バレーボールの日本代表・女子の4試合を観た、その感想
ハイブリッド・シックス…らしい
(2014.9.2~4.)

先月の下旬の事ですが、バレーボール女子の世界大会『FIVBワールドグランプリ2014』がありました。

久しぶりにバレーボールの代表戦を何試合も観たのですが、女子代表が素晴らしい試合をしていた事もあり、楽しく過ごせました。

その感想を書いていきます。

実は、私はここ10年くらいバレーボールの日本代表戦は、ほぼTV観戦してきませんでした。

というのも、試合内容以前に、会場に「キャア! キャア!」と響く若い女性のうるさい声援と、全く意味がないのにやたらと出てくるジャニーズ所属のタレントが、非常に不愉快だったからです。

TVで見ていても明らかに会場のテンションはおかしく、普通の人が入り込めない空気が、そこにはありました。

そして、白熱する試合の真っ最中に、なんの脈絡もなく客席にいるジャニーズ・タレントがアップで頻繁に映されるという、意味不明のカメラワークが行われていました。

選手がミスしようが何しようが関係なく、ずっと同じ応援をし続けるファンの異常なテンションの高さは、本当に気持ちが悪く、ヒトラーの演説集会のような『すべてに100%の賛同を示す』という危険な空気が漂っています。

知性をすべて放棄したかのような異常な統一感・一体感は、「この人達、大丈夫だろうか…」と真剣に心配になるレベルなのです。

そのため私は、バレーボールはけっこう好きなのですが試合に感情移入できず、観戦後も不愉快な気持ちが残ってしまい、継続して観ていく気になれなかったのです。

なぜこんなにも会場全体が気持ち悪い雰囲気なのか、ずっと不思議だったのですが、ある時にジャニーズ好きの女性から、こんな話を聞きました。

「あれは、会場に詰め掛けているのは、みんなジャニーズのファンなんだよ。

彼女達はバレーボールを観ているわけではないし、選手を応援しているのでもない。

ジャニーズ事務所とバレーボール界は提携していて、ジャニーズのタレントで客を呼んでいるんだよ。」

彼女の言っている事が本当なのかは、私には分かりません。

しかし、非常に説得力を感じました。

「なんだよ、そういう事か。

ジャニーズで集客しようとするなんて、バレーボール界は卑屈で最低だな。

それを請け負うジャニーズ事務所も、ジャニーズ目的で集まるファン達も、最低じゃないか。
選手達が可哀相だよ。」

こう思って、私はド白けに白けてしまいました。

この観点に立つと、頑張ってプレイしている選手たちが、ピエロに見えてきました。

そして、選手達が痛々しく思えてしまって、苦しくて観戦が困難になりました。

で、長いことバレーボールから離れていたのです。

しかし!

8月21日に新聞のテレビ欄を眺めて、女子の代表戦が(大会が)行われているのを知った時に、ふとインスピレーションが湧きました。

今までは全く感じなかったのに、なんだか「観てみようか」という気持ちになったのです。

何か「ピーン!」と来るものがありました。

そうして、放送開始時間をやや過ぎてから、TVを点けてみました。

すると、なぜか分かりませんが、日本女子代表がやたらと好調なのです。

もう長い事、日本は女子代表も男子代表も、攻撃的なバレーボールはしていませんでした。

各国がパワーアップしていく中で、日本は体格に劣るためパワー負けをしてしまい、『防戦を基本にしながら相手の弱点をつく』というスタイルだったのです。

ところが、いまTVに映っている女子代表は、攻撃的なスタイルで戦っており、さらにはそれがきちんと機能しています。

相手をどんどん押し込む日本を見ていたら、「えっ! これは幻じゃないよな?」と、幻覚を見ているような不思議な気持ちになってきました。

かつての日本は、点を稼いでリードすると、そこで気を抜いてしまい、相手に追いつかれる癖がありました。

それも完全に姿を消しており、相手に1セットも奪われることなく、圧勝で進んでいきます。

「なに、これ?」という感じで、信じられない心境です。

選手陣を見ても、ロンドン・オリンピックの時からかなり変わっており、面影がほぼ無いのです。

大黒柱だったセッターの竹下さんが引退した以上、それなりにチームが変わる事は予想していました。

しかし、ここまで変わるとは…。

2年前のロンドン・オリンピックでは3位になっているわけだし、その時のメンバーがほとんど居ないのは強烈な違和感がありました。

「あの時に活躍した選手はどうなったのか? なぜ居ないの? なにが起こっているんだ?」と、頭が混乱してきました。

とにかく、女子代表が生まれ変わっており、それも目に見えて強くなっています。

さらに嬉しいのは、ジャニーズの姿がなく、お客さんも冷静なテンションを保っています。

私はすっかり嬉しくなり、「よし、明日も観戦しよう。女子代表に何が起きたのか、見極めねば」と決めました。

そうして翌日も観戦し、その勢いのまま最終戦の対ブラジルまで、4日連続で観戦してしまいました。

私は第2戦から最終戦までを見ましたが、この大会で日本は4勝1敗の成績で、準優勝となりました。

それにしても、バレーボールは毎日試合をして大丈夫なのでしょうか。

中1日、空ければいいのに。

私は、中学時代にバレーボール部に在籍していたので、ある程度バレーボールに詳しいのですが、本気で試合をすると翌日にはきつーい筋肉痛になります。

休み無く毎日試合をするなんて、身体を壊してもおかしくないですよ。

それはともかく、私は、女子代表の戦いを4試合続けて観たのです。

そうしたら、なぜ強いのかが分かってきました。

強さの秘密は、アタッカーを2~3人という通常のかたちではなく、4人にしている事です。

そうして、セッターはその4人を上手く使い分けて、的を絞らせなくさせています。

セッターの宮下さんもたまにスパイクを打つので、一応はアタッカーの役割もしていますね。

これは、以前の竹下さんの時には考えられなかった事です。

トスの配球では、バック・アタックを以前よりも多くしているようです。

以前だと、木村沙織さんのような大エースにしかバック・アタックをさせていませんでしたが、的を絞らせないためでしょうけど、他の選手にもやらせています。

アタッカーを多く配置するため、必然的にミドルブロッカーは居なくなります。

その結果、今まではセッターはあまりブロックに参加していなかったのに、常に参加するように変わっています。

そして、セッターがブロックに参加するため、セッター以外の人がトスを上げる事が増えています。

要するに、アタック・ブロック・トスの住み分けが無くなったのです。

リベロ(レシーバー)だけは、今まで通りにレシーブ専門でやっていますねー。

リベロ以外は住み分けを無くしてしまい、リベロ以外の5人は様々な役割をこなすようにしています。

私の確認したかぎりでは、上手く機能していますね。

日本人は器用なので、トスもブロックもレシーブも、練習すれば水準以上に出来てしまうんですよ。

ブロッカー(ブロックを中心に活躍する人)を排除したため、ロンドン・オリンピックからメンバーが大きく変わったのだと思います。

この強さの秘密について、マスコミは『ハイブリッド・シックス』なる造語を当てております。

しかしアナウンサーは、やたらと「ハイブリッド・シックス」を連呼するのですが、それがいかなるものかは説明してくれません。

もどかしかったですねえ。

「説明しろ、こらっ」と思いましたが、結局は4試合のあいだに1度も説明は無しです。

どうも、アナウンサーにもよく分かっていないようでした。

ハイブリッドとは、交配や融合を意味する言葉なので、
「おそらく『ハイブリッド・シックス』とは、6人が高度に融合されて、全員がアタック・トス・レシーブ・ブロックの全てを担うシステムを指しているのだろう」と、私は考えました。

ネットで検索して調べたところ、ほぼその理解で合っているようです。

要は、アタッカー、セッター、ブロッカー、レシーバーと分けないで、全員が状況ごとに柔軟に役割をチェンジするシステムなんです。

はっきり言って、リベロの人はレシーブを専門にやっているので、本当は『ハイブリッド・ファイブ』です。

ですが、それだと1人だけを除け者にした感じがするし、バレーボールっぽくないので、無理矢理に「ハイブリッド・シックス」と呼んでいるのだと思います。

こういう事情があるため、アナウンサーは詳しい説明を避けているのでしょう。

説明に入ると、シックスじゃないとばれてしまいますから。

そもそもバレーボールでは、アタック・レシーブ・トス・ブロックのすべてを練習するし、それをまんべんなく出来るようにするのが基本です。

すべて出来る選手を揃えるのは、ある意味では基本なんです。

でも普通は、初心者から1~2年くらい経つと、「この選手はどのポジションが向いているか」が分かってきて、監督にポジションを固定されます。

そうやって分業していくのです。

それをあえてオールマイティな選手で固めるという「ハイブリッド・シックス」は、『究極の理想主義』といえますね。

サッカーでの「トータル・フットボール」に考え方が似ていますよ。

普通だと理想主義は挫折しがちですが、今回の真鍋ジャパンは上手くいきそうです。

要注目ですねー。

まあとにかく、明らかに日本女子代表は強くなっていますよ。

戦術以外にも、私が進化していると感じた点が3つあります。

まず1つ目は、『フィジカルが強くなっていること』です。

私が非常に驚いたのは、「選手達の身体つきが、以前よりも格段に引き締まっている」事です。

これにより、身体が太くなったわけではないのに、パワーが付いています。

おそらく、体幹トレーニングを取り入れているのだと思います。

見た目は細いですが、腹筋と背筋(それも内側の筋肉)がかなり付いているのを感じます。

体幹(インナー・マッスル)が鍛えられたため、スパイクの時に空中姿勢が安定しています。

特に長岡さんは、バックアタックをよく決めていましたが、スパイクの姿勢がとてもいいですね。

全体的に、以前よりも敏捷性がアップしています。
脚力も鍛えられていますよ。

そのため、味方のレシーブが崩れた時の対応力が向上して、守備力が上がりました。

2つ目は、『サーブが上手くなっていること』です。

もう長い事、日本はサーブがいまいちでした。

ジャンピング・サーブにはパワーやスピードが要求されるため、外人の方が良いサーブをしている事が多かったのです。

ところが、今回の日本女子代表は、強く速いサーブではないのに、サービスエースをがんがん取っているのです。

私は驚かされました。

正直言って、なんであれほどサービスエースを取れるのか、よく分かりません。
狙っている位置がいいのかなー。

無回転ボールをフワーッと飛ばすのを割と使っていた印象ですが、無回転にしてボールを揺らすなんて、私が中学の時に使っていたくらいで簡単だし (サッカーと違い、バレーボールでは無回転はそれほど難しくないです)、それでエースを取れるとも思えません。

3つ目は、『苦しい場面でもプレイが安定していること』です。

明らかにメンタリティが向上しています。

以前だと、相手のエースが点を決め始めると(相手のペースになると)、目が泳いで弱気になる事が多かったんですけどねー。

はっきり言って、こんなに強くて可能性を感じさせる女子代表は、私がバレーボールに興味を持ち代表戦を見始めた1990年代前半以降では、初めてですよ。

伝説として語られている「東洋の魔女」以来の、「黄金時代」が来ているのではないかと感じます。

今の女子代表は、進んでいる方向は素晴らしいし、着実に成長を続ければ2016年のオリンピックで金メダルを獲るのも不可能ではないと思います。

今大会では最終戦のブラジル戦で完敗したし(ブラジルは世界ランク1位です)、まだ金メダルの実力はないですが、今の方向性を続けていけば光は見えるのではないでしょうか。

私が大きな期待をする理由には、長岡さんと宮下さんの存在があります。

この2人は、私は今回初めてプレイを見たのですが、輝くものを持っていますね。

長岡さんは、すでに言及しましたが、アタックの姿勢が抜群に素晴らしく、さらに良いアタッカーになれるポテンシャルがあると思います。

宮下さんは、まだ19歳なのに落ち着いたプレイをしており、基本はセッターですがレシーブも上手いです。

感心するのは、周りがすべて先輩なのに、物怖じしていない点です。
いい根性をしていますよ。

ここまでずっと褒めてきましたが、最後に1つだけ難点を指摘します。

それは、キャプテンの木村さんの、試合後のインタビューでの受け答えなんです。

木村さんは、インタビューを受けている間ずっと落ち着かない態度を見せ、少し難しい質問をアナウンサーがすると動揺して、しどろもどろの答弁になっていました。

はっきり言って、インタビューの態を成していません。

そしてインタビューが終わると、「ふうっ、ようやく終わったか。」という安心した顔をして、嬉しそうに去っていきます。

やる気の無さがバレバレです。

これは、キャプテンの態度ではないですよ。

女子代表がせっかく良い試合をしているのに、台無しです。

木村さん自身も、あの答弁だと、「この人はバカなんじゃないか」と思われてしまいます。

木村さんのプレイぶりを見れば、明らかにバカではありません。
むしろ責任感の強い、頭の良いタイプだと感じます。

つまるところ、木村さんは、話す事や如才のない振る舞いが苦手なんでしょう。

だったら、他の人がキャプテンをした方がいいですよ。

私が見た限りでは、江畑さんの答弁が圧倒的に安定感がありました。

だから、彼女がキャプテン(もしくは広報担当)でいいんじゃないですか。

ちなみに、監督の眞鍋さんも、試合後のインタビューの受け答えがいまいちですねー。

試合に大勝した時でも、不思議なくらいオドオドしています。

インタビューが苦手なんでしょうね、きっと。

でも、監督はいつも質問をされるので、勉強したほうがいいですよ。

試合後のインタビューは、プロ野球の監督は上手い人が多いです。
そこから学べばいいと思います。


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