先日に図書館から、『検閲された手紙が語る 満洲国の実態』(小林英夫、張志強の共著)を借りてきました。
読んでみたところ、日本では省みられていない良質の資料を公にした、素晴らしい内容の本です。
私は、「こんな資料が残っていたのか! 素晴らしい!」と感動しました。
この本は、中国で見つかった『戦前の日本が軍政下で行っていた検閲、の実態を明らかにする資料』を紹介するものです。
「憲兵隊が地中に隠した資料が発見された」という、正に隠された実態が白日の下に晒された事による、真実を描いた内容になっています。
旧日本軍は敗戦時に、自分たちがした事を隠蔽するために、都合の悪い資料をすべて焼いてしまいました。
無責任の極みだし、自分たちが悪事をしていた事を自覚していた証左ですが、そのために旧日本軍の蛮行が調査しづらくなっています。
そうした中で、このような第一級の資料は、「宝物」と言っていいでしょう。
日本人の全てが必読の内容、といってもいいと思います。
ここに出てくる手紙は、検閲によって没収されてしまった手紙たちです。
当時の状況や人々の心情を的確に書いたがゆえに没収・削除されてしまった手紙たちであり、当時の真相を描いているものばかりです。
戦前・戦中の手紙というと、「お国のために死ぬ」とか「天皇を崇拝している」とか「靖国神社で会おう」などと書かれている手紙がピックアップされる事も多いです。
しかし、『当時の手紙は検閲対象になっており、人々は国から睨まれないために自己規制をして書いていること』を忘れてはなりません。
戦前・戦中の手紙を額面通りに解釈するのは、正しい事ではないのです。
特に日本の敗戦が濃厚になってからは、手紙には本心を書けないのが、ある意味では基本になっていました。
手紙を見られてしまい、もし国に(憲兵に)睨まれたら、最悪の場合だと牢屋に入れられてしまうのですから。
そうした言論統制の社会状況を、この本ではしっかりと理解できます。
この本には、本当の事を書いてしまったがゆえに消し去られてしまった手紙が集まっています。
読んでいると、「真実になればなるほど削除されるとは、本当に恐ろしい状況だ」と思いますね。
一般の日本国民には、敗戦のその日まで「日本は戦争に勝っている」と思っていた人もいましたが、これだけ検閲されて情報統制されていれば、それも無理ないですよ。
こう考えると、同じ様な情報統制を打ち出している『特定秘密保護法』は、希代の悪法だとよく分かります。
戦前の検閲については、私は歴史の本などを通して、すでに頭では理解していました。
そして、この本で実際に検閲対象になって削除された手紙たちを見て、「皮膚感覚」でも理解できるようになりました。
手紙からは、当時の人々の(特に弱者の)息吹や苦境がもろに伝わってきます。
読み終えて、『絶対に、このような社会を再び生み出してはならない』と強く感じました。