリーナとボートヤードを所有し管理・運営をしている。
同社は、ボート・ショーを開催したりもしている。
〇 起業・投資・資産管理術の研究 ウェルカム・トラストの資産運用について から抜粋
「ウェルカム・トラスト」は、財団として最大のものの1つである。
ウェルカム・トラストの年次報告書によると、投資目標は長期的に年率6%のリターンとしている。
最近ではITバブルの崩壊の時期を除いて、目標はほぼ達成されている。
ウェルカム・トラストは、資産における投資の比率が105.6%と、100%を超えているが、自らが債券を発行しているためと思われる。
年次報告書では、「もはや特定の地域に投資する戦略をとっておらず、投資における英国株の比率は少なくなってきている」と述べている。
実際に、2006年の時点で、投資額の60%超は株式で運用しているが、英国株は40%に満たない。
国債などでの運用はほとんど無く、多くは外国企業に投資している。
バイアウト・ファンドやヘッジ・ファンドにも積極的に投資している。
(※ウェルカム・トラストを調べていたら、製薬企業の買収と提携の記事に行きあたりました。
ついでにそれもこの下に書きます。
読むと製薬業がどれほどのビッグ・ビジネスかや、創薬のいかがわしさが分かるでしょう。)
〇 ミクスonline 反対意見高まるファイザー社のAZ買収提案 2014年5月14日の記事から抜粋
米国のファイザー社が、英国のアストラゼネカ社の買収を提案している。
これについて、英国政府の閣僚や国会議員やウェルカム・トラストが反対を表明した。
ファイザー社のIan Read CEOは、買収の理由の1つに「英国における研究開発の優遇税制を受けること」を挙げた。
これに対しVince Cable産業相は、「英国は租税回避地(タックスヘイブン)ではなく、科学研究の場であるべきだ」と批判した。
だがDavid Cameron首相は、買収に賛成している。
野党である労働党のEd Miliband党首は、「首相はファイザー社のチアリーダーになっている」と非難し、「買収が国益にかなうか独立機関が精査すべき」と述べた。
ウェルカム・トラストは、財務省に宛てた文書で、ファイザーによる買収に疑念を示し、「アストラゼネカ社は英国に不可欠」と述べた。
ウェルカム・トラストのWilliam Castel会長は、「過去のファイザーによる製薬会社の買収(複数)で、研究開発がかなり停滞してしまった。これが繰り返されるのを懸念する」と文書で伝えた。
〇 ミクスonline 米ファイザー AZ買収を断念 2014年5月28日の記事から抜粋
米国のファイザー社は、英国のアストラゼネカ社に、総額690億ポンド(11兆7300億円、1ポンド=170円で換算)での買収案を提示した。
だがアストラゼネカは拒否し、ファイザーは買収を断念した。
アストラゼネカのLeif Johansson会長は、「我々は独立企業体として続く」と述べた。
〇 DIAMOND online 第一三共「英社から買収提案」を否定も対策強化の謎 2017年9月14日の記事から抜粋
日本で第3位の製薬会社である「第一三共」は、2017年8月31日に短いリリースを出した。
「過去にアストラゼネカ社から買収の提案を受けたとの報道がありましたが、その事実はありません」
このリリースを額面通りに受け取る投資家は、どれだけいただろうか。
例えば山之内製薬と藤沢製薬の経営統合が報道された時、両社は直後に「その事実はない」と語ったが、ほどなく合併した。(現在のアステラス製薬)
〇 メドケムがこの先生きのこるには 2019年4月11日の記事から抜粋
第一三共が「DSー8201」という新薬の開発と販売で、アストラゼネカ社との提携を発表した。
この新薬は、第一三共が期待しているADC(抗体薬物複合体)の商品で、総額8000億円の大型提携となった。
DSー8201は現在、臨床試験(人体での試験)が進んでいるが、第一三共はアストラゼネカ社との提携で、その契約金を開発費に回せる。
1年半前に、第一三共はアストラゼネカ社から買収の提案を受けていたと報道された。(1つ前の記事の件)
当時の第一三共は、売上の3割を占める「オルメサルタン」がパテントクリフ(特許が切れて後発医薬品が生まれ、売上が激減すること)を迎えていた。
成長商品はリクシアナくらいだった。
それなのにアストラゼネカ社が買収をしようとしたのは、「DSー8201」に注目したからだったようだ。
アストラゼネカ社のパテントクリフも進行中で、成長の見込める抗癌剤に進出したい思惑がある。
1年半前の買収提案の時は、第一三共の株の時価総額は2兆円だったが、今は4兆円に迫っている。
だから買収ではなく、提携を選んだのだろう。
癌の治療薬をめぐっては、企業買収が流行している。
2019年の年頭にBMS社(Bristol Myers Squibb、バイオ医薬品の企業)がCelgene社を8兆円で買収した。
日本で話題になった武田薬品のシャイアー社の買収が6.8兆円(2019年1月に買収完了)だから、それを上回る額である。
BMS社は、薬の「オプジーボ」で波に乗っている。
これは免疫チェックポイント阻害薬だが、実はメルク社の「キイトルーダ」のほうが優勢である。
一方で、Celgene社は「レブラミド」と「ポマリスト」という血液癌の薬で1兆円の売上がある。
これはサリドマイドから派生した免疫調整薬で、基本はサリドマイド誘導体で、経口投与が可能である。
イーライリリー社が、ロキソオンコロジー社を1兆円近くで買収したのも、癌薬の強化のためだ。
〇 メドケムがこの先生きのこるには DSー8201がキイトルーダと組んだわけ 2018年10月18日の記事から抜粋
2018年9月に第一三共が開発中の薬「DSー8201」と、メルク社の「キイトルーダ」は、併用に向けた開発で提携した。
DSー8201は、昨年に「オプジーボ」との併用でBMS社と組んだばかりである。
オプジーボやキイトルーダは、免疫チェックポイント阻害薬だが、効かない例もある。
患者が癌細胞に対する免疫を持っていない場合、免疫チェックポイント阻害薬が免疫のブレーキを解除しても、免疫は働かない。
実際のところ、免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験の多くは、併用療法で行っている。
だから、併用する薬を探しているのだ。
「カドサイラ」という薬は、免疫チェックポイント阻害薬との併用で相乗効果があると、マウスの実験で確かめられた。
そして同様の効果が、開発中のDSー8201にもあると報告された。
これは想像だが、今年に入って免疫チェックポイント阻害薬は「キイトルーダ」の優位性が明らかになってきたので、第一三共はキイトルーダとも組むことにしたのだろう。
多くの癌の抗体薬は、癌細胞に発生する抗原に結合し、そこに免疫細胞を呼び寄せて癌細胞を攻撃させる。
ところが抗原の種類によっては内在化が起こり、抗原ごと細胞内に取り込まれてしまう。
そのため薬の効きが弱くなる。
一方で、ADC(抗体薬物複合体)は、むしろ内在化が好ましい。
内在化することで細胞内に直接薬剤を放り込める。
だからADCは、抗体薬と相補的な関係にある。
DSー8201に結合している低分子は、毒になる代物で、血中半減期も短く、単体の薬としては使えない。
だから併用を目指すのである。
〇村本のコメント
製薬企業の活動では、数千億円レベルのカネが頻繁に動いていると分かります。
数兆円で買収した企業の薬や、数千億円を投じて開発した薬を売るにあたっては、倫理観など顧みてはいられないでしょう。
投じたカネを回収するために必死になるのは、火を見るよりも明らかです。
何としても売るためには、「医療の専門家」と称する人に色んな名目でカネを渡し、自社の新商品を宣伝してもらう事もするわけです。
コロナ・ワクチンでも、テレビでそれを推奨・宣伝する専門家と名乗る者たちの多くが、製薬会社からカネをもらっている事が分かっています。
私たちは、薬の効果や宣伝について、テレビ・ショッピングの商品と同じものと認識し、話半分で接したほうが良いと思います。