このところ、都知事選挙の話題で盛り上がっていますが、有権者のアンケートでは「景気回復と雇用」が最大の関心事だそうです。
私としては、せっかく細川護熙さんが立候補して「脱原発」を打ち出したのだから、原発についてを最大の争点にしてほしいのですが、多くの人の関心は自分の間近の生活みたいですね。
今回の都知事選挙に限らず、最近の大きな選挙では、ほとんどが『景気回復』が大きなテーマになっています。
各党は「私たちはこうやって景気回復をさせる」と主張し、有権者は「この政策なら景気回復が出来そうだ」などと考えて、投票をしています。
こんなにも景気回復に国民の関心が向くのは、「景気が回復さえすれば、私の生活は良くなる」と皆が信じているからです。
つまり、『景気動向と自分の生活は、完全にリンクしている』と、ほとんどの人が信じています。
この信念に、ほとんどの国民は疑問も違和感も持っていないのですが、冷静に考えるとおかしな話なのです。
私が問いたいのは、『本当に、景気回復をすれば、あなたの生活は向上するのか』です。
思い出していただきたいのですが、小泉政権の頃に「戦後で最長の好景気期間」と呼ばれる時期がありました。
この時には、数年間も景気回復が続いたのですが、あなたの生活は良くなりましたか?
今の日本で常識となっている「景気回復すれば幸せになる」という信念は、実は幻想ではないでしょうか。
「お金があれば幸せになれる」「恋人がいれば幸せになれる」「出世すれば幸せになれる」「有名になれば幸せになれる」
こうした信念(価値観)は、世間ではよく語られます。
(大手メディアや企業は深い考え無しに、そうした価値観を垂れ流して煽っている)
でも、ほとんどの人は『実際には、そう単純ではない』と気づいています。
(もちろん、中には信じきっている人もいます)
こうした短絡的な思考(信念)と、「景気回復すれば幸せになる」との信念は、大差ないと思います。
つまり、根拠の薄弱な、『盲信に基づいた短絡的な考え方』だと思うのです。
私が見るところ、今の日本では景気回復をしても(高成長の時期がきても)、一部の人しかその恩恵にあずかれません。
そういう仕組みが出来上がっているからです。
実は、日本と同じ仕組みになっている国(日本が真似している国)があります。
それが、『アメリカ』です。
アメリカは、世界一の経済大国であり、景気の良い時期がたくさんあったにも関わらず、貧富の格差がどんどん進行しています。
ぜひ、そういった事実を描いたドキュメンタリー番組とか本に接してみて下さい。
あなたは、必ず衝撃を受けるでしょう。
このアメリカの現実から理解できる事は、『富がきちんと分配される仕組みを作らなければ、景気が良くなっても一般人には何の影響もない』という事です。
今の日本人は、ほとんどの人がこの事に気付いていません。
(もっとはっきり言うと、目を逸らして見ないふりをしている)
逆に言えば、富をきちんと分配する仕組みがあれば、景気が落ち込んでいても、人々が今ほどに焦燥感を持たずに、希望を持って生きられるはずです。
この重要なポイントを押さえずして、豊かな生活を日本国民が得ることはありません。
「景気回復したら、多分おこぼれにあずかれるだろう」という様な、根拠の無い浅はかな考えをしている限り、国民の多くはどんどん貧しくなっていきます。
大げさに思うかもしれませんが、ここ15年くらいの人々の生活環境の変貌ぶりを見れば、誰もが納得するはずです。
自民党政権は、どんどん国民の生活を苦しくし、官僚と一緒になって私利私欲にはしり、国の借金を膨らませています。
それがずっと続いているのに、「景気回復を実現させます。実現すれば、あなた方の生活は一変します。」との自民党の決まり文句に、いつまでも疑問を持たずに頷いている人が多い。
これは、完全な思考停止ですよ。
冷静に見ると、危ない新興宗教と大差ないのではないか、とすら思えます。
日本の皆さんは、「景気回復すれば幸せになる」という魔法の言葉(金科玉条)が、実は共同幻想なのだという事に、気づきましょう。
そうしないと、同じ過ちを永遠に繰り返すことになります。
○補足
この記事を書いた動機の1つに、消費税の不公正な仕組みを知った事があります。
これについては、「日本の問題の勉強」→「財政(借金)・税制」のページにアップしています。
景気回復を求めるよりも、様々な不公正な仕組みを変えるほうが、国民の生活は豊かになります。
景気という、循環があり海外動向に左右される不安定なものにすがるより、国政や社会システムを変える方が確実かつ効率的ですよ。