6月23日に、「ブロードウェイ・ミュージカルライブ2013」を観てきました。
私が愛し応援している女優、花總まりさんが出演しているので観に行きましたが、このライブは多数のミュージカル系の役者が、おのおの数曲ずつ歌うライブでした。
今回のライブは、私はあまり楽しめませんでした。
まりさんの出来は良かったのですが、作品全体としてはいまいちでした。
本来だと、あまり楽しめなかった場合は、感想文などを書かずに「う~ん、いまいちだったなあ」くらいで終わらせます。
でもこの作品は、毎年恒例になっているらしく、出演されている大澄賢也さんが「来年もやる」と話していました。
そこで、来年のものが良い作品になるために、私の感想を率直に細部まで書く事にします。
参考にしていただけたら、嬉しいです。
まず、このライブについて、ある程度の説明をします。
この文章を読む方には、観劇していない方もいるでしょうから。
このライブは、ミュージカル系の役者たち(今回は13人)が、自分の歌いたいミュージカル曲を数曲ずつ披露するものです。
私は、歌謡曲のショーのような、「歌い手が一人づつ登場して、順番に歌っていくもの」を想像していました。
しかし、13人の他にも10人ほどのダンサーが参加しており、ダンサーが歌手と踊ったり、歌手はデュエットを披露したり、ダンスがメインの曲もあるなど、歌謡ショーとは大幅に違いました。
歌手が歌うことよりも、周りのダンサーの表現に力を入れているのではないかと思える場面が少なからずあり、「あれ~、そうなの?」と思わされました。
自分の想像していたものと大幅に違っていたので、面食らいました。
でも、楽しめなかったのは、それが理由ではありません。
楽しめなかった理由については長くなるので、まず楽しめた部分を書きます。
楽しめたのは、姿月あさとさんの歌と、花總まりさんの歌です。
もう一人、女性で良かった人がいたのですが、初めて見た人なので名前を覚えていません。
一番良かったのは、あさとさんです。
彼女は、感情を込めていたし、歌に落ち着きがありました。
まりさんは、いつも通りリズム感がすばらしかったです。
出演者の中で、一番リズム感が良かったです。
2人は選曲も良かったです。
希望のある、聴いていて幸せになれる曲を歌っていました。
ここからは、『楽しめなかった理由(来年には改善した方がいいと思う部分)』を書いていきます。
まず最初の楽しめなかった理由は、『役者たちの選択した曲が、どれも劇のクライマックスを飾るような派手な歌だったために、コンサートを通じてうるさい感じになってしまった』です。
普通の歌謡ショーならば、それぞれが十八番の持ち歌を、熱く激しく歌えばそれでいいと思います。
しかし今回歌われたのは、ミュージカルの中の1場面の歌です。
ミュージカルに限らず芝居というものは、激しい場面の他にも、静かな場面とか日常の平凡な場面があります。
それらの様々な場面の歌がミックスされて、良い作品になっています。
今回のコンサートは、様々なミュージカル作品の歌の中から、『一番目立つ、一番大仰な歌』がピックアップされていました。
そのために、ずうーと100%全開の展開が続いて、自然な流れになっていません。
聴いていると、飽きてきます。
役者たちも、思い入れのある曲なためでしょうが、皆が「うおりゃあ」という感じで全開モードで歌っていました。
そのために、余計に聴き疲れしてしまいました。
私がいいなと思った姿月あさとさんは、曲の中にきちんと緩急をつけていました。
だから、うるさくならなかったです。
あさとさんは、最初は静かに始めて、徐々に盛り上げていくように歌っていました。
来年にまた「ブロードウェイ・ミュージカルライブ」を行うのならば、ぜひ全体の構成を考えてほしいです。
全編クライマックスは、無理がありますよ。
静かな曲を増やして、激しい曲と上手く織り交ぜたほうがいいです。
あと、歌手の周りでダンサー達が踊ることが多かったのですが、歌手の歌を聴きたいと思って観劇しにいった私のような客には、「ここではダンサーはいらないよ」と思う場面がありました。
次の楽しめなかった理由は、『歌詞に共感できないものが、かなりあった』という事です。
これは、私の感性の問題です。
人によっては、とても楽しめたのかもしれません。
私は最近、霊的な世界にどんどん近づいて、価値観が大きく変わりました。
そのために、以前なら何でもなかったような歌詞に、めちゃくちゃ違和感を感じてしまいます。
愛の感じられない歌には、拒否反応が出てしまうんです。
具体的に言うと、売春婦らしきキャラの歌と、蛸の化け物(魔女?)の歌について、まったく楽しめませんでした。
売春婦や性格の悪い人(相手を騙す人)が、この世界にいる事は、すでによく知っています。
実際にも目にするし、芝居でもたくさん見ました。
だから、それを舞台で表現されても、驚きも新鮮さもないです。
そして何よりも、私はそういう人物にまったく興味がないです。
それらの人物の心境を熱く表現されても、「だから何?」と思ってしまうんですよねー。
芝居の中だったら、そういう人物の登場理由もストーリーの展開上まあ分かるのですが、コンサートでやられてもなあ。
コンサートでは、愛や希望のある歌を歌ってほしいです。
そして、これが楽しめなかった最大の理由なのですが、『役者の多くや、バックで弾くミュージシャン達のリズムが悪すぎる』という事です。
このコンサートでは、生演奏の伴奏が使われていて、10人ほどのミュージシャンが伴奏をつけていたのですが、その内容は本当にひどいものでした。
あまりに精気のない音なので、コンサートの途中で帰ろうかと思ったくらいです。
サウンドがあまりに退屈だったので、1回だけですがコンサート中に寝てしまいました。
私がこんな状態になる事は、まずないです。
今回の会場は、東京国際フォーラムだったのですが、ここは音響が良くないんですよ。
それも、影響していたかもしれないです。
宝塚歌劇団のオーケストラもそうなのですが、生演奏なのに音に力や生命感が無い事があるんですよねー。
彼らの演奏からは、「失敗しないように、忠実に無難に演奏しています」というのが伝わってきます。
私からすると、「生命感の無い、死んだ音を出すくらいなら、ミスをしてもいいから生命力を表現してくれ」です。
私が思うに、ミュージカルの伴奏者たちは、『もっと自己表現をした方がいい』です。
伴奏者は自己表現をしないで大人しくしていた方がいい、というのは完全に間違っていると思います。
伴奏者は、サッカーで言うとDFやGKです。
FWやMFよりは目立たない存在ですが、自己を表現しないと成立しないポジションです。
「お金のためにやっています」みたいな音を聴いていると、まじでイライラします。
「お金のために演奏する」というのは、別に間違ってはいないですけど、「それであなたは満足なの?」と思ってしまいますねえ。
役者の大半も、リズム感は良くなかったです。
伴奏と合っていないし、リズムが躍動していないです。
そのために、眠くなってしまいました。
ここで突然ですが、「リズム論」を展開したいと思います。
リズムの感覚は、人それぞれだし、本質的にあまり他人がとやかく言うものではないです。
それは分かっているのですが、今回のコンサートで忍耐の限界に来ました。
お客が退屈して寝てしまうというのは、表現者の感覚とか個性で済ませられるレベルではありませんから。
私はジャズ・ミュージシャンを目指していた時期があり、リズム(特に黒人のリズム)について真剣に勉強・考察しました。
そうしてたどり着いた、リズムについての自分なりの奥義を、ここに書きます。
私が思うに、日本の多くのダンサーや役者は、リズムをいまいち分かっていません。
リズムを定規の目盛りみたいに考えて、「単なる一定の距離(時間)で区切られたもの」と思っているふしがあります。
リズムについて探究せず、「単に距離(時間)の数値を定めるルール」としか捉えていない感じなのです。
しかしリズムは、「伸び縮みするもの」だし、「円を描いて回転していくもの」です。
文章でリズムを説明するのは難しいのですが、頑張ってみます。
ジャズの世界では、リズムが躍動して素晴らしい状態になる事を、「スウィングする」と言います。
そして、スウィングするコツについては、「自分の心臓の鼓動に合わせろ」と言います。
「心臓の鼓動に合わせろ」というのは、解釈が人それぞれになると思うのですが、私はこう解釈します。
『心臓の鼓動のように、生命力や躍動感を出せ』
『心臓の鼓動のように、自然な流れになるように意識せよ』
『心臓の鼓動のように、伸び縮みをして、タメを効かせるようにしろ』
心臓の鼓動は、決して味気ないものではないし、杓子定規なものではありません。
それと同じく、リズムは「生き物的なもの」なのです。
ある程度のレベルまで努力を重ねれば、リズムをキープするのはそんなに難しくなくなります。
そこから先は、「リズムをいかに自然に躍動させるか」なんです!
今回のコンサートでは、ほとんどの役者と伴奏者は、リズムが動いていないし、繋がっていかなかったです。
もう少し具体的に、リズムを説明していきます。
リズムの映像イメージとして近いのは、『心臓の鼓動のグラフ』です。
よく病院もののドラマで、心臓の鼓動がモニターに表示されます。
そのモニター画面のグラフでは、「ピッ、ピッ、」と鼓動の瞬間に波が高くなりますよね。
あのイメージです。
リズムも、拍子を打つ瞬間に、波が高くなる(強力になる)のです。
拍子の瞬間に、エネルギーが「ぐっ」と放出される感じ。これです。
もう一つは、『回転していく車輪』のイメージです。
リズムは、円のような滑らかさと、クルクルと繋がっていく感じが大切です。
でも、時計の針みたいに、1周する間の動きが、ずっと同じペースなのではありません。
近いイメージなのは、大人数でする縄跳びです。
大人数の縄跳びでは、皆が飛ぶ瞬間に、縄の回し手は回転を早くしますよね。
あの「瞬間的に回転が早くなる、縄が着地する時」が、拍子を打つ瞬間です。
つまり、縄の1回転が1拍子で、拍子を打つ瞬間には力強く速くなります。
分かるかなあ、この感じ。
リズムは、繋がっていくものだし、滑らかに回転していくものなんですよ。
そして、拍子の瞬間には「ギュッ」と、速く強くなります。
さらに拍子と拍子の間には、しなりとか、タメがあります。
まあ、リズムについては奥が深いし、それぞれが独自の境地を追求していい分野でもあります。
あまり人の言う事に耳を傾けすぎるのは、逆に良くない気もします。
とりあえず、もっとリズムについて探求・研究してほしいです。
役者の場合、演技に集中力を投入しすぎて、リズムが悪くなる人がいます。
本人は気付いていないのかもしれませんが、リズムが悪くなると、セリフ(歌詞)が聴き手に届かなくなる(聴き取りづらくなる)んですよ。
リズム感が良い人が歌うと、歌詞が頭にスッと入ってきます。
今回の「ブロードウェイ・ミュージカルライブ2013」での一番の感想は、「リズムの悪さを何とかしてくれ」でした。
ほかの不満点は、上記したとおりです。
あの内容でも、私以外のお客さんは楽しめたのかなあ。
観に行ったのが千秋楽公演だったこともあり、終演後にお客さんはスタンディング・オべーションをしていました。
私の求めている事が、高いものなんですかね?
私は、あの内容では納得できません。
「あなた方は、もっとやれるだろう。もっと情熱を持って取り組んでくれ。」と、観ている間に何度も思いました。
(特にバック・ミュージシャンたちに)