庭の垣根の剪定をしていて、今世で初めて蜂に刺されてしまった
(2014.8.18~20.)

半月ちょっと前なのですが、今世で初めて蜂に刺されてしまいました。

なかなか面白い体験だったので、ここで取り上げようと思います。

ある日の午前中の事です。

天気が良かったので、「だいぶ庭の草木も伸びてきたから、そろそろ剪定するか」と思い、母を誘って一緒に作業をしたのです。

私は垣根を担当し、母は地面の雑草取りを担当しました。

私は脚立を立てて、地面から2.3mくらいに伸びている垣根を、2mの高さにカットしていきました。

端からカットして行って、しばらく進んでいき、休憩を兼ねて脚立から降りて、垣根の高さが揃っているかを少し離れた位置から確認していた時です。
蜂が3~4匹ほど、「プ~ン」と飛んでいるのに気づきました。

我が家の庭はあまり手入れをしないため、鳥や昆虫の暮らしやすい環境になっています。

そのため、たまに蜂も現れるのですが、数匹もいるのは看過できません。

「もしかして、蜂の巣ができているのでは?」と思い、蜂が飛んでいる辺りを調査すると、やはり蜂の巣が誕生しているのでした。

その巣は、私が切った垣根の上部分(地上から1.8mくらい)に付いており、私が剪定した事で隠れていたのが露わになり、焦った蜂たちが警戒しつつ飛んでいたのです。

脚立に乗って蜂の巣を詳しく見たところ、まだ出来立てです。

直径が10cmほどで、蜂は全部で5匹くらいしか居ません。

そうして、かなり大きい蜂ですが、どうもスズメバチではなさそうでした。

スズメバチと模様が違うし、何よりもスズメバチ特有の驚異的な威圧感がありませんでした。

蜂の巣は、放っておくとどんどん大きくなってしまいます。

そうなれば手を出せなくなり、業者に退治を依頼するしかありません。

以前に1度、スズメバチの巣が出来てしまった事があり業者を呼びましたが、その時には1万円くらいの料金を取られました。

私は、「倒すなら今しかない。スズメバチではなさそうなので、自分でやってしまうか」と考え始めました。

で、母に相談したところ、「私は何度も蜂の巣を退治している、大丈夫だ」と太鼓判を押すのです。

そうして、ゴキブリを殺す用の、霧状スプレータイプのキンチョールみたいな奴を持ってきました。

母はかつて保育園の用務員をしてましたが、「私はその頃に、これで何度も倒した」と豪語するのです。

私がTVで蜂の巣退治の番組をみた時は、業者はムースタイプのスプレーを使っていました。

ムースで包み込むことで、蜂を一気に動けなくするのです。

正直言って、霧状スプレータイプでは蜂全員の動きを止められるか疑問があります。

さらにここにあるのは、ゴキブリ用です。

私は、「本当に大丈夫なのか。もし効かなかったら、こっちがやられてしまう。」と念押ししました。

すると母は、「大丈夫だ。過去に何度も倒したし、蜂はいきなりは襲って来ない。シューとかければ、蜂は息絶える。」と明言しました。

母の言う事があまり当てにならないのは、これまでの経験から熟知しています。

さらに、重要な局面になればなるほど情報の精度が落ちる事も熟知しています。

だからかなり心配だったのですが、『これまでに何度も倒してきた』という経験を信じて、母の言う通りにやってみる事にしました。

私は母に、「もう今日は庭作業は終わりにしよう。蜂の巣にスプレーをかけたら家の中に撤退するから、先に家の中に戻っていてくれ。」と言いました。

そうして脚立を巣の目前に移動させ、脚立に上って蜂の巣よりも少し高い位置に陣取り、スプレーを構えました。

巣には蜂が5匹ほど止まっていました。

少し前には蜂たちは巣の周りを警戒飛行していましたが、どうやら警戒を解いたらしく、全員が巣の表面に止まっているようでした。

蜂は、黄色にまだら模様の入った身体つきで、体長は3cmほどです。

スズメバチではなさそうですが、身体は大きく、ミツバチよりも明らかに強そうです。

私は、その強そうな佇まいにやや気圧されながらも、手を伸ばしてスプレーを巣から30cmまで持っていきました。

そして「エイ!」とばかりにスイッチを押し、「シューーー!」と2秒ほど、霧状の殺虫剤をかけました。

かけ終えた後、「やったか?」と思いつつ様子を窺ったところ、とんでもない事が起きました。

様子を見ようと、スプレーを持った手を下ろして巣に注目した瞬間に、霧の中から猛烈な勢いでこちらに向かってくる1匹が目に入ったのです!

そいつは、弾丸のようなスピードで、一直線に私の顔をめがけて迫ってきました。

それを目にした瞬間に、「まずい!!このままではやられる!」と本能的に察知しました。

私は咄嗟に(時間にすると0.05秒くらいだと思う)思考をめぐらし、こう結論を出しました。

「こいつは、顔に刺そうとしている。

 対処をしなければ、絶対に刺される。
 じゃあ、どうする?

 まず、顔を出来るだけ後ろに反らして、距離を確保しよう。

 さらに、蜂が顔に止まって刺す瞬間を見定めて、
 その瞬間に大きく顔を反らそう。

 そうすれば、蜂はバランスを崩し、刺すのに失敗するはずだ。」

そうしてまず、蜂が猛スピードで顔に迫る中、顔を後方に反らしました。

ところが、わずか5cmくらい後方にもっていた時点で、蜂は顔に到達してしまいました。

まあ当たり前ですね。
私が気付いた時には、蜂はすでにこちらに向かっている最中だったのですから。

そこで今度は、『蜂が私の顔に止まって、刺す体勢を取る瞬間』に意識を集中します。

その瞬間に顔を大きく動かして、刺されるのを回避してやろうと、タイミングを計りました。

ところが!

私は驚愕したのですが、蜂は向かってきた勢いそのままに、顔に着いた瞬間に刺してきたのです。

つまり、「顔に止まる」という動作なしに、空中からダイレクトに刺してきました。

蚊やハエは、まず止まってからアクションをするじゃないですか。

あれをイメージしていたのですが、どうも蜂は異なるスキルを持っているようです。

刺された瞬間に「チクッ!」と痛みが走りました。

「うわっ!! やられた!!! 毒を注入された!」と悟り、一気に心が折れました。

私は、刺されてしまったショックと、回避作戦が完全に失敗したショックと、「すぐに逃げなければさらにやられる」という恐怖心から、脚立からのけ反るようにして後方に飛び降りました。

マンガではよく、『パンチを食らって後方にふっ飛ばされる画』がありますが、あんな感じに(この場合は自分でですが)後方に飛びました。

そのままだと後ろ向きで着地して危ないので、空中で何とか身体を回転させて、前を向いて着地する事に成功しました。

技名で言うと、『脚立後方飛び降り、伸身半ひねり』で、正に大技です。

咄嗟に身体が動いて、ほぼ無意識のかたちで行い、身体の向きを180度変えるのに無事に成功しましたが、一歩間違えばケガをしていた可能性もあったと思います。

しかし、1m位の高さで脚立に乗っていた状態から、突然に後方に半ひねりで飛び降りたため、着地の時に体勢を大きく崩して、前方に倒れ込みそうになりました。

それでも「ここで倒れていたら、追撃部隊がいた場合に大変な目に遭う」と思ったので、何とか踏ん張って堪えました。

その場に倒れるのは防げましたが、前につんのめる状態です。
身体のバランスを欠いたまま、そのまま5mほど「ダダダダッダダッ!」と、倒れる寸前の体勢で前方に逃げ走りました。

5mの地点で、ついに完全にバランスを崩してしまい、「バタッ!」と両手・両膝を地面に突きました。

その瞬間に、すでにズレて落ちかかっていた眼鏡が、「パーン」と飛んで、地面に転がった。

私は大変な精神的ダメージを負った状態で、しばらくその場で休みたかったのですが、蜂の追撃が迫っているかもしれないため、すぐに眼鏡を拾ってかけ直しました。

そうして、急いで後方を確認します。

すると幸いにも、追撃部隊の姿はありませんでした。

もし追撃があれば、私はそのまま30mくらい猛ダッシュで逃走するつもりでした。

眼鏡をかけ直す前に追撃部隊に襲われていたら、私の視力が0.06で全然見えないのもあり、パニック状態になっていたでしょう。

ノックアウトされた可能性も充分にあったと思います。

この時、裏庭で作業していた母が、何かあったと感じて現れました。

私が「先に家に入っていろ」と指示したにも関わらず、母はのんびりとまだ作業をしていたのです。

私は母に、「蜂に刺された!!!!」と大声で言って、避難するように呼びかけてから、家の中に撤退しました。

家に入ると母は、「尚立が脚立から落ちるのが見えたから、バランスを崩して落ちてしまったのかと思った。蜂に刺されたとは思わなかった。」と、見当違いのコメントを言いました。

私が「蜂を退治する」と宣言していたのだし、脚立からあんなに異常な降り方をしたのだから、『蜂にやられた』と普通に考えれば気付くじゃないですか。

母の完全に的外れな状況認識と、緊張感のないコメントを聞いて、「やはりこの人を信じるんじゃなかった…」と思いましたねー。

母と祖母は「毒を出したほうがいい」と言い出し、まあ定番の方法なので、やってもらう事にしました。

刺された場所は、顔の横側のもみあげの根元(こめかみの下)でしたが、そこを周りから押しこむようにして、毒を(血を)出したようです。

私には見えない位置でしたが、ティッシュをみると少量ながら血と毒らしき黄色い液が付着していました。

私はかなりショックを引きずっていましたが、きちんと治療をしなければと思い、方法が分からないのでパソコンを立ち上げて、ネットで情報を急いで収集しました。

まず、刺した蜂が何者なのかを調べました。

もし毒の強い奴ならば、刺された場所が顔なので(顔とか頭は、刺されるとやばい場所だと知っていました)、病院に行かなければならないと思ったからです。

蜂の模様を憶えていたので、すぐに特定できました。

『セグロアシナガバチ』です。

毒性は「並」で、病院に行くレベルではなさそうです。一安心しました。

私は全く知らなかったのですが、蜂に刺されると、1回目は平気なのですが、免疫ができる関係で2回目以降は危険な状態になる人もいるようです。

「アナフィラキシー・ショック」というものですが、1回目よりも2回目以降の方がやばいのは、不思議な感じがしますね。

普通だと免疫ができたら、耐性がつきそうなものですけど。

次に、治療法を調べました。

「患部を冷やせ」と出ていたので、さっそく氷で冷やしました。

何となく、楽になったような気がしました。

冷やす事で、毒の回りを遅く出来るそうです。

私の実感では、単に気持ち良いだけでした。

もともと刺された直後からほぼ痛みは無かったのですが、1時間ほど冷やしていたらすっかり良くなりました。

私は虫に対して強いらしく、蚊に刺されて大きく腫れても、1時間もすると引いてしまいます。

どうやら、蜂の毒にも強いらしいです。

いちおう、その日は大人しく過ごしました。

身体のダメージよりも、精神的ダメージの方が大きかったですね。

さて。

翌日になって蜂の巣を見にいったら、蜂はいなくなっていました。

全滅したか、逃げてしまったのか、どちらかです。

私のミッションは成功を収めたようです。

振り返ってみると、私を刺した蜂は、『死ぬ間際の最後の一撃』をしたのかもしれません。

あいつの攻撃は、もの凄い気迫に満ちており、正に「特攻」でした。

私としては、刺された事を恨む気持ちはまったく無いですねー。

向こうにしてみると、存亡の危機だったわけだし、何とかしようと思うのが自然です。

刺した蜂があの後すぐに亡くなったならば、最後の生命の燃焼(命を懸けた一撃、北斗の拳の秘奥義みたいなもの)を受け止めた事を、むしろ誇らしく思います。

(もっとも、生命は永遠であり、物理的な死はかたちを変えるだけで本当の死ではないです。彼(彼女?)は、『永遠の領域』にいったん戻ったのでしょう。)

よーく考えてみると、退治しない道もあったと思います。

ネットで調べた結果、アシナガバチはしばらくすると巣を置いて去ると分かりました。

スズメバチのように、どんどん巣が大きくなっていく事はないようです。

『蜂の巣=どんどん大きくなるので退治しないといけない』と思っていましたが、「アシナガバチ=益虫」説もあるくらいで、倒さなくてもよかったのかもしれません。

とりあえず、貴重な体験になったのは間違いありません。

それにしても、子供の頃に昆虫採集で何度も蜂に遭遇しても、1度も刺されなかったのに、今さら刺されるとは思ってもみませんでした。

まあ、巣に殺虫剤をかける行為は完全なる敵対行為であり、昆虫採集とは次元が違いますけどねー。

結局のところ、いちばん問題だったのは、「蜂の巣は簡単に倒せる」と断言した母だったと思います…。


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