宝塚 星組公演「ロミオとジュリエット」を観劇した感想
凄く良かった(2013.9.6.)

しばらく前の8月13日に、宝塚歌劇団の星組公演『ロミオとジュリエット』を観劇してきました。

この作品は、海外版を宝塚流にアレンジしたものですが、素晴らしかったです。

私は今まで、ほとんど星組には無関心でした。

というのも、私が宝塚を観始めた1998年頃は、星組は「地味で暗い感じ」がしていたからです。

当時は、麻路さきさんや、稔幸さんがトップでしたが、私の見るところではどうも華やかさに欠けて、魅力が無い感じがしたのです。

トップスターのせいというよりも、組全体の雰囲気がそうだったのだと思います。

当時は、宙組には出来たての若さや勢いがあり、花組には伝統の華やかさがあり、月組には芝居に特化した良さがあり、雪組にはショーに特化したあでやかさがありました。

それに対して、星組には特徴がない気がしました。

そのイメージがずっと続いてきたのですが、先日にスカイステージ(宝塚専門チャンネル)の無料放送を母が録画して、私も久しぶりにスカイステージを見たところ、認識を改めました。

「星組の男役陣は、すごい充実しているじゃないか!」と気付いたのです。

今回の『ロミオとジュリエット』に出演する役者の座談会を見たのですが、舞台映像や役者達の話を聞いて、男役のそれぞれにしっかりとした個性がある事に気づき、びっくりしました。

私は、星組以外の男役はある程度知っていて、「最近の男役は、スケールが小さいなあ」と残念に思う事が続いていました。

「男役が育っていないなあ」と嘆いていたところ、星組に有望な男役がひしめいている事を発見したのです。

「何だよ! ここに居たの! 早く言ってよ!」といった感じです。

星組ファンの方には周知の事なのでしょうが、私にとっては衝撃です。

「最近は星組の人気が高いと聞いていたが、なるほどなー。ヅカファンの眼力は侮れんのー」と思いました。

それで、ロミジュリ公演を観にいきたくなったのですが、とても人気があるためにチケットが全然ないという事です。
私は、「うーむ、無理なのか?」と思いました。

しかし、母の友人にものすごいヅカファンの方がおり、その方の知り合いのツテを使ってチケットを取ってもらいました(^-^)

そうして観劇をしてきた感想を、ここから書きます。

『ロミオとジュリエット』は、2年前にも星組で上演されており、その時は海外の演出や音楽を丸ごと持ってきたヴァージョンだったようです。

今回は、宝塚流にアレンジがされたため、前回とは演出が違うという事です。

私は前回を観ていないので、比較は出来ません。

この公演は、『ロミオとジュリエットという古典作品を、ロック調にして、大胆に現代的にアレンジした』のが特徴です。

なので、ロックの音楽が多用されているのかと想像していました。

でも、実際にはそれほどでもなく、スロー・バラードの方が多い気がしましたね。

役者たちの服装がパンク・テイストで、ここはとてもロック調で、かっこ良いと感じました。

宝塚的には、かなり斬新な服装だと思います。
宝塚は、きれいで整った服が基調ですから。

芝居を観てまず驚いたのは、男役トップの柚希礼音さんの「声量」でした。

こんなにでかくて太い男役の声は、今まで聴いた事がありません。
女の声帯を超越しています。

とにかく凄い迫力で、圧倒されました。

柚希さんは実に良い声をしているので、1つアドヴァイスをさせて下さい。

彼女はほとんどいつも全力で歌うのですが、声に厚みがきちんとあるので、常に全力で出す必要はありません。
もっと抑えて歌う事を覚えた方がいいと思います。

曲によっては抑えた表現にした方が、全力で歌う場面のインパクトが増しますよ。

次に驚いたのは、トップ娘役の夢咲ねねさんも、とても歌が上手かった事です。

大抵のコンビは、どちらかの歌がいまいちな事が多いので、両人が上手いのは貴重です。

表現力があり、歌詞の意味がよく伝わってきました。

スカイステージの番組で感じたように、 紅ゆずるさん、真風涼帆さん、天寿光希さん、(2番手以下の男役陣)も良かったです。

紅ゆずるさんは、身体がきゃしゃなので声量を心配していたのですが、どういう体質なのかすごく声量がありました。

彼女は、線はやや細いのですが、華がありますね。

真風涼帆さんは、ティボルトの役をしていて、特徴のある赤い衣装を着ていたのですが、とても似合っていて目立っていました。

彼女は、身体が大きくて目立つし、スケールの大きさを感じさせる華やかさがありますね。
非常に有望な男役だと思います。

ティボルトのニヒルな感じや、隠された純粋さを、よく表現していました。

天寿光希さんは、身体が小さいのですが、それが逆に個性になっています。
紫色の服を着ていましたが、赤い髪とマッチしていて、決まってました。

マーキューシオというやんちゃな役を演じていましたが、しっかりと他の役とは違う味を出しています。

彼女は、演技派ですね。
体格的にトップ・スターは難しい感じですが、脇を固めるには最高の逸材です。

こういう人がいると、トップは楽でしょうねー。

全編を通して、後ろでチラチラと踊る黒と白のキャラがいて、良い役(重要な役)とされているようですが、私には無意味な役に思えました。

「別に要らないんじゃないか?」と思いました。

私は、こういう込み入ったまどろっこしい表現が、大の苦手です。

芝居で特に素晴らしかったのは、乳母役の美城れんさんです。

まだ中堅どころらしいですが、演技力がはんぱじゃないです。
宝塚に残っていけば、『第二の未沙のえる』になれるのではないでしょうか。

こういう脇役がいい演技をしていると、芝居全体が引き締まるんですよねー(^-^)

今回の記事を書くにあたって、ネットで配役等を調べたのですが、彼女について「でぶで、宝塚に相応しくない。出てくるとテンションが下がる。」との意見を書いている方がいました。

気持ちは分かるのですが、れんさんは外見ではなく、演技で勝負するタイプです。温かく見守りましょう。

私は知らなかったのですが、今公演は配役に2つのタイプがあり、私が観たのは「Bタイプ」だったようです。

こういう役代わり公演は、宝塚でたまにありますが、役者への負担が大きいのであまりしない方がいいと思います。

お客さんは入るのでしょうが、「お金よりも大切なものがあるんじゃないか? どうなんだ?」と言いたいですね。

ストーリーについては、ロミオとジュリエットなので、特筆するようなものはないです。普通に楽しめました。

スタンダードになっている話ですが、ストーリー展開が上手く作られていますよね。
シェークスピアは、やはり凄いです。

唯一つ違和感を感じたのは、神父さんがロミオとジュリエットが死んだ後に、「おおっ、神よ!あなたは、なぜこのようなむごい事をなさるのですか!」と言って、嘆く場面です。

彼は、この物話の中で最も大人な人物(出来た人物)の1人なのに、この程度の哲学しか持っていない事に、がっかりしました。

彼は、『すべての出来事は完璧であること』『神は何も望まないこと』『死は存在しないこと』といった偉大な真実を、まったく理解していません。

この神父はとてもいい人なので、よけいに残念です。

このストーリーは、最終的にはロミオとジュリエットの死を経て、対立していた勢力が和解して平和になって終わります。

だから、2人の死はぜんぜん無駄ではなく、悲劇でも何でもありません。

神父たちが悲しむ理由などは、いっさい無いのです。

さらに言えば、『死は存在しないこと』を理解すれば、2人の死を嘆くことなんてあり得ません。
2人は、喜びの世界に行ったのだから、祝福すればいいのです。

「あまり深刻になるな(ナーバスになるな)」と、観劇中に、劇中の人物たちを見ていて何度も思いましたよ。

人の死を重く受け止めすぎると、復讐とか絶望に陥ってしまいます。

さて、芝居の後は、宝塚の恒例の『ショー』になりました。

今回は芝居がメインのため、ショーは短かったのですが、私はこれが一番楽しめました。

とにかく役者たち全員のクオリティが高くて、本当にびっくりしました。

男役が勢ぞろいして踊る場面は、圧倒的な迫力であり、男の私でも「かっこいいなー」と感嘆しました。

踊りを見ながら、「男の私でもかっこいいと思うのだから、女の人が目をハートにするのは無理もないなあ」と思いました。

踊りのクオリティは皆が高かったのですが、特に柚希礼音さんは凄かったです。

踊りの切れ味やダイナミックさがとてつもなく、要所に入れるかっこつける動き(目線や仕草)が、びしっと決まっています。

独自の境地を築いており、「真矢みき以来で、ここまでの境地に到達する男役の踊りを見た。宝塚史上でも屈指のダンサーだ。」と感じました。

夢咲ねねさんの踊りも、素晴らしかったです。

彼女は、踊りが一番得意らしいですね。宝塚に詳しい母からそう聞きました。
確かに、自信を持って演じている感じがありました。

彼女は、足が太くて、力強さがあります。

私の好きな花總まりさんは、細くて優雅で高貴なスタイルでしたが、夢咲さんは力強くて大胆なスタイルです。
タイプは違いますが、踊りに関しては同じくらいのクオリティだと思うし、歴代の娘役の中でもトップクラスだと思います。

柚希さんも夢咲さんも素晴らしいダンサーなので、2人のデュエット・ダンスは最高でした。

相性もいいようで、実にスムーズに絡んでいましたね。

柚希さんが夢咲さんを持ちあげて、両腕で抱え込んでぐるぐる回る場面があります。

このコンビ技は、大変に力を使う荒技ですが、宝塚の定番になっており、様々なコンビが行うヴァージョンを観てきました。

その中でも、今回の「ぐるぐる」は一番の出来です。

「ぐるぐる」の高さとスピードが、はんぱじゃなかったです。
スピードは、他のコンビの1.5倍くらいはあり、迫力が尋常ではないです。

竜巻なのではないかと思うほどでした。

柚希さんは、見るからに体力のありそうな人ですが、おそらく歴代の男役の中でも3指に入る身体能力だと思います。
ほとんど超人の域に達しています。

「ぐるぐる」は、並みのコンビだと「怪我をしないか」などと観ていて心配になるのですが、彼女の場合は安心して観ていられます。

持ち上げても、重心が安定しているので、安心感を与えてくれます。

最初から最後まで、素晴らしい公演でした。

終演後に劇場を出ようとしたら、出待ちの人がものすごい量で居ました。
柚希さんの人気の高さを感じました。

あんなに出待ちがいるのは、私の知る限りでは、真矢みきさん以来です。

星組は、今はかなりおすすめですね。

トップスターから最下級生までの組子の平均値が高く、大勢で踊る場面などは感動的なほどのクオリティです。
全員の動きや意識が、きちんと統一されています。

統一感があるから、逆に1人1人の個性が際立つんですよねー。

誰が若手を指導しているのかは分かりませんが、教えている人が良いのでしょう。
バック・コーラスもきれいでした。

最後になりますが、オーケストラも、今回はなかなかの演奏をしていました。
力や切れ味が、以前よりもだいぶ向上しています。

でも、できればもっと情熱(情念)を表現してほしいですね。

宝塚のオケは、そう教育されているのでしょうが、淡白なんですよねー。

場面によっては、もっとねばっこい音や、深い絶望感を感じさせるダークな音を、思い切って出した方がいいです。
全体の基調を、夢々しくしすぎなんですよ。


日記 2013年7~9月 目次に戻る