しばらく前にWOWOWで、『戦争と人間』という日本映画を放送していました。
どういう内容かは全く知らなかったのですが、全6作という珍しいほどの大作なので、とりあえず録画して見てみました。
そうしたら、すんごい傑作でした。
「日本映画に、ここまで気合が入っている作品があったのか! それも映画が衰退してしまった1970年代に! こいつは凄いな。」と思いました。
この映画は、第1部・第2部・第3部の3つに分かれていて、さらにそれぞれの部が2つに分かれています。
つまり、全部で6つの作品で構成されています。
ストーリーは、戦前の日本を描いたもので、具体的には満州事変からノモンハンの敗戦までを描いています。
新興財閥(軍と繋がった政商)の伍代財閥を中心にして展開していくのですが、反戦の活動家などたくさんの立場の人々が出てきて、誰か1人が主役という内容ではないです。
様々な立場の人を描くことで、『戦争の悲惨さ』『当時の日本がいかにめちゃくちゃだったか』『私利私欲に走る人間の愚かさと醜さ』を描いています。
そして戦争の実態を、あいまいにぼかす事なく正面から描いています。
日本の映画史でどのような位置づけをされているのか知りませんが、「日本映画史上の傑作だ」と私は感じました。
このようなシリアスな作品は、出演者の顔ぶれは地味なことが多いです。
ところがこの作品は、出ている役者達はとてつもなく豪華で、さらに役者達がキャリアに関係なく一丸となって取り組んでいます。
気合が入っているのが、ひしひしと伝わってきます。
どういう経緯で作る事が実現したのか知りませんが、企画が通るには相当大変だったと思います。
相当な予算が使われているのが見ていて分かるし、観客を動員できる内容ではないですからねー。
現在では、こんな大作は作れないでしょう。
内容は、戦場を描いている場面も多く、その描写がリアルなので(殺人・強姦・虐待をかなり忠実に描いています)、大学生くらいまでは見ない方がいいかもしれません。
戦場の残酷さや悲惨さを、ここまで描いている作品はなかなか無いですよ。
すごいと思います。
制作者たちの勇気と信念に、心から感動しました。
この映画を見た後では、誰も「美しい戦争もある」とか「日本が行った戦争は正しかった」と言う気にならないと思います。
私は戦争体験記をいくつか読んだ事があるし、歴史を勉強しているので、内容自体には驚きはありませんでした。
でも、知っている事でも映像で見せられると、「ここまでひどかったのか、なるほど」と新たな気付きが出来ました。
ストーリーが最後で完結しないのですっきりしないし、ずっと暗い話なので一気に全部を見られる作品でもないのですが、日本人として見ておいた方がいい作品だと思いました。
大学で上映すると、よい教育になると思います。
ただし、ある程度の歴史知識がないと、ストーリーの流れが分からないかもしれません。
幻の傑作になっているみたいですが、非常にもったいないです。
映画通の人が、もっと推してくれるといいのですが。
ここで取り上げた事が、再評価のために役立ったら嬉しいですね。