(佐藤優さんの「くにまるジャパン」でのお話しの紹介、後半です。)
質問者
今回、石破茂・自民党幹事長は、「国会議員も特定秘密保護法案の対象者だ」と発言しました。
佐藤優
現在は国会内には秘密会がありませんが、法案が通ったら秘密会が行われます。
こうなるんです。
例えば、国会議員の奥さんが外国人だった場合、その議員は秘密会への参加資格がない、という事になります。
あるいは、かつて学生運動で逮捕歴があるとかね。
これは自民党にもいます。
そういう人たちは排除される可能性があります。
こうなると、国民の代表である国会議員が、選挙以外の理由によって排除されます。
こんな事が認められていいのか。
質問者
そうなると、国会そのものの存立も危なくなりませんか?
佐藤優
正にその通りです。だから『統帥権』なんですよ。
統帥権という発想は、民主的な政治となじみません。
NSCと特定秘密保護法案の発想(思想)は、突き詰めていくと、必ず民主主義になじまなくなります。
国家権力がいちばん暴走するのは、戦争の時(戦争に向かう時)なんですよ。
だから、NSCと特定秘密保護法案については、まず国民は考えなくてはいけません。
『本当は、戦争の問題なんだよ。
日本は今、戦争できる体制に転換しようとしている(安倍政権がしようとしている)。』
これが、本質なんです。
安倍内閣が戦争への体制を作っている事に対して、「国際情勢が変わっているから仕方ない」と考えるのか、「どんな情勢でも、戦争という手段はとらない。これが敗戦から学んだことだ」と考えるのか。
これは、国民的な議論をした上で、選挙を経て決めなくてはいけません。
それなのに、なし崩しになっちゃっているのです。
そのうちには、秘密会の多数決で、議員を除名にする事だってできるかもしれません。
そうなれば、合法的に野党を全部追い出すことだって出来るわけです。
私は、特定秘密は必要だと思います。
特定の公務員に、特に重い義務をかける必要はあると思うんです。
でも、一般人に共謀などがかかるようにしてはいけない。
秘密を漏らすかどうかを調査(監視)する機関は、警察になるでしょう。
だから特定秘密保護法案が成立すると、急速に警察に力が付きます。
ですから、警察が戦前の内務省化していく可能性があります。
外務省や防衛省の人たちは、これに気づいていない。
警察の目にいつもビクビクしながら、外交や防衛活動をする事になります。
こうなれば、今度は防衛省が、「情報保全隊を、憲兵組織にする」と言い出すかもしれません。
戦前は、軍事機密は特高警察も触れなかった。
国防保安法に関するものは、憲兵の管轄でした。軍法会議がありましたから。
「じゃあ、軍法会議を作ろう」となる可能性もある。
自衛隊は、「警察の目があると、うまく活動できない。軍のことは、軍で自立的にやりたい」と言い出すかもしれない。
戦争をするためのボタンは、従来は心理的な部分での厳重なカバーがありました。
そのカバーが、ボロボロになりかけています。
それを証明しているのは、宮崎駿・監督の『風立ちぬ』への評価・反応なんです。
風立ちぬは高く評価されていますが、あの作品の最後の方では、主人公のライバルが作っている飛行機が、一瞬だけ映ります。
あの飛行機は、実在した海軍の爆撃機で、中国の重慶で無差別爆撃をした戦闘機です。
この重慶の無差別爆撃は、世界初の無差別爆撃で、国際社会から大指弾を受けました。
そして、東京大空襲や、原爆の投下や、沖縄への大空襲を、アメリカが正当化するのに使われたのです。
風立ちぬは、「美しい戦闘機を作るんだ」というストーリーの中で、『爆弾を落とされる側の視点』が消えています。
最後に爆撃機が出てくる場面で、「爆撃機は美しい飛行機だ」という結論になっている。
そして、皆がその事に違和感を覚えない。
爆弾を落とされる側の視点がない状態だと、NSCとか特定秘密保護法案は簡単に通っちゃうんです。
日本国民の多くは、「負け戦」になった時を考えていません。
攻撃する側になる事しか考えていない。ここが僕は怖いです。
こうした感覚には、「サブ・カルチャー」も関係しています。
サブ・カルチャーに、軍事・戦争へのリアリティが無くなっている。
「戦争はきれいだ、兵器はきれいだ」という感覚は、怖い事です。
○ 村本尚立のコメント
佐藤さんの話を聞いていたら、「安倍晋三さんは、ヒトラーを目指しているのか?」と思えてしまいました。
冷静に見つめると、今の自民党はファシズムの色が濃いです。
ぜひ自民党には、他者の意見にきちんと耳を傾けるという、常道に戻っていただきたいです。
佐藤さんは、「特定秘密は必要だ」と言っていますが、私はそうは思いません。
ここは、考え方が違いますね。
風立ちぬについては、私は観ていないので、佐藤さんの指摘している事が妥当なのかが分かりません。
面白い話なので、書いておきました。
「世界初の無差別爆撃は、日本がした」というのは、衝撃です。
こういう日本の暗部・恥部は、なかなか日本では知らされないのですね。
私も今まで知りませんでした。