朝日新聞の従軍慰安婦の虚偽報道について
それは問題だが、過度の朝日叩きの方がもっと問題
(2014.9.17.)

このところ、朝日新聞が1990年代に報じた従軍慰安婦の報道が偽証に基づいたものであると判明し、各メディアで大きく取り上げられています。

これについては、明らかに冷静さを欠いた報道になっていると思います。

「朝日つぶし」と言えるほどの叩き方には、政治的な意図を感じます。

私が気になっているのは、一部のメディアや知識人がこれを機会とばかりに、「従軍慰安婦そのものが嘘である」と主張している事です。

慰安婦問題は、韓国人や中国人に対するものだけではなく、オランダ人やフィリピン人へのものもあります。

そして、オランダ人らの慰安婦犠牲者にも、日本政府は調査をした上で、正式に謝罪してお金を支払っています。

つまり、『従軍慰安婦が存在したこと、それを日本軍が強制したこと』は、歴史的な事実として確定しています。

その前提を崩壊させる(無視する)ような議論は、暴論そのものだし、日本の対外イメージを大幅に損なう行為です。

今すぐにやめていただきたいです。

朝日新聞の報道では、吉田清治さんの集めた証言が虚偽である事が判明したわけですが、だからといってそれ以外の証言の信憑性が無くなった事にはなりません。

冷静に考えれば、すでに吉田さんは亡くなっているし、20年くらい前の記事についてあまり朝日新聞に目くじらを立てる必要はないですよ。

むしろ、朝日新聞を一斉に批判・非難するマスコミ達の狂騒ぶりにこそ、大問題があるのではないかと感じてしまいます。

朝日をそこまで叩いて、いったい何が得られると言うのでしょうか。

今回の事件を得て、一部の「神国日本の狂信者」たちは「日本の過去の行いは間違っていなかった、従軍慰安婦もいなかった」と言っています。

毎回なにかあると出てくる勢力なのですが、「また出てきたか」とウンザリしますね。

全体像のうち一部だけを大きく取り上げて、全体像をねじ曲げようとするのが、極右の方々の特徴ですが、それに流されるのは愚かです。

国民は、冷静に判断・対処しましょう。

安倍政権は、「朝日の報道が国益を大きく損なった」と主張し、朝日新聞の責任を追及してメディア統制に繋げようと考えているようです。

これに同調してはいけません。

冷静に考えれば分かるのですが、日本が過去の過ちを認める事で(従軍慰安婦などを認めた事で)日本の国益は拡大しました。

日本と韓国や中国との貿易が急拡大したのは、1990年代からです。

これには、冷戦の終了や韓国と中国の経済開放も大きかったと思いますが、基本的には日韓関係や日中関係が強化されたからです。

そうして、関係強化には『日本が過去の過ちを認めて、謝罪をしたこと』が大きく影響しています。

ですから、朝日新聞などが過去の日本の侵略行為を取り上げて、その行いを報道した事は、むしろ賞賛される事なのです。

(1990年代には、政治改革の流れが起きて、自民党以外の人が首相になり(村山首相)、それまでよりも大幅に日本の過去の過ちを認め、謝罪もした。)

歴史は、自分たちの側(日本の側)からだけではなく、相手の立場からも見なければ正しい理解ができないものです。

そして、日本が行った侵略行為に関しては、相手の側が語ることの方が真実をついている事は多いです。

基本的に、加害者の側は出来事を過小に評価するものなんですよ。

例えば学校で起きるいじめについて、加害者が「いじめているつもりはなかった」「そこまで相手が傷ついているとは思わなかった」とよく言うじゃないですか。

「日本の植民地化によって、その国の経済や政治はアップした」という意見を述べる人もいますが、いじめっ子が開き直って「あいつも楽しんでいたんだ」と言うようなレベルの考えです。

事実の一部しか語っていない意見だし(一部だけを切り取れば、経済や政治がアップしたのも事実ではあります)、相手の気持ちを全く理解していない浅い考え方だと思います。

この意見は、英米仏などが、幕末に徳川政府を脅して『不平等条約』を押し付けた事について、
「俺たちは、最新の技術や兵器を日本にあげただろ(売っただろ)。俺たちは、日本の近代化に貢献したんだよ。不平等条約だって、その後には修正させただろ。俺たちは悪くないよ。」と開き直るようなものです。

こんな考えを、受け入れられますか?

日本が戦後に、被害国に対して見せてきた態度は、愛情や誠意に欠けていると思います。

北朝鮮に拉致された日本人について、拉致被害者の家族会は「被害者の家族は高齢化している。今が会える最後のチャンスなんだ」と訴えています。

従軍慰安婦についてだって、同じじゃないですか。

慰安婦の被害者たちは高齢化しており、今すぐに謝罪や補償をしなければ永遠にできなくなり、将来に禍根を残すことになります。

このように自分の気持ちを相手にも当てはめる事こそが、今の日本人に欠けている事だと思います。


日記 2014年7~9月 目次に戻る