私は図書館を愛用する人間ですが、先日に何気なく内橋克人さんの著書『日本改革論の虚実』を借りました。
住専などの1990年代の問題について、簡明に説明している本がなかなかなくて、困っていました。
パラパラとこの本を見たところ、「この本なら分かりそうだ」と思ったのです。
読み始めたところ、1990年代に書かれたものなのにも関わらず、今この瞬間に書かれたものかと思うほどに内容が古くなっていないため、鳥肌が立ちました。
予言書を読んでいるのかと、一瞬思えたほどです。
私は内橋克人さんを、寡聞のため知りませんでした。
読み進めるにつれて、「この人は、日本で第一等の政治・経済評論家だ」と確信しました。
私はこれまでも、田原総一郎さん、大前研一さん、竹村健一さん、等々の本を読んできましたが、これほど鋭く問題点を的確に指摘し、オリジナリティに溢れる評論を読んだ事は無かったです。
大抵の評論には、評論する相手に配慮をしたり、へたをすると相手に媚びる風すらあるのですが、内橋さんには全くそういう要素が無いです。
これほど冷徹でストイックな評論には、なかなか出会えないです。
本の中の「経済無策と市場競争原理至上主義の帰結」という一文は、1997年に書かれた文章です。
そこでは、日本がバブル崩壊後に景気回復に失敗した原因を、次の『3つの誤った神話』のせいだと説明しています。
① 公定歩合を引き下げれば、景気は良くなる
(お金の流動性を高めれば、景気は良くなる)
② 債務デフレーションの心配はない
③ 規制緩和をすれば、景気は良くなる
これを読んだ時に、「①と③は、今でも言われているじゃないか」と思い、愕然としました。
記事から15年以上が経っているのに、日本は不景気のままで、同じ神話をいまだに信じ続けているのです。
冷静に考えてみると、1990年代の頃から①と③を実施しているのに、景気は本格的には回復していません。
それを見つめるならば、①と③は間違った考え(もしくは間違ってはいなくても、あまり的確ではない考え)なのではないでしょうか。
今また、安倍政権は①と③を大々的に行おうとしています。
真の景気回復には繋がらない予感がしてしまいます…。
内橋さんの適切な解説には、脱帽しかないです。
読んでいると、「そうだったのか!」とか「そういう視点もあるのか」と気付かされます。
あえて言うならば、問題点を指摘するのはとてつもなく凄いのですが、解決策の提案がほとんどないのが気になりました。
どれほど主張が的確でも、解決策までフォローしないと、人はあまり納得しないんですよね。
内橋さんの鋭い社会観察眼に驚嘆したので、他の著作も読んでみようと思います。